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冴えないOL、目を覚ますとギャル系女子高生の胸を揉んでた  作者: 白藍まこと


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19 社会の表と裏は上坂さんを通じて


 どんなにだらしなく生活しているあたしでも、それは子供のうちだけで。


 社会に出て働くようになれば、きっと規則正しい生活を送るようになるのだと思っていた。


 そういう強制力が社会にはあるのだと想像していた。


「……」


「すぴぃー」


 日曜日。


 時刻はお昼の12時を過ぎたところ。


 あたしの目の前には、ベッドに横たわり気持ちよさそうに寝息を立てている人がいる。


「あのぉー上坂(うえさか)さん」


「すぴぃー」


 声を掛けても全く反応を示さない。


 改めて確認しよう。


 時刻はお昼の12時を過ぎたところだ。


 もうかれこれ、この人12時間以上寝ていることになる。


 さすがに寝すぎでしょ。


 上坂さんだけ寝てるから、カーテンも開けられないし……。


「上坂さーん。朝だよぉ」


「……すぴ」


 ダメだ。


 全然、起きる気配がない。


「やっぱり上坂さんってさぁ……」


 あたしはこの人と一緒に生活する内に段々と気付き始めていた。


 “この人、結構だらしない人なのではないか?”と。


 会社では七瀬(ななせ)さんのような人を指導する事があるのだから、仕事は出来ているのかもしれないけど。


 それでも家の中で見せる上坂栞(うえさかしおり)という女性は、そんな気配を一切見せない。


 特に最近は出勤前はあたしが起こしてばかりになっている。


 今日は休みだから寝かせてあげようかなっと思ったら、これだ。


「起きろぉ」


「ぐえっ」


 強硬手段。 


 あたしは上坂さんの体を揺らして強制的に目を覚まさせる。


 上坂さんは眉間にしわを寄せて、次第に薄く目を開いて行く。


 その目つきはとても同居人に見せるようなものとは思えないほど鋭い。


「……なにしてんの、怒るよ?」


 うん、もう絶対に怒ってる人の言い方だし。


 ていうか目はもう怒ってるし。


「寝起きわるっ」


「……そりゃそんな無理矢理に起こされたら、誰だってこうなるでしょ」


「いやいや、あたしが何回優しい声で起こそうとしたと思ってんの」


 上坂さんは“何言ってんの?”みたいな表情で首を傾げる。


 それはこっちがしたい表情なのだけど。


「とにかくもう起きなよ」


「……眠いのに?」


「もう昼過ぎてんだよ?」


 上坂さんは随分とゆっくりと首を回して時計を見る。


 じっーと見て、今の時刻を確かに確認したはずだ。


「ギャルに昼過ぎまで寝ているのを咎められるなんて、どんな世界線だいここは」


 そして意味不明な発言を零す。


「いや、さすがに夜ちゃんと寝て、昼過ぎまで寝ることはあたしもないから……」


「ふむ」


 分かっているのか、いないのか。


 上坂さんは曖昧な返事をしたまま、再び目を閉じる。


「いや、寝んなし」


 もう一度体を揺らす。


 そもそも、どうして体を未だに起こそうとしないのか。


雛乃(ひなの)……子供の君には分からないかもしれないけど、大人ってこんなに寝ないと回復できないほど、疲れている生き物なのよ」


「えー。そうやって寝すぎて夜寝れないパターンじゃないの?」


「そうかもね。そして結局早朝に寝て、寝不足で出勤するのもまた一興」


 意味不明な口調で、これまた意味分からないことを言っている。


「じゃあ、もう起きなよ」


 あたしは無理矢理、上坂さんの体を起こす。


「あ、あれ……?」


 しかし、上坂さんの体は思ったより簡単に起き上がらなかった。


 抵抗している素振りはない。


 それなのに、なんというか……単純に、重いのだ。


 体つきはどう見てもあたしより小さいのに、質量がしっかりしているというか……。


「おいっ、なんだそれっ。今の反応はなんだそれっ」


 上坂さんがガバッと身を起こす。


 さっきまでの眠気が嘘かのような俊敏な動きと、大きな声を張り上げて目には炎が灯っている。


「え、いや、あたしって思ったより力なかったんだなって……」


「うそつけっ。いま私のこと重たいなって思ったんでしょ?」


「思ってない、思ってない」


 さすがにそれは口が裂けても言えない。


 上坂さんがその事を気にしているのは明らかだし、誰だって体のことで言われたくない部分はある。


「これからだしっ、これから痩せるんだしっ」


「あ、へえ……そうなんだ」


「“アラサーがダイエットとか必死すぎて草”みたいな顔しないでよっ」


「してないけどっ!?」


 怖い怖い。


 上坂さんはたまに変なスイッチが入ると、こうしてヒステリックモードになる時がある。


 こうなると彼女のネガティブは止まらない。


「ふんっ、どうせ10代でモデル体型のあんたには凡人の私の苦労なんて分からないでしょうよ……」


「いや、ダイエットくらいあたしもよくするし」


 特に高校生になってからはより脂肪がつきやすくなっている感じがして、よく食べ物を抜いたりはしていた。


 こっちに来てからはしてないけど。


「素材がよくて若いのに、努力までしてんのっ。ますます私の立つ瀬がないじゃない。凡人にマウントとって楽しい!?」


「楽しくない楽しくない……」


「私なんか相手にもしてないってことねっ」


 あー……。


 寝起きの上坂さん大変だなぁ……。


 いつもこんな不安定な闇メンタルを持ちながら、生きてるのかなぁ。


 全く分からないわけじゃないけど、大変だろうなぁとは思う。


 どうしよ……。


 なんかしないと、多分ずっと言ってくるな。これ。


「……よし、落ち着きな」


 ぽんぽんと上坂さんの頭を撫でる。


 前はこれをして怒られたけど、なんかもう子供みたいだから、こうして落ち着かせてあげないとダメなのかなって思った。


 他にどうしたらいいか分かんないし。


「……」


「……」


 すぐ手を払われるかと思ったけど、上坂さんの反応はない。


 黙ってあたしに頭を撫でられ続けている。


「……いいの、上坂さん?」


「気持ちいい」


 あ、いや。


 そっちの“いいの”じゃなくて。


 “撫でていいの?”って意味だったんだけど。


 やっぱりまだ寝ぼけていたのか、上坂さんはふにゃっとあたしに頭を撫でられていた。


 むぅ……。


 なんていうか上坂さんって。


 大人なのにだらしなくて可愛いなぁ……。



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