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勇者  作者: 海目 愚丸
なんやかんや
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第三十三話「変な感触」

森の中にある拠点にたどり着いてから数日。

 持って来た物資をあっちこっちに運び終わり、僕は今、木にもたれかかって座っている。


 あの日から命は尊く無くなった。

 僕が間違っていたんだ。

 お坊さんを真似てたけど、出来もしない事を勢いだけでやっていた。

 もうやめよう。

 ……そう思いつつも、何も迷わず敵兵の首を刎ねられるほど割り切れはし無かった。

 まだ少しだけ、それでいいのかと、今日も自分に問うが、答えは出ない。

 

 母ちゃんの言った通り、僕は兵士に向いていなかったな。

 ……いっその事、帰ろうかな。

 帰って漁師になる事が1番良いように思えてきた。

 

 自分の腕を見ると。

 日に焼けて褐色だった僕の腕は、すっかり肌色に戻っていた。

 一流の漁師は海から離れても褐色肌だと言われているが、僕は漁師としても半端者か。


 母ちゃん、父ちゃん、ハルは元気にしてるかな。

 聞いた話じゃ、カラカティッツァは首都を攻められる前に降伏したらしいから、多くの民は無事らしい。

 だから皆も無事だと思う……。


 家族の事を思い出しながら、葉と葉の間から見える空を見ていると。

 葉が揺れて、隠れていた多くの建物が顕になる。

 

 あれが今回攻め入る都市、ルナか。

 山をあと1個越えたら、もう直ぐそこだな。

 ウルスの都市を見るのはこれで4個目か。

 どれも城壁とか無いんだよな。

 だからバレナは攻めやすいのかな。


 ん? 待てよ、あの街並みには見覚えがある。

 都市と言うには、そこまで広くなく。

 所々街に村がくっ付いている感じになっている。

 あの都市はグウラ城塞で王に負けた後に連れてこられたんだ!

 トラジロウを探して散々歩き回ったから、遠くからでも分かる!

 うん、絶対そうだ。


 ハッとなりながら立ち上がる。

 

 てことはコトノがいるかも知れない。

 なら助けなきゃ!


 これから何をするか決まった。

 僕はすぐに緩めに走り出す。

 

 だが、道中あることに気がついて脚を止める。

 皆に何も言わずに飛び出してしまった事だ。

 

 いや、言わなくていいか。

 僕は今、脱走兵みたいなもんだし。

 あ! ならこの革鎧は脱がないとな。

 都市ルナに行くにしても、バレナ兵ってバレたらやばいからな。

 

 茂みの中に革鎧を投げ込む。

 その際、傍らに置いた相棒達を見る。


 街中で(アメちゃん)は目立たないけど、(ヤタくん)は目立つよなー。

 でも、ここまで連れ添ったんだから捨てるのは嫌だ。

 相棒達を背中に掛ける。

 そして、僕はまた走り出した。


---

 

 次の日


 寝ずに1晩中走った甲斐で、正午前に僕は都市の目の前まで来れた。

 だが僕は近くの茂みから都市を見るだけで、入れずにいた。


 番兵がいるとかじゃない。

 思ったのだ。

 どうやってコトノを助けるのか。

 そもそもコトノはどこにいるんだろう。

 

 んー、1個ずつ考えて見るか。

 コトノは敵兵である僕を王から逃がした。

 これはー、つまりー?

 爺ちゃんがマグロを追い詰めたのに、僕がマグロを逃がしたとする……うん、ひっぱたかれて、怒られるな。

 ならコトノも怒られるな。

 コトノはウルスでは罪人って事になるのかな。

 じゃー、牢に入れられるって事か。

 

 もしキヨマルがこの話を聞いたら、コトノはもう殺されてるって言うんだろうな。

 でも不思議と僕は確信が持てるんだ。

 コトノは生きてる。


 ウルスの王は戦に勝つためなら、民を犠牲にする。

 でもコトノを殺しても戦に影響しない、せいぜいコトノの家族と僕が泣くぐらいだ。

 ならウルスの王にとって得は無いはず。

 あ、でも、ウルスの王の隣にいたイナリって人は自分に楯突いたら、ムカついた、問答無用! 見せしめ! って感じで人殺しそう。

 

 ぬー、いらん事まで考えてしまった。


 とりあえず、牢に行く事は決まったな。

 でも、僕が牢に行って囚人を見せてって言っても、相手にしてくれないだろうな。


 囚人か。

 たしか、トラジロウが言ってたな。

 人のチンチンを揉んで指名手配された男がいるって。


「…………揉むか?」

 

 忍び込むより、捕らえられて牢に入れられる方が簡単そうだし。

 待てよ、捕まったら剣と盾を取り上げられる。

 そしたら、逃げられなくなっちゃうからダメだ。

 やはり忍び込むか。




 この都市の牢は、駐屯地の中の兵舎に隣接した建物の地下にある。

 

 僕はまず、顔を覆うための風呂敷を露店で購入した。

 兵団から季節が変わる事に貰った給料。

 すんごい少ないから、1季節分じゃ足りなかったな。


 その後、僕は夜を迎えるまで敷地外をぐるぐると周り、どこから忍び込むか目星をつけていた。

 

---


 夜が更けて、提灯の明かりの数もだいぶ減った頃。


 僕は風呂敷を顔に巻いて、鼻と口の間で結ぶ。

 多分、ドロボーって感じになってるな。

 良し! 行くぞ!


 壁をよじ登り、駐屯地の中に侵入した。

 

「何奴!」

 

 なんと壁から飛び降りて着地した瞬間、僕は5人の兵士だか看守か分からないが、囲まれてしまった。

 5人とも僕に刺股を向けている。


「なぜバレた!」


 あまりの想定外に思わず口に出てしまった。

 

「フン! 盾を持ったくせ者が駐屯地の周りをウロウロとしていると通報があったが、貴様じゃろ!」

 

 くそ!

 やはり盾が目立ったか。

 どうする、一旦引くか?

 いや、次があるか分からない。

 あえて捕まる作戦は無いと思ってたけど、この際、ありか。

 ちゃんと捕まらないといけない罪を犯す必要があるからな、やるか。


 僕は腰を落とし、両手を少し広げる。

 盾と剣は背中に掛けたままだが、いい、使う必要がない。


 僕が腰を落としたのを見て、看守達も察知して構える。

 だが遅い!

 僕は看守達が構えるよりも速く、跳んだ。

 狙うは1番右端の看守。


 少し遅れたものの、看守は刺股を僕に向けて突く。

 僕はそれを掻い潜り、右手を看守の股間に伸ばす。


「ハッ!」


 揉んだ。


「ぐぁっ!」


 狙った看守は悲鳴を上げながら倒れ込む。

 僕はすかさず次の看守へと跳ぶ。


「気をつけろ! 股間を潰してくるぞ!」

「どこの流派だ! 見たことも無い技だ!」


 今度の看守は刺股を縦に振ってきた。

 僕は迷わず左手で受け止め、また右手を看守の股間に伸ばし、揉む。

 が、無い! 先程の感触が無いのだ。

 どういうことだ。


「お前はなんなのだ!」


 看守は刺股を手放し、左手で股間を抑え、

右手でパンチ、いやビンタをして来た。

 僕はそれを顔を逸らして躱すが、背後から残りの看守の刺股に捕まってしまった。


「ぐっ」

「捕まえたぞ!」


 もう少しやれると思ったがここまでか。

 まぁいい、1人は揉んだから牢に入る事になるかな。


---


 僕は取り調べ室に連れて来られた。

 連れて来られる前、僕が股間を揉んだが、

スカした看守から1発殴られた。


「貴様、名は?」


 名? 考えて無かった。


「す、スサノオ」

「は?」


 僕は無事、牢にぶち込まれた。

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