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元大魔導師は、家族のために完璧な姫になりきりたい  作者: ぽよぽよ大魔神
前章 大魔導師エマ
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才能

塔の中は外から見た時よりも広々としているように見えた。

外装の冷たい石作りとは違い、内装は趣味の良い調度品で揃えられ、その雰囲気からは暖かみのある印象を覚えた。

広々としたフロアの丁度真ん中あたりにあるソファに少女を寝かせた中年男は、薬を持ってくる、とフロア奥の部屋に入っていった。


一人残された私は、横たわる少女の様子を見守る事しか出来ず、ただソファの周りを歩き回った。

時折苦しそうに息を漏らすその姿に、ひどく胸を締め付けられた。


しばらくして戻ってきた中年男の手には、複雑な紋様が表面に描かれたラベンダー色のコンパクトのようなものが握られていた。

中年男は、真っ直ぐ私を見つめると、


「君に、先程約束してもらった頼み事なんだが」

とコンパクトを見下ろしながら目の前に差し出し、


「この魔術具でこの子を治療してもらいたい。」

と真剣な表情で言い放ったのだった。


私は驚きで咄嗟に言葉が出てこず、眉を顰めた。

いくらスラムで暮らしてきたとはいえ、魔術具の事は知っている。

魔術具とは、主に貴族しか手に入れる事が出来ないほど貴重な物で、魔力を込めると、付与された術式に合わせた便利な効果が発揮されるというものだ。

そこらの魔力を持たない平民では、もちろん手に入れることも、ましてや使用することなんて不可能だ。

基本的に魔力持ちは貴族に多く、平民にも稀にいるが1万人に1人程度の本当に微々たるものであり、奇跡に近い事だと街の大人が話しているのを聞いたことがあった。


そのため私は、中年男が自分を罰する為の適当な理由付けのために、こんな無理難題を言っているのだと落胆した。

出来っこない・・・とりあえず誠心誠意謝罪しようと口を開きかけたその時、


「君には魔力があり、そして魔術の才能がある。」

中年男が信じられないことを口にした。


想像もしていなかった言葉に動揺し、心臓かドクンと跳ねるのが分かった。

途端に広がる小さな期待とともに中年男に聞き返す。


「今、なんて?」


「ああ、突然こんな突拍子もない事を言われても信じられないだろうね。すまない。だが、もう一度言う。君には少なからず魔力があって、それを使うだけの魔術の才能がある。」

罰を受ける事を覚悟し、足の先まで冷え切っていた体がじんわりと熱を帯びていった。

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