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勇者  作者: 海目 愚丸
なんやかんや
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第二十八話「侍」

 城内は煌びやかな装飾で埋め尽くされていた。

 戦闘の痕など1つも無い。

 よくこんな綺麗に保ったまま、城を落とせたと思った。

 

 僕達はとてつもなく広い部屋まで通される。

 大きくて、長いテーブルがいくつも置いてある。

 まるで宴会場みたいだ。

 僕の村では宴会の時、広場にテーブルや椅子を並べるのだが、それを室内に持って来たって感じだ。


 部屋の真ん中よりも少しズレた場所目をやると、テーブルや椅子がどかされて、人の集団が1箇所に固まっていた。

 楽しげな雰囲気しか無さそうな場所だが、

 彼らはこの部屋に似つかわしくない程、どんよりした雰囲気をしていた。

 中には苦しそうな顔をして、

 床に敷かれた布団の上に寝かされている者もいる。

 彼らはこの都市を……いや、この城を占領しているバレナ兵だ。


 でもかなり人数が少ない。

 100人もいないと思う、

 しかも30人ぐらいは怪我人で動けなさそうだ。


 すると、隅にいた兵士の内から1人、すっと立ち上がった。

 彼はそのまま両膝を曲げて、手のひらと額を床に擦り付けながら滑り出て来て、

 僕が勝手に偉いであろうと思ってるバレナ兵の人に向けて言った。


「申し訳ありませぬ、殿下! 今すぐ腹を切ってお詫び申し上げます!」

「よい! まずは状況を説明しろ」

「……はっ!」


 跪いている男は、ボロボロと涙を流しながら語った。


---


 彼らの会話の最中。


 僕はケンセイに気になった事を聞く。


「あの人、殿下って呼ばれてたけど偉い人みたいだけど知ってる?」

「さぁ」

 

 気の抜けた返事が帰ってくる。


「貴方たち知らないんですの?」


 アンネがマジかよって顔で割って入って来た。


「あの方はバレナ帝国の『5人の侍』の内の1人。

 ゲドウマル様ですわ」

「ほえー、侍ってあの有名な?」

「そうですわ」

「斬撃を飛ばして山も両断するってあの?」

「いや……そんな侍、聞いた事ありませんわっ」


 侍は斬撃を飛ばして山を両断できるという話は嘘だったのか。

 なんだよ、騙された。


「なんで侍って5人しか居ないの?」

「そう簡単にはなれませんわ。

 強さはもちろん、知略や品格をも求められますわ。

 昔は7人の侍がいたと聞きますわ」

「カッコイイね」

「そうですわね」


 しかし、そう言う割には目の前の侍は、

なんかそれっぽくない気がした。


「……なんて言ったか、あの髪型、なんだっけ」

「ちょんまげですの?」

「そう、それ! あの人……殿下はその髪型じゃないんだね」

「そうですわね、他のお侍様はちょんまげですわ。

 ただ、ゲドウマル様はバレナ帝国史上、初の国外から招かれたお方ですわ、ですから殿下は例外と考えてください」

「わかった!」


 想像以上に凄い人だとわかった途端、

 ゲドウマル様をジロジロと見てしまう。

 目立った所は無いな、普通だ。

 ウルスの王の様な不気味さも、

 スサノオの様な鬼気も感じられない。

 艶やかな着物に身を包んでいるその姿は、とても戦に出るような感じでは無い。


 バレナ兵のほとんどは、緩やかに湾曲した、片方にしか刃が無い『刀』を好んで使っている。

 殿下の腰にさしているのもそれだろう。

 長さは3尺ぐらい、4尺は無いと思う。

 他の者の刀よりも少し長いぐらいだ。

 鞘から抜いた訳じゃ無いから実際は分からないけど、多分あってる。

 



 僕が無遠慮に殿下を見ていると、すぐ傍にいた

タロウ小団長が出口の方に向かって急に走り出した。

 それに続いてアンネ、キヨマル、ケンセイが走り出した。


「何してん、イサミ!」


 走りながら振り返り、僕を呼ぶケンセイ。

 僕は慌てて彼らを追いかける。


「どうしたの!」

「多分、物資を持って都市外に待機してる奴らがヤバイ!」


 ケンセイが言った事は、よくわらない。


「どういう事だ!」


 僕が頭を悩ましていると、タロウ小団長が走る

スピードを落として、僕の横まで来る。

 

「貴様、話を聞いてなかったな?」

「すみません!」

「先程、殿下に泣きついていた男が言ったのだ。

 都市の占領後、補給部隊が来なかったと。」

「…………つまり?」

「ウルスはわざと城塞を明け渡して、後方から来るであろう補給部隊だけを狙い、分断したのだろう」

「おお!」

「さすれば、城塞を囲んでいれば勝手に倒れていく」


 相手をわざと引き込んで倒す。

 この策、覚えがある。

 以前、ウルスが村を犠牲にバレナ兵を濁流で倒した策略に似ている。

 今度は村どころか、都市を犠牲にしたと言うのか。

 なんと卑劣な。


「シラホシが危ない!」

「そうだ、急ぐぞ!」


 タロウ小団長は僕を置いていく程スピードを上げた。

 いや、タロウ小団長だけでは無い、

 他の皆も一段と速くなった。

 彼らの背中がどんどんと遠くなり、塩粒ほどにまで小さく見える。


 ……僕は置いてかれた。


---


 僕が都市の外に出て、そこからさらに走り、

物資部隊の待機地点に到着した頃。

 既に戦いは始まっていた。

 

 すぐさま、剣戟と叫び声が聞こえる中に僕は身を投じた。


 ひたすらに乱戦の中を右に、左に剣を振る。

 そして、常に味方の誰かにくっついて、

味方の隙を埋めるように立ち回る。

 味方が反撃を喰らわぬように、何度も僕が割って入り盾で弾く、そしてそのまま剣を浴びせて倒す。

 理想的な動きだ。


「ごっついええ盾やなー」


 突然目の前に、ぬるりと男が現れた。


 たった一言喋った男にゾッとする。

 なにか、嫌なものを感じとった。

 敵には変わりない。

 

 目の前の男の髪はほとんどが白髪で所々黒い、

まだら模様である。

 まだ大して歳をとって無さそうなのに、白髪が生えてる事もゾッと感じた理由の1つかも知れない。

 だが、1番は立ち振る舞い方だ。

 このまだら男、戦の場にいながら余裕そうな雰囲気を漂わせている。

 格上の者が格下に稽古をつけてあげる時の様な、

手加減してるみたいな感じに見える。


 まだら男は1歩、僕の方に近づく。

 反射的に僕は半歩、後ろに下がった。


 それと同時に、僕の両隣からボトボトと何かが落ちる音がした。

 見ると、両隣にいた味方の首が無くなっていたのだ。


 直ぐにまだら男に目線を戻すが、彼の剣はまだ腰についている。

 それどころか、柄に手を掛けてすらいないのだ。

 今の一瞬でまだら男は剣を抜いて、斬って、鞘に戻したと言うのか。


 ありえない。

 まだ剣が届く間合いにすら入っていないのに。

 どういう事だ。


 彼はまた1歩ずつ、近寄ってくる。

 同時に彼の周りにいる者は1歩ずつ下がった。

 

 僕はあまりの出来事に、構えてはいるものの、硬直して動けないでいる。

 ゆえに、必然的に一騎討ちの形になった。


 

 まだら男はくすくすと笑った。




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