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元大魔導師は、家族のために完璧な姫になりきりたい  作者: ぽよぽよ大魔神
前章 大魔導師エマ
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再会

君の部屋は明日までには用意するから今日はここでと客間に案内された。

必要最低限の家具があるだけのシンプルな部屋だったが、部屋の隅に寝心地の良さそうなベッドを見つけた私は興奮を隠しきれなかった。


「本当にここで寝ていいんですか?」


「もちろんだ。そうだ、あとで風呂にも案内しよう。少し準備をしてくるからしばらくここで寛いでいてくれ。」

そういうとドンノは部屋から出て行った。

お風呂という今聞こえてきた言葉をしばらく反芻すると、どんどんと込み上げてくる嬉しさに我慢しきれなくなった私はその場でぴょんぴょんと飛び跳ね喜びを爆発させた。


「お風呂!ベッド!!魔術師!!!」

今日立て続けに起こった信じられないような事を、ただ声に出すことで夢じゃない事を確認したかった。

勢いをそのままにベッドに飛び込んだ私は自然と笑みが零れるのを我慢できず、枕を両手いっぱいにギュッと掴み顔を擦り付けた。


そのまましばらくベッドの上で幸せを噛み締めていると、コンコンとドアをノックされた。

急いで飛び起きドアを開けると、そこには先程サンドイッチを持ってきてくれたメイド服の少女が立っていた。

ハンナと名乗ったメイドの少女は、夕食はどうかと聞いてきたが、どうにも胸がいっぱいなことと、山ほど食べたサンドイッチのおかげで空腹は感じなかったので断った。

すると、ではそのままお風呂に案内するとのことで、誘導されるがまま浴室まで行き、入り方のわからない私の面倒を一から十までアンナが見てくれた。入り終わると良かったらこれをと今まで着ていたぼろ着の代わりに、新しい真っ白なワンピースを渡された。新しい服など貰えないと断ろうとしたが、ハンナは


「これからここで働くんだもの遠慮しなくていいの、他の子供たちも皆着ているしお揃いなのよ。」

と少し強引に着せた。

温かくてほんのりと良い匂いが残る体と新しい服に、なんだかそわそわと嬉しくてワンピースの裾を広げるようにくるくると回った。

それを見てハンナは、


「うふふ、可愛いわ」

と笑った。

にこやかに笑うハンナを私も笑顔で見つめ返した。


入浴後また先程の客間に戻ると、もう遅いから今日はゆっくり休んでとハンナに告げられた。

しばらくまた込み上げる嬉しさから興奮冷めやらなかったが、いつの間にか寝てしまっていた。


翌朝コンコンというノックの音で目を覚ました私は、起きようとして見えたベッドや綺麗な部屋に一瞬パニックになりかけたが、すぐに昨日の事を思い出し思わず顔がにやけた。

強引に顔を戻した私がドアを開けるとそこには、街で案内中に倒れた少女、アリアが立っていた。

咄嗟に


「もう大丈夫なの?!」

と心配の声をかけたが


「ええ、大丈夫よ。助けてくれてありがとう。」

と言葉に似合わず無表情で少女は私に感謝した。

本当に大丈夫なのか、無理しているのではないのかと思いもう一度声をかけようとしたが、


「それで、今日から1週間は私と一緒の部屋で過ごして1つずつ説明していくからとりあえず見学だと思って気楽についてきて。」

と矢継ぎ早に続け、スタスタと歩いていくアリアに言葉を挟めなかった。

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