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勇者  作者: 海目 愚丸
狂気の回天編
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第四十五話「最初の入居者」

前回

イサミ達はブラウニス城塞に帰るって書きましたが、間違えました。


都市ルナでした。

 だいぶ遅くなってしまい、空はすっかり暗くなってしまった。

 それでも無事に都市ルナ。

 いや、そんなに大きくないからルナの街って言う方がしっくりくるな。

 ルナの街のすぐそばまで来れた。

 

 思えば今回の旅路、短いけど中身は濃密。

 龍と戦い、変なカビ野郎とも戦った。

 まるで魚の苦玉みたいに、味わったら忘れられそうにないや。

 

 ……魚の苦玉のことを思い出したらお腹すいてきたな。

 別に苦玉は好きじゃないのに……まぁ、あったらつい口に入れてしまうけど。

 

 そしてついぞ、僕のお腹が鳴いた。


「ギュッギュー」


 いや、僕じゃなかった。

 僕におんぶされているチカセからだった。


「い、イサミお腹空いたのー?」

「え、僕? ……まぁ空いてはいるけど」

「そよね、朝も昼も食べてないから仕方ないよね」


 なぜか、僕のお腹が鳴いたことにされた。


「僕ちゃんは飢えを感じないゾ。

 しかし、休憩がしたいネ」


 見れば分かる。

 先程からずっと脚をガクガクさせてたからな。

 でもなぁ、あともう少しでルナの街に着くんだよな。


「じゃあ1度ご飯にするしかないよね!」


 悔しそうにチカセが言い、僕の背中から勢い良く飛び降りる。

 そんでもって僕の隣まで来て言った。


「ここまでありがと!」

「元気になって何よりだ、でもチカセ、もう持ってきた保存食ないよ」

「えっ! まだ干し肉無かった?」

「ああ、あれね、チカセが寝てる間にフィグントちゃんにあげちゃった」

「フィ、え?」

「ヒワシのカビだよ、フィグントちゃん」


 チカセは思い出したのか、納得した顔を見せるもすぐに崩れた。


「なんして!?」

「なんでも、フィグントちゃんには毎日ご飯をあげなきゃダメらしい」


 ポカーンとするチカセ。

 まるで豆を投げつけられたハトみたいだ。


「そうゾ、フィグントにひもじい思いはさせられないゾ」


 チカセは訳が分からないだろう。

 

 僕も最初は冗談半分で聞きながら、言われた通りに餌付けしてたんだけど、やがて本当に生き物を相手にしてるような感じになったんだ。

 こう、干し肉を近づけると、向こうからも手を伸ばして受け取ろうとする。

 それを見たら、フィグントちゃんは状況をちゃんと分かってるんだなと思った。

 それこそ人を相手にーーは言い過ぎか、せいぜいすごく頭が冴えてるナメクジぐらいか。

 ナメクジが手を伸ばしてご飯ほしいって素振りを見せたら、そりゃぁ干し肉ぐらいあげちゃうよ。


 ……いずれ僕の(ヤタくん)(アメちゃん)も腕生やしてご飯要求してくるのかな。

 いきなりそんなことなったら、びっくりだ。


 そんなことを思いつつ、話を進める。


「というい訳だから、今から食べるものを探して来る」

「待って! 私が行く」

 

 自信に満ちた顔のチカセに止められた。

 森は僕よりもチカセの方が得意だし、任せた方がいいかな。

 

「なら僕は、火起こししとく」

「うん、じゃあ行ってくる」

「気をつけてねー」


 すぐに去りゆくチカセに一声かけるも、僕がいい切る前に姿が見えなくなってしまった。

 よっぽど早くご飯にしたいらしい。


 さて、僕もとっとと準備するか。

 ……ついでにヒワシにも手伝わせよう。


「なぁヒワシ、君は食べれそうな野草を探してくれない?」


 ヒワシはすごく面倒くさそうな表情で「分かったゾ」って言い、立ち上がった。


 

 しばらくして、僕は薪になりそうな枝を1箇所に集め、あとは火打金を火打石に叩きつけてたらって所で、ヒワシが戻ってきた。


「早かってね」

「夜目が利かずとも、手触りでなんの植物か分かるからネ」

「それはすごい」


 3種類の野草を受け取った。

 2つは知ってる、そのまま食べられるやつだ。

 残り1つは分からない、これはーー。


「それはヒロシノクツシタと言う、シダ植物。

 すり潰すと香辛料になるゾ」


 ふーん。

 確かにすごい匂いだ。

 嗅いでいると目眩がする。


「嗅ぎすぎるのはやめた方がいい、飛ぶゾ」


 どういうことだ、飛んじゃうって。

 意識が飛ぶってこと?

 なんて危ないモノなんだ。

 ちょっとクセになってたけど、嗅ぐのはもうやめよう。

 


 さらに、しばらくして。

 チカセが戻ってきた。


「持ってきたよー」


 左手に蛇。

 右手に鳥。


「どうよ!」

「すごい!」


 ムッフーとニヤけるチカセ。


「この(ふくろう)捌くのお願い、血抜きは済ませてあるから」

「わ、分かった。」


 言われるがまま受け取ってしまったけど、鳥の捌き方なんて知らない。

 ……まぁとりあえず半分にしてから、また半分にすればいいか。

 

 そうぼんやりと思い浮かべていたら、ヒワシから声をかけられた。


「僕ちゃんが捌こうゾ」

「できるの?」

「何度も経験がある」


 もしかして料理好きなのかな。


「ならお願い」


 そう言って、ヒワシに短刀とまな板を渡す。

 すると、彼は手際よく鳥に刃物を差し込み、あっという間に内臓をくり抜き、部位ごとに切り分けてしまった。

 そして、野草をすり潰して作った香辛料を鶏肉に塗る。

 

 香辛料はヒワシの言う通りに僕が作ったんだけど。

 その際、手がすごい匂うようになってしまった。

 あとでチカセに嗅がせよう。

 いや、今嗅がせてやろう。

 思い立ったが吉って言うしな。


「チカセー」


 蛇肉を木の枝に巻いてるチカセに、両手を前に突き出し近づける。


 匂いは強烈。

 彼女は狩人の感がなくともすぐに危機を察知した。


「くっさ!」


 そう言い、チカセは片手で鼻をつまんだ。

 

「どうよ!」

「どうもこうも、イサミに馬乗りになってボコボコに殴りたい」

「えぇ……それは勘弁してぇ」


 鼻声に言うチカセを見て。

 悪戯心が満たされた僕は、手を引っ込めようとした時。

 チカセが鼻をつまんだ手を解き、その手で僕の右手首をがっしりと掴んだ。

 そして今度は自分から僕の手のひらに鼻を近づけた。


「てまもなんか、この匂いクセになるー」


 スンスンと嗅がれる中、ふと手のひらに変な感触が伝わる。

 ヌメっとしたような、んー、猫か犬に舐められたみたいだ。

 舐め?


「わぁ! なにするの!」

「どんな味かなって思って」

 

 なんだよチカセ。

 そんな、何でもかんでも口にいれる2、3歳の子供みたいなことをして。


「…………どんな味だったの?」

「うんー、酸っぱいみかん?」

「ふーん、てか舐めちゃダメだよ」

「え、なんで?」

「そりゃーー」


 胸が高鳴るのを感じる。

 チカセに舐められたからか。

 でもそんなこと言えないし……。

 ので、咄嗟に別の訳を考えた。


「その、僕の手汚れてるし」

「……汚れてなかったらいいの?」

「……だ、ダメ……」


 なんなんだ。

 本当にどうしちゃったんだチカセ。

 こ、香辛料の味がそんなに良かったのかな。

 じゃなかったら人の手のひら舐めるなんて、おかしいよ。


 見るとチカセは少し俯いて、蛇肉を木の枝に巻く作業に戻っていた。

 いや、もう巻き終わっている。

 それなのに、先っぽの肉を巻いてたり、解いたりを繰り返している。

 ちゃんと顔は見えないけど、頬が少し赤らめてるようにも見える。


 ……もしかして、チカセもドキドキしてたりするのかな。

 えーい! 動揺するな、落ち着け僕。

 そう思い、手をグッと握りしめる。

 すごい手汗だ。


 すると、視線を感じた。

 当然と言えば当然。

 この場にはもう1人いるのだから。

 

 その者はいつも通り、ニコニコとした笑みを浮かべていた。

 その笑みで見られることになんら抵抗は無い。

 しかし、今の僕には耐えられない。

 湧き上がる恥ずかしさで、ヒワシの首を反対方向に曲げたい。


「な、なんだよ!」

「なにも」


 くー。

 今のままだと地面に穴掘って、そこに頭を突っ込んでしまう自信がある。

 とりあえずご飯の準備をしよう。

 そんで別のことを考えよう。


 そう自分に言い聞かせ。

 ヒワシの元から鶏肉を奪い取り、木の枝と野草を用意する。

 木の枝は短刀で表面の皮を削ぎ落とし、先っぽを尖らせて串にする。

 野草は重ねて1つの塊を何個か用意する。

 あとは、お肉と草の塊を交互に串に刺し、

 準備完了だ。



 焼け上がったモノを、各自でが取る。

 だが、ヒワシは何やら不満そうな顔を見せた。

 

「こんなものより、僕ちゃんは君たちの劇の続きが気になるゾ」

「舞台劇なんてやってない!

 そんなことより、食べる前に『いただきます』って言うんだ」

「なんゾそれは」

「感謝の言葉」

「何にゾ?」

「これから食べる魂に対してだ」


 ヒワシは一瞬だけ目線を落とした。

 

「少々不思議に思いますが、言えというのなら言いましょうゾ。

 『いただきます』」

 

 ご飯食べる時が命の大切さを知れる1番の機会だと思う。

 だからこれでいいはずだ。


「そういえば、イサミってご飯食べる時いつもそれ言ってたけど、そういうことだったのね。

 じゃあ食べ終わった時の『ご馳走様』はなんなの?」


 チカセがいつもの調子で明るく言った。

 何事も無かったかのようだ。

 僕はまだ頭の隅に、さっきのチカセがチラつく。

 なもんで、ちゃんとチカセの顔を見れない。

 どうにか平然を装うため、チカセの首あたりを見て誤魔化すか。


「ああ、うん。

 『ご馳走様』も感謝の言葉なんだ、でもこっちは作ってくれたモノに対してだね」

「ふーん、そうなんだ。

 ……ねぇ、なんで私の胸に話しかけてるの?」

「えっ! いや違ッーー」

「だってそうじゃん、目合わしてくれないからどこ見てるのかなーって思ったら……」

 

 そう言い、チカセは両手を胸の前で交差させた。

 胸元を僕の視線から遮るように。


 でもさ。

 見た所で、素肌が見える訳じゃないし、

 革鎧を着てるんだから何も恥ずかしくないだろ。

 僕的には、そうやって隠そうとしてることの方がいやらしいく見えるよ。

 

 まったく、どうしたらいいんだ。

 見てないけど、謝るか?

 でも、それだと僕は胸を見たことを認めることになる。

 くー、どうしたら。

 

 ……しかしこの状況、妙に見覚えのあるような。

 そうだ!

 思い出した!

 父ちゃんと母ちゃんの喧嘩に似たようなことがあった。


 ある時、(ハル)がよそにあげるお菓子を食べちゃったんだ。

 母ちゃんは、父ちゃんが犯人だと思ってすんごい怒った。

 でも父ちゃんは悪くないのに謝っていた。

 

 あの時はなんで悪くないのに謝ってたんだろうと思ったけど。

 なるほど、そうか。

 言い争っても仕方ない。

 今、僕が謝れば丸く収まる。

 たとえ、僕がチカセの胸を見たことにされても、

 これ以上嫌われたくない。

 

「チカセ、ごめん!」


 今度はちゃんとチカセの目をじっと見ながら言った。


「べ、別に怒ってるわけじゃ……ない、……どちらかと言うとーー」


 最後の方の言葉はモゴモゴしてて、なに言ってるのか分からなかった。

 けど、どうやら許されたらしい。

 

 ありがとう、父ちゃん!

 また1つ道理がわかった!



---



 それから程なくして、僕達はルナの街に到着した。


 でも街の中には入らない。

 街の外にあるバレナ軍の野営地。

 そこにある僕達第3小団の天幕へと向かう。


「いいか、ヒワシ。正体だけはバレないでね」

「僕ちゃんとしては正体が露呈しようとーー」


 ふん。

 僕には言うことを聞かせるための、取っておきがあるんだ。

 それを懐から出す。

 カビ(フィグント)が入った瓶だ。


「もしバレたら、この瓶の中に僕の唾を吐いてやる!」


 そう言うと、ヒワシは明らかに動揺した。


「ギョッ! 分かったゾ、細心の注意を払おう」


 ヒワシはどう転んでもいいみたいだけど、僕としては困る。

 もし、ヒワシの身柄を引き渡すことになったら、

 改心させることができなくなってしまうのだから。


「ん、ついたよ」


 いくつもの天幕がある中から、チカセが1つを指さした。


「僕とチカセが先に入るね、僕が呼んだら入ってきて」

「分かったゾ」

「……念の為に言うけど、ヒワシ、変なこと言わないでよ?」

「僕ちゃんは変なことなど言わないゾ。

 イサミ殿と違って、思考が道理から外れてないからネ」

「え?」


 あまりの衝撃に思わず振り返ってしまった。

 こいつ、未だ自分に道理があると思っているのか。

 まったく、先が思いやられるよ。


 そう思いながら、僕とチカセは第3小団の天幕に入った。


---


 中に入ってすぐ、タロウ小団長と、ケンセイ、そしてキヨマルが机をを囲んでいた。


「ただいま!」


 そこに僕は元気よく言った。

 次の瞬間、おかえりって言葉が返ってくるだろうと思っていた僕に、痛みが走った。


「貴様ら、今までどこ行ってたんじゃ!」

「いで!」

「いたぁ!」


 頭のてっぺんにタロウ小団長の拳骨が飛んできた。

 ついでにチカセにも。


 さっきまで座ってたのに、もう目の前にシュッと来てこれだ。

 痛すぎる。


「おお! おかえり」


 痛みで思わずしゃがみ込んだせいで、見えないけど、ケンセイの声だ。

 おかえりって言ってくれて嬉しいよ。

 でも、今はそれどころじゃないんだ。


 なんて言い訳しようか。

 怒られるって分かってはいたのに、何も思い浮かば無かった。


「も、森と……洞窟に行ってました!」

「なんじゃその絵本の題名みたいなのは」


 だって地名なんて分からないし。

 

「どんぐりでも拾って来たのか貴様は!」

「えっ」

 

 なんで分かったんだ!?

 僕がどんぐり拾ってること。


 僕はそっと、ポケットからどんぐりを3つほど取り出して、見せた。


「何故に本当に持っておるのだ……」


 小腹が空いた時のために、いくつか拾っていたんだ。

 焼くか、茹でたりすると美味しいんだよ。


「だーハッハッハッ!」

「ふっ」


 なんか知らないけど、すごい笑われてる。

 ケンセイが大笑いし、キヨマルも笑みがこぼれ、

 タロウ小団長はやれやれって感じで、ニヤついた顔を左右に振った。


「なにごとですの?」

 

 すると、奥からひょこっとアンネが半身を出す。

 頭に小さい三角形の頭巾を被っている。

 寝てたんだろう。

 起こしてしまったみたいで、申し訳ない。


「タロウ小団長がもっとイサミに強よく言っとけばよかったのでは?」


 キヨマルがそう言うと、直ぐにケンセイが手首を何度も曲げながら反応した。


「ムリムリ! ジジィも昔、ほっつき歩いとったんやから!」

「黙っとれケンセイ!

 はぁ、イサミの事はもうよい。

 チカセも同様不問とする。」


 やった!

 お咎めなしになった。


「して、外に待たせてるのは何者だ?」

 

 さすがタロウ小団長、気が付いてたのか。


「大方、イサミに助けられた者でしょう」


 キヨマルも気が付いてる。

 鋭いな。

 でもまだ助けれてない、これからだ。


「……まぁ、そんな感じ。

 ヒワシ入って来てー!」


 おずおずって感じで、ヒワシを呼んだ。


「失礼」


 ゆるりとした身のこなしで、ヒワシは入ってきた。

 急に品を感じさせるような。

 

「ヒワシと申しますゾネ」


 タロウ小団長は訝しげな目でヒワシを見てる。

 どうだろう、何者かバレてるか?

 唇を噛んでタロウ小団長の様子を伺う。


「貴様、目の隈が酷いな」

 

 違った。

 ヒワシの目の隈が気になっただけか。


「それに随分痩せこけている、さぞかし辛い思いをしたのだろう」

「……ええ、殺されかけた上、愛しいモノと引き裂かれたゾネ」


 確かにヒワシからするとそうだけど……。


「なんと! それは酷い。

 とりあえず、どうぞ椅子に腰掛けになって。

 ケンセイ! 茶と毛布を用意してやりなさい」

「あいよ」



 それから、僕とチカセはここ数日の大体の事を皆に話した。

 ここで仲良くなった1人を故郷に送り届けるために旅立ったこと。

 でも道中、とんでもない外道がいたんだと。

 そんで僕とチカセが、すんでのところまで追い詰めたんだけど、逃がしてしまったこと。

 ヒワシはその時に助けたことにした。


「って感じで、ヒワシは身寄りもないから連れて来たんだ。

 タロウ小団長、ヒワシを小団に入れることできませんか?

 彼も入りたがってる。」


 タロウ小団長は、『ふむ』と1回頷いて言う。


「それはできん。

 儂の勝手な判断で、兵士を増やすことは禁止されておる。

 だが、住まうところなら用意できる。

 街に入ってすぐの所に2階建ての長屋がある。

 そこに住まうと良い」


 ダメか。

 まぁ、住む場所を用意してもらえただけでもよしだな。

 ヒワシを1人にするのは少し危険な気もするが、仕方ない。

 でも、ん?


「そんな建物あったっけ?」

「ああ、急遽建てられたのだ。

 儂ら兵士用にな。

 だがもう、必要なくなった」

「……どうして?」


 タロウ小団長はチラッとヒワシの方を見て、躊躇ったようにも見る。

 多分、兵団以外の者に言っちゃダメなのだろう。

 でも言った。

 とても真剣な顔つきで。


「バレナの首都に、ウルスの軍勢が攻め入った」


 僕は一瞬動揺するも、まだ勝敗を聞いてない事を思い出し、次の言葉を待つ。

 その際、僕の隣にいたヒワシが薄く笑ったのを見た。

 常にニコニコしてるから分かりずらいけど、確かに少し違った。


「だが、何とかウルス軍を退くことは出来たらしい」


 その言葉にちょっとほっとした。


「なんでもウルス王が病に伏せれたそうだ」

 

 あのウルス王が?

 びっくりだな、病に患ってる感じはしなかったと思うけど。


「じゃあ僕たちもバレナに向かうってこと?」

「いや、儂らはこれからウルスの首都に向かう。

 そこでの(めい)はウルス王妃を捕らえることだ。

 7日後に出発する、準備しておけ」

「はい!」



 その後、僕はヒワシを2階建ての長屋に連れていった。

 なでしこ荘と言うらしい。

 全部で15部屋。

 そこの1階にある1番左の部屋。

 101号室。

 ヒワシはそこに暗い雰囲気で入っていった。

 

 道中に何回か話しかけたけど、返事はなく。

 ヒワシは口をポカンと開け、俯いていた。


 ウルス王の病に伏せられた話が、相当にショックだっらたしい。

 ……まぁ、僕達にとっては追い風が吹いてるかもしれない。


 どうしてウルス王妃を捕らえるのかは、分からないけど。

 きっと大きな戦になる。

 なんてったって首都を落とすんだ。

 首都を落とせばウルス王の逃げ道はもう無い。


 そうなれば僕達の勝ちに1歩近づくってことだ。

 だから、気合いを入れないとな。


狂気の回天編 -終-



次章

燃え上がる天蓋編


の前に今まで書いた物語を少し変えます。

その1つは、カラカティッツァ王国が敗れた事を、ギリギリでまだ敗れてないことにします。


ので、次章は2月ぐらいから書こうと思います。

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