僕はこの珈琲が飲めない
思えば彼女に一目惚れしたのはあの時だった。別に初恋というわけではない。けれど頭の中をあのようにもみくちゃに支配されるほど、魅力的な異性に出会ったのは初めてかもしれない。彼女は息をのむほど整った顔立ちをしていた。そしてきっと優しくて賢いのだろう。見た目からひしひしと伝わってきた。
それは駅の改札を出て、歩道橋を渡っていた短い間の出来事だった。すれ違いざまにほんのり甘い匂いが香った気がした。何の香水をつけているのだろう。その後も彼女を見かける機会が幾度か訪れた。彼女からは不思議なほど強い存在感を感じる。僕は彼女にどうにか近づきたいと思った。
〈ルブラン〉――彼女がよく入店する喫茶だった。いつも彼女が座る、日の差す明るい窓際のカウンター席。勇気を出して一個分席を空けた隣に座ってみた。話しかけようと己を鼓舞するも声が出ない。店内は暑いのか寒いのかわからない。額がじとじとしている気がして不愉快だった。突然、「大丈夫……ですか?」胸にまるで電気が走ったような衝撃が走った。
彼女からしたら僕はよほど挙動不審だったのだろう。あ、いや――未だ言葉に詰まる。自分も此処の珈琲が好きで来るが、よく見かける事を一通り彼女に伝えた。瞬間彼女の空色水晶のように綺麗な瞳を一層煌めかせ、「わかります!」何度も頷く。幼女が母親に今日あった出来事を嬉々と語る様だ。こんなあどけない一面もあったのか。「日替りのブレンドが毎日絶妙な香りの違いを楽しませてくれて――」
僕らが打ち解けるのにそう時間は要らなかった。
その日もいつもの喫茶で他愛もない雑談をしていた。彼女が帰るといったので、僕はほぼ残っている冷めた珈琲を飲み干してから行く、と言って彼女を見送った。いったん足早に会計を済ませて店外に出た彼女だったが、窓の外で振り向きざまに彼女が僕に笑いかける。
その直後だった。耳を切り裂くような甲高いブレーキ音、そしてドスンという鈍い衝突音とともに彼女が地面に無造作に転がっていった。僕は気がつくとわき目も降らず店外に飛び出し、彼女のそばに駆け寄って倒れた彼女を近くで見てすぐに察した。
彼女の左上腕は肘関節部分からちぎれており、金属と炭素繊維強化プラスチックとで造られた骨格が、無残なまでにむき出しになっていた。突如として僕の頭の中には黒くて重たい感情で一杯になった。呻き声とも呼べないような、声にならないかすれた空気を喉から捻り出しながら、彼女を抱きかかえていた。
人の気配が全くしない無人トラックの車内からは無線と電子音が微かに漏れている。それは黄昏がおりてくる、薄暗くなり始めた夕暮れ時に起きた事件だった。
動かなくなった彼女を抱えながら見ている僕の視界には、彼女の有様を表す”Out of Order(故障)”のエラーメッセージのみが未だ無慈悲にポップアップし続け、僕に直視したくない不条理を突き付けた。
最後までお読みいただきありがとうございました。
主人公「僕」は『甘い匂いが香った気がした』といっているが本当に匂いを感じているのだろうか。
肌で感じる暑さ寒さとははたして「僕」に存在するのだろうか。
『額がじとじとしている"気がして"不愉快』な「僕」は本当に冷や汗をかいているのだろうか。
珈琲の香りを楽しむことが彼らにはできるのだろうか。
『胸にまるで電気が走ったような衝撃』とは本当に比喩なのだろうか。
もしかしたら彼らは人間の真似事をしているだけなのかもしれない。
しかし模倣された感情というものが存在したとして、それを偽物であると誰が言えるのだろうか。
そんなことを考えながら書かせていただきました。
note(https://note.com/shironeko_33/n/n16c92b1516c4)のあとがきにも指示文と回答文に関する詳細を掲載させていただいてますが、本作はまずBing Chat(AI)を使用して、アウトラインを作成したのち、自身でリライトした作品になります。