表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者  作者: 海目 愚丸
なんやかんや
17/76

第十七話「思わぬ再会」

パチクリと瞼が開く。

 今まで何度も経験した、一日が始まる瞬間。

 すぐには身体を起こさない。

 瞼を閉じてもう1度眠りに就きたくなる、この感じ、このとても心地よい感じが愛おしい。

 朝にこの心地良さを味わうために、前日の夜は寝るんだと思えるほどに。


 ……昨日の夜、寝たっけ?

 あれ?

 昨日は何してたんだっけ?

 確か……いつも通り朝早く起きて、母ちゃん、父ちゃん、爺ちゃん、ハル、皆で朝ごはんを食べてから、漁のため海に出る。

 そうだ、そんな感じだった気がする。そんで、熊に襲われるのだが、そこをミノさんに助けて貰ったんだ。そして、そして……トラジロウに……。

 熊? あれ、ミノさん? ん? 


 そこでようやく脳が覚める。

 自分が何者であるかを思い出す。

 最後の記憶が蘇る。


 上半身を起こす。

 手を震わせながら、両手で自分の喉を触る。

 ザラザラしていた。

 これはカサブタだ。喉に縦に細長いカサブタができていた。


 生き延びれたのか……僕は。


 続いて当たり見回す。

 誰もいない。

 ここは、どこだ?

 

 僕の知っている部屋じゃない。

 床も変だ、石とか木の板でできた床じゃない、草? 箒に使う稲わらを編んだような床だ。

 それに、僕が寝ていたのはベッドじゃない、床に寝具が直接敷かれている。

 起き上がって外に出ようとしたが、ドアと思わしき物に、ドアノブが付いていない。

 押しても開かない、どうやって開けるんだ。

 開かないドアがある場所は、1段床が低かった。ついでに、僕の靴が置いてある。

 

 靴を履いて、他にどこか出れる場所が無いか探す。

 

 すると、壁に四角い板が取り付けられている箇所を見つける。

 窓? ゆっくりと押してみる。

 ちゃんと開いた、そしてそこから見える景色は1面森だ。

 地面までの高さはあまり無い。せいぜい2階ぐらいの高さだ。

 革鎧は無くなってたが、幸いに下に着ていた服はそのままだった。

 このまま飛び降りて、抜け出そうとすぐに決めた。

  最後に忘れ物のが無いか見るように、部屋を見回す。

 壁に立て掛けられてる、丸い円盤見たいな金属を見つけた。


 これ、僕の盾じゃないか!?


 盾を左手に着けながら、もしかして剣もあるのじゃないかと探すが、無かった。


---


 森の中を小走りしがら、考える。


 ここは、カラカティッツァ王国じゃない。多分……ウルスの国だ。

 さっきいた部屋はカラカティッツァの民が暮らすような部屋じゃないからな。

 

 ならば余計謎が深まる。

 

 僕はあの時、グウラ城塞で喉を刺されて、亡くなる寸前だった。

 そんな僕を誰が、なんでウルスまで運んだのだろうか。

 

 思考を巡らせながら足を動かしていたが、その足を止めた。

 茂みを掻き分けたら、目の前に人がいたのだ。

 まだまだ抜け出した場所からさほど離れてはいない、当然と言えば当然。


 のだが……。

 僕は今まで考えていた事が全て吹き飛んだ。

 段々と心が恐怖で染まっていく。

 何故ならば、目の前にいる者は、紛れもなく僕の喉を槍で刺した人物だから。

 見えた瞬間に引き返すなり、茂みの中に飛び込むなりすれば、回避できたかも知れなかった。

 でも足が動かなかった。

 故に目が合った、ウルスの王と。

 

 彼は僕に向かって歩いてくる。


 2度も顔を見られた事がある。

 自分が敵兵であるとバレたに違いない。

 今度こそ、本当に息の根を止められる。そう思った。


「……新兵がこんな所で何をしている?」


 王はまず槍では無く、言葉を投げかけて来た。いや、彼は今、槍など持っていないが。

 僕をウルスの兵士と見間違えているのだろうか。

 その言葉は優しい物言いだった。


 ど、どうしよう。

 僕は今、ウルスの兵士装うとして、王様を知っている体で話すか? それとも知らない風を装うか?

 自分の事を思い浮かべる。

 僕はカラカティッツァの王の名前は知っているが、顔は知らない。ならばここはウルスの王の顔を知らない体で話そう。

 

「あ゛……み゛、道に迷って、帰り道が分がらなくて……」


 変な声が出る。

 上手く喋れないし、喋ると喉が痛い。


「………..」


 なんで無言なんだ!? 怖い。

 やっぱり、僕の言い分は苦しかったか?

 チラッとしか見ていなかったが、僕が抜け出した建物は、街か都市の端にある兵舎だったのだろう。

 そんな場所からどうしたら道に迷って、森の中まで来る事があろうか。

 僕でも怪しいと思う。

 やばい! 言い分を間違えた。

 今度こそお終いだ。


「……そうか、街はあっちだぞ?」


 だが、王は僕の後ろを指さして言った。

 やはり僕が敵兵だと気がついていないのだろうか。

 王にとって僕は有象無象の内の1人という事か。

 

「あ゛りが「ぐぅぅぅう」……」

 

 感謝を伝えて、その場を立ち去りたかった。

 なのに僕のお腹は言葉を遮って、自分の欲を出す。

 ちょっと恥ずかしい。


「付いて来い」


 すると、

 王は僕のお腹をじっと見ながら言って、茂みの中に入って行った。


 な、なんでぇ?

 どゆことー?

 そう思いながらも断る事もできないし、ついて行く事にした。

 その際、王が僕に向かってくる前に立っていた位置、そのすぐ側の木の根本に小さな墓石のような物が目につく。

 名前は彫られていなかった。

 誰のだろうと少し気になったが、直ぐにそんな事は頭から抜ける。

 

 慌てて追いかけようと、僕も茂みの中に入った。


---


 王はここら辺に詳しいようで、ついて行くと直ぐに川辺に出た。

 川辺には既に焚き火が用意されていて、魚や蛇なんかが焼かれていた。


 王は焚き火のすぐ側の岩に腰掛けた。


「道に迷ったが、焼き魚の匂いを嗅ぎつけてあそこまで来るとは、やるな」


 そう言って、焼き魚が付いている串を1本、手渡された。


 何か貰ったし、

 訳の分からん事で褒められた。

 僕がお腹を空かせて、ここまで来たとでも思っているのだろうか。

 なんか、イメージと色々違くて混乱する。

 戦場では相手の動きを全て理解していると思える程だったのに、今は何も理解してないように見える。

 しかも、王様はもっと豪華はものを食べてると思ってたけど、僕が来なかったら、こんな所で1人焼き魚を食べていたのかと思うと、少し恐怖心が薄れゆく。


 僕は渡された焼き魚を食べながら考えていた。

 グウラ城塞はどうなったのか、

 ここはどこなのか、

 ミノさんがどうなったかだとか、

 知りたい事はいっぱいあったが、どれを聞いてもヤバい気がする。

 もしかしたらあの場にいたミノさんとトラジロウも連れて来られたかもしれない、いや、どうだろうか、うーん。


「ーー下、陛下ー!」


 遠くから誰かが大声を出しながら走ってきた。

 華奢で豪華な服に身を包んだ男の人だ。

 多分貴族か王族かな。

 彼はようやく僕らの前まで来て、息を整えてから言った。


「陛下、またこんな所においでになって、早く戻りましょう」


 王はちょっとだけ嫌そうな顔していた。

 華奢な男は一瞬僕を怪しむ目つきで見て聞いた。


「ん? この者は誰でしょうか?」


 そう聞かれた王は一瞬目を泳がしながら答えた。


「……兵士だ」


 その言葉を聞いた途端、華奢な男は左手を右腕に添えながら、右手で目を覆った。

 信じられないとでも言いたげだ。


「陛下ともあろう者が、下賎な者と同じ卓を囲うなどあっては成らぬ事です」


 下賎!?

 いや待てよ、確かにそうだ、僕見たいな平民の出が今王様と一緒にご飯を食べている。

 普通に考えてありえない。


 そして華奢な男は僕の方に向く。


「そなたも何故兵士の分際で陛下と対等かのような振る舞いをしているのです?」


 すごく怒ってる。

 貴族や王族に失礼な真似をしたら処刑されてもおかしくない、それぐらいの常識は僕でも知っている。

 王様を知らないて体を装うのは仇となったか?


「ず、、ずみません、王様とはづゆ知らず、ご無礼をお許しください」


 立ち上がってから直ぐに片膝を付いて頭を垂れる。

 咄嗟にカラカティッツァの兵団で習った礼儀作法をやる。

 ウルスの礼儀作法は分からないけど、頼む、許されてくれ!

 

「俺は構わん」


 王は許してくれそうだ。

 そう思って、少し顔を上げて華奢な男を見る。

 めちゃくちゃ目を見開いて王を睨んでいた。

 こ、怖! 

 矛先を僕から王に変えた見たいだ。

 戦場にいた王よりも怖いかもしれない。


「……余は構わん」


 少し間を置いて、なんか言い直したぞ?


「そうですね陛下。一国の王たる者が『俺』などと野蛮な自称はいけませぬ」

「ああ、分かっている」

「カラカティッツァを手中に治めた今、次に向けて考える事は山積みです、ささ、戻りましょう」

 

 そう言われて王は立ち上がった。


「行くぞ、イナリ。……道が分からないそなたもついて来い」

「仰せのままに」

「は、はい」


 どうにか返事をした。

 先頭を王が行き、その斜め後ろをイナリという者が続く。

 僕は最後尾になる。

 

 え、えぇお?


 声には出さなかった、口を開けるだけにとどまった。

 でも確実に今、僕はマヌケな顔をしながら歩いている。だってそうだろう?

 急におかしな事を言い出したんだ。

 カラカティッツァを手中に治めた?

 どうゆう事だ? 戦に負けたって事か?

 確かにカラカティッツァはほとんどの領土を奪われて、あとは王都を攻め込むだけって所まで追い詰められている。でも……ほ、本当にもう負けたのか? もうカラカティッツァは無いのか? 

 そんな事って……。

 夢だと誰かに言って欲しかった。

 

 クラクラして真っ直ぐ歩けなかった。


---


 戻ってくる頃には、僕は落ち着いていた。

 

 僕が抜け出した建物が見える、その周りを白い服を着た老婆がウロウロしていた。

 彼女は僕の顔を見るなり、僕を指さしながら駆け寄ってきた。


「あなた! 病院から抜け出して! 何考えてるの!」


 びょ、びょういん? ってなんだ?

 顔を右左に動かしながら、キョロキョロしながら慌てる。

 

「そなた、病人だったのか?」


 華奢な男、イナリに聞かれる。


 びょうにん? 次々に知らない言葉が出てくる。

 皆知ってる言葉なのか?

 このままだと非国民だってバレる。

 演技続行だ!


「そうですね、いつもビョウニンをやっています」


 今しがた聞いた言葉だし、喉の調子も悪くて、カタコトになってしまった。


「そうか記憶が無いのか、気の毒に、どうりで陛下の顔を知らない訳だ」

 

 知っている風に演じて見たが、ダメだったらしい。

 何故か、イナリに憐れみの目を向けられた。


「そちの者、その者が治り次第、兵舎に案内してやりなさい、自分が兵士だと言う事は覚えているようだ」


 イナリは白い服を着た老婆に言った。

 

「畏まりました、イナリノミコト様。そして1目見れて光栄で御座います、ウスイノミコト様」


 老婆はイナリと王にそう言って、両膝と手、そして頭を地につけた。

 その後、僕は老婆に手を引かれて、びょういんと言う場所に連れてかれた。


---


 割り当てられた部屋で老婆にあれこれと聞いた。

 どうやらここは病や怪我をした者を集めて、白い服を着た者が手当する場所らしい。

 以前は病院というものは無く、ウルスもカラカティッツァと同じで、怪我をしたら自分の住処で治るのを待つのが普通だ。運が良ければ旅医者に見てもらえる時もある。

 だがここ数年で、ウルス王の命であちこちに医者と、世話をする看護師が在住する病院が建てられたらしい。

 しかも、病院の医者と看護師になるには、正しい医学を身につけて、国がやっている試験に合格しなければならない。

 それにより、病や怪我で亡くなる者が少なくなったとかで、慈悲深き王だと国中に顔と名が知られたらしい。


 まぁ、ウルスの王の偉業など僕が気にする所では無い。


「はぁー」


 ため息がこぼれる。

 そもそも戦で国が負けたらどうなるのだろうか。

 領土が全部取られるぐらいしか分からん。

 カラカティッツァが滅びたのだとしたら、もうウルスの王を倒す必要も無い。


 これからどうしよう。

 本当にカラカティッツァが滅びたのか、帰って見ないと分からない。

 父ちゃん、母ちゃん、ハルは無事でいて欲しい、

 第3小団の皆の無事も確かめたい。

 帰りたいな。

 でも帰りたくても、帰り道が分からないし、1人で帰れるか不安だ。

 このままここにいるのかな。

 そしたら僕はウルスの兵士になるのだろうか、それは嫌だな。

 

 そう思いながら、僕は畳の上で盾の手入れをした。 その際に、盾の裏側に仕込んだ短剣が無くなってる事に気がついた。

 ここ武器持ち込み禁止の病院だしな、没収されたのか。

 結構気に入ってたのに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ