第二十九話「びっくり」
日が昇り始めた頃。
補給部隊に任命された者達をバレナまで護衛する任務が始まった。
僕の怪我は出発の日までに癒えたのだ。
肩を回しても痛みは無い。
全快だ!
そんな訳で補給部隊の20人と、僕達第3小団は都市を出た。
隊列の1番前にタロウ小団長とケンセイ、
真ん中辺りにアンネとチカセ、
最後尾にキヨマルと僕、それと馬。
しばらく歩いて森へと入っていく。
日が落ち始める頃、前を歩いていたおじさんが振り返って話しかけてきた。
「よう、兄ちゃん随分若いな、歳は幾つなんだい?」
「僕はこの夏で17になったな」
「ほう! ゲドウマル様と同じやんな」
「え! え?」
ゲドウマル様が僕と同い歳!?
あんな長い年月を生きて来たかのような目つきなのに。
僕の困惑をよそ目に、おデコが凄い広いおじさんは次にキヨマルにも聞いた。
「あんたはどうなんだ?」
「……私は19になりました」
「こちらもまだ若いな、それにしても、ワシは先の戦場で兄ちゃん達の戦いっぷりを見てたが、たまげたな〜」
そういいながら、自分のおデコをペチっと叩いた。
「ワシなんてこんな歳になるのに、戦果の1つも上げられやしない」
「おじさんは50ぐらい?」
「そんな歳行っとらんわ! まだ47だ!」
「ご、ごめん」
ほぼ当たりじゃないか!
「はぁ〜、こんなんじゃ襲われた時生き延びられるかどうか分かりゃしない」
「ついこの間にウルス兵を追い返したのに、そんなすぐ来るのか?」
「ウルスの者共だけじゃない、近頃は盗賊がよく出る」
それは初耳だ。
そうなのかとキヨマルの方を見る。
キヨマルは僕の視線を受けて頷いた。
「そう言えば、イサミは話し合いの場にいなかったですね。
どうやら行商人を狙っていた賊が、戦時中に村を襲うようになり、今度は兵団の補給部隊をも狙い始めたと話しが上がったんです」
「そうなんだ」
なんでそんな事に……兵団の補給部隊なんて金目の物なんて持って無いんじゃないか?
奪っていく物なんて、食べ物ぐらいしか無さそうだけど。
つまりはーー。
「盗賊団は食べ物に困ってるってこと?」
「さてな、そうなのかも知れないし、はたまた別の思惑があるのかも知れないな。
兄ちゃん達も気をつけろって事よ、特に夜はな。
寝込みを襲われたって話だ。
横になっている時、気配を感じて瞼を開けるとーー、目の前には知らないヤツが同じく横になってこちらをじっと見つめてくるーー」
「こわ! やめてよ!」
それ本当に盗賊の話!?
お化け見たいな話じゃないか!
あー、嫌な事聞いた。
夜が明けた。
「はぁぁあっ!」
大きいあくびをしながら目を擦る。
昨晩、僕はあまり寝付けなかった。
見張りの人を信用して無い訳じゃ無いんだが、寝落ちするまで常に片目を半開きにしていた。
特に理由は無い、何となくだ!
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それからというもの、僕は毎晩気を張り巡らせていたが、襲われる事なんて無かった。
無駄にビクビクしてしまったな。
そんな事より、昨日の昼間にバレナに到着したのに、もう今日ブラウニス城塞に戻るために出発するときた。
そのため、僕は今せっせと荷馬車に大小様々な木箱を積んでいる。
「イサミー、そっちは終わったか?」
「あとちょっと!」
タロウ小団長に返事をしつつ、ひょひょいっと残り3つ木箱を積む。
「終わったー!」
「よし! ではこちらはは準備完了の旨を伝えてくる、貴様達はここで待機!」
「「了解」」
僕が荷台に腰を下ろしてしばし休憩した後、出発した。
2日目と3日目を寝ずに移動し、4日目の夜。
今だに怪談みたいな話しにビビる訳も無く。
僕は1人で用を足しに茂みの中に入って行った。
何となく視線を感じて横に顔を向ける。
そこには女の人がいた。
お、お化け!?
それとも盗賊?
びっくりするも、盾を構えて腰を落とし、剣に手を伸ばす。
でも彼女は動かない。
僕の事を見ている、微笑んでいるようにも見えなくもない。
恐る恐る彼女の顔を見つめる。
暗くてよく見えないが。
彼女の顔立ちにはどこか、コトノの面影があるような気がする。
髪色も濃い緑色をしている。
でもハッキリと、僕の知ってるコトノでは無いと分かる。
なんかこう大人って感じだから。
「敵襲ーー!!」
僕が来た方向から大声がする。
思わずそちらの方を一瞬見てしまった。
直ぐにもう一度、コトノに似ている女の人の方を向いたが、彼女はいなかった。
音もなく姿が消えてる事に冷や汗がてる。
やっぱりお化けの類なのか!?
とりあえず戻ろう。
野営している味方に何かあったようだ。
もしかしたら僕と同じお化けを見たのかも知れない。




