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5. はじめての迷宮


 翌日、大張り切りのザアラに手を引かれ二人は街の北側にあるイラピコ迷宮へとやってきた。ここは第七等級ラビリンスとされており全三階層のごくごく普通の初心者向け迷宮である。


迷宮主はマーレという、家畜の豚がそのまま狂暴化したような豚型の魔物である。


 入口付近には初々しい感じの冒険者パーティがちらほら見受けられ、和気あいあいとした雰囲気だった。


迷宮には国が管轄していない限り、誰でも自由に出入りが出来る。比較的危険度の低いこのイラピコ迷宮はレジャー感覚で訪れる人も少なくない。


 ルウナは隣で嬉しそうに迷宮内の地図を見ているザアラが目に入った。思わず溜息が漏れる。


 せっかく自由になれたのだから彼女はもっと楽しく生きたい。美味しいものをたらふく食べ、好きな本をでも読みながら、誰にも縛られずにのんびり暮らしたい。


迷宮なんかに興味はないし、魔物と戦うなんて億劫で仕方がなかった。


「戦闘はおれに任せてくれ。君は自分の身だけを護っててくれればいいよ」


「はぁ」


 彼女はまったく気のない返事を返した。そして気が付けばいつの間にか迷宮の中へと足を踏み入れていた。



 中へ入ってみるとそこは僅かな明かりに照らされていた。迷宮は地下へと続く洞窟のため、もちろん外の光は届かない。しかし、これもまた迷宮の謎のひとつではあるが迷宮内の壁や天井からは光が自然発光している。なかには砂漠のような灼熱の光を放つ迷宮も存在している。


 二人が第一層部分を進んでいると前方から一匹の魔獣が現れた。ラナラナと呼ばれるカエルの魔物で、いわゆる雑魚キャラである。ただ、とてもすばしっこく壁や天井に張り付いて移動するため低級冒険者でも手こずる相手だ。


「早速来たぞ! 君は下がっててくれ」


 ザアラがすぐさま駆け出し剣を振り下ろす。ラナラナは寸でのところでそれを避け、壁を蹴って天井へと張り付く。


「ザアラさん! 上です!」


 ハッとして上を向いた瞬間ラナラナは毒弾を吐き出した。ザアラは前方へ回転しながらそれをかわすと、すぐに立ち上がり天井へと跳び上がる。およそ三メートル程ジャンプしただろうか。一気にラナラナへと迫ると剣を突き刺した。そして彼は剣に魔物を突き刺したまま綺麗に地面へと着地した。


「おおー!」


 ルウナは思わずパチパチパチと拍手と共に歓声をあげた。流石は狩人をやっていただけあって彼の動きには無駄がなかった。


「そういえばザアラさんは加護とか持ってるんですか?」


「ああ、おれは両足に獣神の加護を持ってるんだ」



 この世界には魔法とは別に『加護』と呼ばれる特殊な能力を持った人間もいる。ある日突然、体に痣のような紋様が現れそれにより様々な力を得ることが出来る。その発現条件はわかってないが、一級冒険者の中には複数の加護を持つ者もいると噂されている。



 ザアラが持つ『獣神の加護』とは、痣が発現した部位の筋力が異常発達し身体能力が飛躍的に向上する。ザアラの両脹脛りょうふくらはぎには爪跡のような痣が刻まれていた。


「そんな凄い加護をお持ちだったらザアラさん一人でも大丈夫じゃないですか?」


「いやおれなんてまだまだだよ。それに仲間と一緒の方が冒険は楽しいだろ?」


 にこにこと笑みをこぼしながら彼は倒したラナラナから剣を抜いた。すると魔物の亡骸は地面へと徐々に吸い込まれていった。迷宮内で倒した魔物は、地面や壁に接触している場合はこうして吸収されて消えてしまう。

魔物の素材が欲しい場合はすばやくその部位を剥ぎ取る必要があるのだ。


 ラナラナが吸い込まれていった跡に小さな水色の透明な石ころが転がっていた。それをザアラは拾いあげてルウナに渡した。


「はい、これ初めての迷宮記念に」


「綺麗な魔血晶まけっしょうですね~ありがとうございます」


 これは魔物の体内から取れる魔血が結晶化したものとされている。形状や色が魔物によって異なっており、この魔血晶が魔物討伐の証にもなる。魔法媒体として使用され、魔力を溜めておいたり、なかには魔力を増幅させる魔血晶も存在する。


「青系統だから水魔法との相性が良い魔血晶ですね。私は水魔法使えないから帰ったら売っちゃいましょう!」


「えっ、えぇ~。せっかくの記念なのに……君は意外とさばさばした性格なんだね」


「合理的と言ってください! さぁ先に進みますよ!」


 

 その後も、魔物との戦闘はザアラ一人で十分だった。途中、ラナラナの毒弾に当たったりしたがルウナの解毒魔法でまったく問題なかった。


「やっぱり仲間がいたら心強いね。思いっ切り戦えるよ」


「まったく……調子に乗って宙返りなんかしなくていいんですよ! また毒浴びたら今度は治しませんからね!」


 

 そんなやりとりをしている間にいつしか迷宮主の部屋の前へと辿り着いていた。大人一人が通れるくらいの通路を抜けるとその先に迷宮主が待っている。二人はお互いの顔を見合わせると小さく頷いた。ザアラを先頭に通路へと入って行く。


 彼らが通った後、少しの間をおいて通路は少しずつ閉じていく。それをちらりと見たルウナに僅かばかりの緊張が走った。通路を抜けた先には広い空間が広がっていた。



 その中央で一頭の大きな魔物がこちらをじっと睨んでいた。その威圧感にルウナは思わずザアラの背後に身を隠した。なぜならその大きさが普通の豚の十倍近くある。


「マ、マーレってあんなに大きいんですか?」


「いや、おれが知ってるマーレはせいぜい牛くらいの大きさしかなかったはずだ。ともかくあいつの攻撃は突進してくるだけだ。おれが注意を引くから君は――」


 そう言いかけた刹那、大きな咆哮をあげたマーレの鼻から火球が噴射された。


リフレジオン(反射)!」


 ルウナは咄嗟に前に出ると両手を突き出し掌を重ねた。六角形の板状の光がいくつも現れハニカム構造を瞬時に形成していく。飛んできた火球がそれにぶつかり爆ぜた。


「キャアァーーー!」


 ガラスのように砕け散る光の板と共にザアラがルウナを受け止める形で二人は後方へと吹き飛ばされた。


「大丈夫かっ!?」


「え……ええ、なんとか。あいつ火魔法が使えるんですか!?」


「いやそんなはずは……まさか! あれはもしかしたら『狂い咲き(狂化種)』!」





読んで頂きありがとうございます。


長さの単位はメートル法にしております。


次も気になる、おもしろいと思った方は☆評価、ブクマ、いいねして頂くと創作の励みとなります。


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