二十七話「仲間」
草原を4日かけて森へ、またそこから5日かけて森の中を歩いた。
とうとう見えてくる。
ウルスの城塞都市だ。
城壁が無いので、都市の真ん中にドデカい城があり、その周りを街が広がっているのがよく見える。
ここ数日、タロウ小団長は何かとバレナの兵士の輪の中に混じっていた。
彼らと仲良くなり、色々と情報を聞き出して来て、僕たちに共有してくれた。
その際、地図を見せてくれたのだが、初めて地図というものを見た僕は、世界の形に思わず感嘆の声を漏らしてしまい。
田舎者丸出しで、ちょっと恥ずかしかった。
大昔に、タダタカという物好きが、この陸はどうなっているかを気になって、隅から隅ま見て回って形を記録したそうだ。
でも、タダタカは地図完成間際で病で倒れてしまい、残りは彼の弟子達がーー、それはまた別の話だ。
今はどうでもいいな。
ともかく地図によると、ウルス王国は変な形をしていた。
んー、そうだな、手のひらに見えた、右手の。
あの時、チカセと一緒に倒した熊の掌が最も近いだろう。
手のひらの部分に1番大きな領土があり、その上に5つ、肉球の並び見たく離れた位置に領土を持っている。
1番重要な戦況は、バレナ軍はウルスの中指と薬指の位置にある肉球、つまり領土を占領していると聞いた。
でも、押し返されつつあると情報があり、そのために増援として、僕達が真ん中の肉球まで来たという事だ。
たしか、ここはブルン領って名前だ。
僕はこの都市を見て、初めてウルスに連れてこられた町じゃないと思った。
あの町は歩き回ったから分かる、遠目からでもここでは無いと、こんな大きな都市じゃ無かったしな。
ウルスに来てまず、コトノを助けようと思っていた。
自分がどうなるか分かっていただろうに、それでも僕を逃がしてくれた彼女に恩を返したい。
でも、どの領土にいるか分からないとなれば、手当り次第探すしか無いな。
「全体! 止まれ!」
僕があれこれと考えていると。
バレナの兵士の1人が、軍勢の歩みを止める。
多分、この兵士がこの場で1番偉いのだろうと勘ぐる。
そして彼は近くの男と何やら話す。
「どうだ? 見えるか?」
「…………あぁ、城に我らがバレナの旗が立っている」
「まだ耐えているという事か」
「そのようだ」
偉いであろう兵士は僕達に向き、声を張り上げて言う。
「これより! ブラウニス城塞を占領中の仲間と合流し、よりこの都市の占領を強固のものとする!」
号令で僕達は都市に入っていく。
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僕達は2手に分かれた、正確な数は分からないが。
都市外で物資を持って安全だと分かるまで待機する方と、都市内に入って占領している味方と合流し状況を確認する方。
僕達第3小団は都市内に入る部隊になった。
だがそこから、都市内に行く者たちをさらに3つの部隊に分けられた。
別々のルートで城塞に向かうらしい。
なんの意味があるのかとタロウ小団長に聞いたら、都市全体の視野を確保しつつ、保険であろうと言われた。
よく分からないけど、何となくわかった。
僕達がいる部隊は北から都市に入り、一直線に城塞に向かう。
ちなみにシラホシは都市外の部隊に預けた。
戦いの跡か、都市内は荒れ果てていた。
それを見てキヨマルが口を開く。
「誰もいないですね」
確かに誰もいない。
占領してると言うのならば、味方のバレナ兵がいてもいいのだが、ここの住民すらも見当たらない。
本当に占領してるのかと疑問に思う。
城塞のすぐ近くまで来ると、城塞の周りを囲っている兵士が多くいた。
彼らも近づいてくる僕達に気が付き、振り向く。
彼らが振り返る前に、タロウ小団長は声を大きくして言った。
「戦闘準備!」
第3小団の皆が剣を抜く、僕も少し遅れて剣を引き抜いたた。
僕らの周りにいる他の兵士にも伝播して、彼らも次々に剣を引き抜く。
僕らの前にいる、振り返った兵士の革鎧にはウルスの紋章が入っていた。
既に彼らも武器を構えていた。
敵だ!
向こうもやる気だ。
数は、10……15…..20、もっといるが、圧倒的にこちらの数の方が多い。
ここを占領しているバレナ軍はどうしたのだろう。
城塞の方を向いて、囲うようにウルス兵がいたから、城塞の中にいそうだな。
返り討ちにあって、城塞内に籠ったって感じか?
タロウ小団長やアンネの予想通り、ここを占領していたバレナ兵がピンチだって事は分かる。
僕は腰を落とし、合図を待つ。
そしてそれはすぐに来た。
「行くぞ!」
タロウ小団長の一言で、第3小団の僕達が先陣を切った。
一気に駆ける。
「イサミ! 背中は任せたで!」
「わかった!」
僕はかろうじてケンセイの後ろを走る。
そのままケンセイは敵の1人との間合いに入り、
両手で剣を右下から左上に向けて降った。
ギャキン! と鋭い金属音が響いた。
ケンセイの攻撃を受けた兵士は、完全には防ぎきれず、後方へと吹き飛んだ。
そして、上下左右に回転しながら城塞の壁にめり込んでいった。
さすがだな。
だが僕が感心する暇与えてはくれなく。
ケンセイが剣を振り終えて構えを戻す隙を狙って、すくざま剣を振るウルス兵が見える。
前の僕なら、ただケンセイが斬られるのを見るしかできなかったが、今の僕なら間に合う。
右脚を少し脱力する、だが地面を蹴る瞬間だけ物凄い力を込める。
すると周りの景色は瞬時に変わり、ケンセイに斬りかかってるウルス兵の目の前まで1歩で飛んで来た。
そして同じ要領で盾を振り払い、剣を弾く。
お坊さんに習った事が、ちゃんと身体に染みていると感じる。
剣を弾かれたウルス兵は大きく体勢を崩した。
僕が剣を振る前に、
さらに僕の後ろにいたチカセが前に飛び出し、
体勢を崩したウルス兵の喉が切り裂いて、頭を飛ばした。
「ありがとう」
「……当たり前の事しただけだけど」
チカセは少し首を傾げながら言った。
僕としてはカバーしてくれたからお礼を言うのは当然だが、チカセはそうじゃない見たいだ。
「余裕やったな」
ケンセイはいつも通りって感じだ。
他の皆はどうかと見回すと、タロウ小団長、キヨマル、アンネ、それぞれの足元に敵兵が転がっていた。
うん、とても心強い仲間達だ。
仲間達に僕が盾なしで挑んだら一瞬で命を奪われるだろうな。
盾を使えば、3手……いや2手は耐えられるかもしれないが、盾を剥がされてやられる未来しか見えないな。
僕も少しは戦えるようになったが、まだまだ、彼らには程遠いと理解する。
チカセなんて普通に戦っても強いのに、森の中で戦う時はトリッキーな動きになって、より強くなるしな。
他の皆も、得意な場面があるかも知れないな。
僕が普通よりも強くなれる場面ってなんだろ。
パッと思いつくのは、海の中だな。
僕は泳ぎが得意だし、息止めできる長さには自信がある。
その上、盾が水掻きの役割になってより速く泳げる気がするな、あ、でも水流に捕まって流されるのが怖いか。
自分が有利に戦える場面を想像するも、海の中で戦うなんて機会は絶対に来ないと思い、想像をやめる。
既に他のバレナ兵も戦闘に加わり、乱戦と化していた。
だが彼らも、勝ち目が無いと分かっていたか、すぐに撤退して行った。
僕達は大した犠牲も出さずに、城塞の北側を制圧出来た。
北側には門が無く、僕達は城塞の壁に沿って移動した。
城塞の南側に移動したら、他の部隊が見えて来た。
どうやら彼らも戦闘があったようだ。
そして今しがた、城内の味方に正門を開けてもらって、いざ入るぞって場面だった。
タイミングがいいな。
僕達は招かれて、中に入った。
入った後、僕達の後ろで正門は固く閉められた。




