表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者  作者: 海目 愚丸
なんやかんや
36/76

第三十四話「牢」

牢屋生活1日目。


 僕が入れられた部屋には既に囚人が1人いた。

 老齢でガリガリな男だ。

 目を瞑って、脚を組んでいた彼だが。

 僕が入って来ると、片目を開けて見てくる。

 そして言った。


「若造が何をしでかしたのだ?」

「人のチンチンを揉んだ」

「ほう……お主があの有名な玉狩りか」

「? 違う違う、爺さん僕はわざと捕まるためやったんだ」

「なにゆえ?」

「僕の恩人がここに捕まってるかも知れない、助け出したいんだ」

「……ワシは長いことココにおる、名が分かればいるかどうかぐらい知れる」

「名はコトノ、僕とそう変わらない齢の女の子だ」

「ふむ、知っておる」

「ほんとか!?」

「あぁ、だが……」

「なんだ」

「先日、脱獄した」

「え! そうなのか、そりゃ良かった」

「無駄骨だったな」

「いや、それが分かっただけで来た甲斐があったよ!」

「若造、名はなんだ?」

「イサミ……爺さんは?」

「ワシはエビ、さっそくここでの過ごし方を教えよう」


 最初は怖そうに見えたけど、気の良さそうな爺さんだ。

 

---


 牢屋生活2日目。


 エビ爺さんから色々教わった。

 ここの監獄では、ご飯は朝晩の2回。

 基本的に白米と漬物、たまに果物がつく時もあるらしい。

 今日は白米とたくあんだけだった。


 朝食後は労働を強いられる。

 今までは鉱山を掘ってたらしいが。

 この都市は今、街から都市へと発展してる最中らしく、どんどんと新しい建物が建てられている。

 僕達はこき使っていい労働力になる。


 そんな訳で、手枷を付けられて外に出る、

まだ完成してない大きな建物まで連れてこられた。

 

「お前はここの班だ、アイツらのとこに行け」

「はい」

 

 看守が指さしたのは、木の柱を運んでいる2人組だ。

 彼らの歩は遅く、とても苦しそうだ。

 なんせ、2人で運べるような大きさじゃない木材を担いでいる。

 僕はすぐさま駆け寄り、両端を担いでいた彼らの間に入った。


 運び終わると、1人が額の汗を拭いながら言った。


「あ、どうも、ボク達だけじゃ倒れる所だっだよ」

「少しは力になれたかな」

「少す所でねよ、君凄い力持ちだね!」


 僕が力持ち? 初めて言われた。

 嬉しくて笑顔になってしまう。


「えへへ、ありがとう。

 僕はイサミ、君たちは?」

「ボクはハマ、こっちはグリリ」

「よ、よろしくです」

「よろしく!」


 ハマは僕よりも身体が大きい、でもまんまるとしていて、貴族にいそうな感じだ。

 グリリは小さい女の子だ。幼く見える、高さも僕の腰あたりしかない。

 先程、よく2人だけで木材を運んでいたな。


「次は何を運べばいいんだ?」

「次はーー」


 数刻経った頃。

 運搬が終わり、次はノコギリで木を切れと、大工の人に言われた。

 大工の人はおっかなく、言われた通りに切れなかった人を片っ端から殴っていた。

 僕は器用じゃないから心配だ。

 

 ノコギリをギコギコとさせている最中、

ハマとグリリに気になった事を聞いた。


「この班って2人だけなの? 大変じゃない?」

「ついこの間まではもう1人いだんだ、だどもある日、突然いなくなってしまっただ」

 

 ふーん、と、思っていたら、急に雲行きが怪しくなったかのように、グリリが涙ぐんでしまった。

 そして、ポツりと言った。


「コトノお姉ちゃん……」

「コトノお姉ちゃん?」

 

 僕はグリリの言葉を小さく繰り返して、聞き間違えでない事を確信する。

 

 その後、僕はハマとグリリと色々話した。

 ハマとグリリの事は分かったけど、コトノの事は結局、ある日突然消えたのと、仲良くしてた以外、分からなかった。

 エビ爺さんはコトノは脱獄したと言っていて、ハマはある日突然消えたと言う。

 ハマはコトノが脱獄した事を知らないって事かな。


---


 牢屋生活3日目。


 この日は雨で、監獄の部屋で手作業を強いられた。

 

 手のひらより少し大きい木箱に、何枚もの紙を折り重ねて入れていく作業だ。

 入れ終わったら、木の槌を用意し、槌の両端にくっつけるのだ。

 それで出来上がり。

 これをバトリオットと言うらしいのだが、何に使うのか、どうやって使うのか分からない。

 気になって、一緒に作っていたエビ爺さんにも聞いたが、分からんって言われた。

 

 バトリオットって一体何なんだ。

 

 だから、エビ爺さんは何で捕まったのかを聞いた。

 すると、教えてくれた。


 エビ爺さんは孫がいると、そしてその孫は大変可愛い、よちよち歩くのが可愛い、

じぃじと喋った時は気絶するかと思ったぐらい可愛いなど、永遠と孫の話をしだした。

 だが急に悲しとも、怒りに満ちているとも思える表情をして言った。

 ある日、可愛い孫が殺されたと、

 もちろん、孫を殺した犯人は殺してやった。

 さらには、犯人の腹を両手でかっ捌いて放り投げたと。


 この話を聞いて僕は、身内が殺されたから犯人を殺し返した、それは普通の事でどこに牢に入れられる理由があるのか聞くと。

 犯人の臓物が貴族の庭に入ってしまったと言われて納得した。


 あぁ、それは確かにダメだ。

 よく牢に入れられるだけで終わったな。

 何されるか分かったもんじゃない。

 

 あ、そう言えば、牢に入れられるで思い出した、

ハマとグリリがどうして捕まったか。

 彼らはこの都市で、食べ物を盗んだらしい、それがバレて牢に入れられたんだと。

 僕の村ではモノを盗んだら、皆から手を叩かれて終わりだから、いまいちよく分からなかった。

 

 盗みは都市だと捕まるのか。

 こんな簡単に牢に入れるなら、僕は人のチンチンなんて揉みたく無かったよ。

 まったく!

 

---


 牢屋生活4日目


 今朝、看守から僕は1季刑と言われた。

 春が終わると牢から解放される。

 長いなー。

 もうここにいる意味も無いし。

 僕もコトノ見たく脱獄しようかな。

 没収された剣と盾のありかは目星がついている。

 囚人から没収した物を置く部屋があると、その部屋がどこにあるかも、エビ爺さんから教えて貰った。


 労働時間に抜け出して、取りに行く。

 ……できる気がする。

 

 あとはいつ決行するかだなと、思っていたら。

 監獄内に鐘の音が響く。

 ん? 鐘の音は外から聞こえて来てる。

 都市のあちこちで鳴り響いてるような。


 こういう鐘の音は一大事の時に鳴る警鐘だ。

 大規模な火災か、地震か。

 もしくは戦だ。


 僕はバレナがこの都市の近くに拠点を構えたのを知っている。

 攻めに来たとしか思えない。


 これは脱獄のチャンスかもしれない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ