第三十一話「迷い」
直ぐに周りの加勢に行こうと思ったが、その必要は無さそうだ。
賊どものほとんどは散り散りに逃げている。
誰かが賊の首領を倒したのか。
既に決着は着いていた。
「イサミ! 何したんだ?」
駆け寄ってきたケンセイがそう言って来た。
「分からない、急に盾が光出したんだ」
まじまじとケンセイは僕の盾を見たが、
何も起こる訳もなかった。
「イサミ、ケンセイも、まだ気を抜かないでください」
キヨマルも盾を見に寄って来たと思ったら違った。
そのまま通り過ぎて、僕が先程吹っ飛ばした賊の元へ行った。
そして、横たわっていた賊の首に剣を突き立てた。
「イサミは止めを刺すのを忘れないでください」
「なんだ、使う刃の向き間違えたのか?」
違う。
忘れてないし、刃の向きを間違えてない。
僕は命を奪う気は無かった。
だから狙い通りだ。
「間違えてないよ、殺さないようにしたんだ」
「それは、捕虜にしようとしたって事ですか?
賊は捕虜にする必要はありませんよ」
「違うよ、わざわざ命まで奪わなくてもいいと思ったんだ」
「……どうしてですか?」
「それは、その方が良いと思ったから」
「敵でもですか?」
「うん」
キヨマルは得体の知れないものを見るように、僕を見ていた。
そして、また口を開いた。
「…………それには意味があるのですか?」
意味、いみ。
僕は命を無闇に奪う様な人には成りたくないから、そうしている。
たが、この場では僕がおかしいって分かる。
もしかしたら、僕が気絶させた敵が起きて味方を斬るかも知れない。
そうならない為に、確実に仕留める事が正解だ。
でも戦場なのだから、それは無闇に命を奪ってる訳じゃ無いから、そう思ってしまったら、あのウルスの王と同じじゃないか。
必要だからと、何も知らない自国の民を殺したあの王と。
……それじゃあまりにも無情だ。
あの王の様には成りたくない、だから、敵でも……命は奪わない。
こんな事言っても、キヨマルは分かってくれないと思うり
少しばかり悩んで、
答えを待っていたキヨマルと目を合わせる。
「……意味は無いかも知れない、僕がそうしたいからそうする! これからも!」
「……そうですか……でも例えイサミが生かしても、私が止めを刺します。
それとも、私にも殺さぬ様にと言いますか?」
「いや、言わないよ」
そう言うと、キヨマルはガッカリした顔をひてこの場を去った。
残ったのはずっと黙っていたケンセイだけだ。
恐る恐る、ケンセイの方を見る。
「片刃にしてくれって言ったのは殺さないようにするためだったのか」
「ケンセイ……」
ケンセイは少し息を吸ってから、僕のむき出しの剣を見ながら言った。
「イサミ、お前が優しいのは分かった、でも友として言うぜ、敵は殺せ、悩む必要なんて無い」
「…………」
「とりあえず、戻ろうぜ」
「……うん」
亡くなった敵も味方も1箇所に集められて、燃やされた。
血の匂いで獣が集まって来ないようにだ。
その後で、僕達は晩ご飯の準備に取り掛かった。
いや、もう夜だから、夜ご飯か。
僕はご飯の時、多くの者に囲まれた。
僕の盾が光ったのを見て不思議そうに尋ねて来たり、あの時に明かりになってくれたから助かったよと、感謝されたりした。
タロウ小団長もびっくりしていた。
世の中には非凡の才を発揮する者がおるが、稀に非凡の域すら飛び出した者もおる。
「まぁ、そんな常軌を逸した力、儂もハヤタケと剣を交えるまでは信じておらんかったがな」
「ハヤタケ……スサノオか」
僕にスサノオと同じような力が。
ホントかなー?
スサノオは雷を操ってたけど、
僕のは盾が一瞬光っただけなんだけど。
いや、あの戦いではもう本当に明かりになってくれて助かったんだけどさ。
なんか格が違う気がする。
ビーム出したかったな。
---
日は何度か変わった、僕達はまだ目的地に着いてない。
そして変わった事がもう1つ。
仲間との距離感だ。
キヨマルは僕の方を見向きもしない。
ケンセイは、あれから自分の故郷のおとぎ話を話してくれたりする、でもほとんどが誰それが誰かを殺した武勇伝の話だ。
キヨマルとのやり取りをタロウ小団長には話しては無いが、アンネとチカセには話した。
アンネは『ばっかじゃないの!?』っと僕を一蹴し、チカセは手を震わせておどおどしていた。
僕は兵士として、抱いた志を捨てるべきなのだろうか。
それが1番な仲間のためにもなる。
僕は未だ決断できずにいる。
キヨマルに自分の意志を伝えたのに。
あれからずっと僕の心は揺らいでいる。
迷ってしまっているのだ、皆に嫌われたくないと。
どうするべきか分からない。




