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元大魔導師は、家族のために完璧な姫になりきりたい  作者: ぽよぽよ大魔神
前章 大魔導師エマ
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軋轢

リリー達にすべてを打ち明けた翌日から、私はドンノとの面会を求め取り次げるように他の先生に声を掛けに行った。しかし、生憎私との面会の金の日まで出かけており、研究所には戻ってこないとウォーニーから気だるげな返答があった。それならば伝言だけでもと引き下がったが、無理だと却下された。

昨日テオたちに責任をとるといった手前、何もするわけにはいかない。いてもたってもいられなかった私は、今日は休みの太陽の日であったが、いち早く皆の生活を元に戻そうと、一日仕事部屋に籠もり、黙々と一人で仕事をこなした。全員でやるのに比べたら微々たる成果ではあったが、自分のためにもやらないよりはよっぽど良かった。

手元の作業に集中していると、扉付近で中を覗き込み、ヒソヒソと何か話している様子の子達を、何人か横目で伺うことが出来たが、特に声も掛けられなかったため、気にせず仕事を続けた。


時間を忘れ没頭していたようで気付けば夕暮れ時になっていた。昼食も忘れていたため、思い出したようにキュルキュルとお腹がなる。作業の終わった手元を見ると、成果の少なさに落ち込んだ。一瞬、こんな事をしても・・・と頭を過ぎったが、咄嗟に頭を振り、少しだけでもやれることをやらなくてはと思い直した。

仕事を一段落させた私は、空腹を抱えながら食堂に向かった。食堂に入ると、何やら雰囲気がおかしかった。室内に入ると同時に皆の目線は私に集中し、しかし誰一人として近づいてくるものはおらず、遠巻きにヒソヒソと話しているだけだった。その嫌悪の混じったような視線に、居心地が悪くなる。どうしたんだろう。そう考えながら思わずリリーを探す。リリーに聞けばこの異様な雰囲気の理由もわかるだろうか。私はリリーを見つけると、すぐさま声をかけようとしたが、リリーのすぐ横で同じくこちらを見つけたテオが、


「あっち行くぞ。」

とわざわざ私とは遠く離れた席に、こちらに背を向け座ってしまった。

え?その行動の意図が理解出来ない私が、再度近づき声をかけようとすると


「よく普通に声かけようと思うよな。オレ達のこと騙したくせに。」

テオが背中を向けたままそう言い放った。

その言葉が聞こえた周りの子供達もざわざわしだす。


「ほんとそうだよね。」「知らないふりして手伝ってさ。」「感謝して損した。」「先生たちへの点数稼ぎかよ。」


ヒソヒソと話す声に耳をすますとそんな言葉が聞こえてきた。そして咄嗟に訂正しようと声を発そうとした時。


「お前もそう思うだろ?」

テオがおもむろに横に座るリリーに問いかけた。

彼女は後ろから見ても戸惑った様子でしばらく返事はしなかった。すると


「否定しないって事はそういう事だろ。」

とテオに断定されてしまう。


「それはちがうよ・・・。」

というか細い声は周囲の「そうだ、そうだ。」と同意する声にかき消されて消えてしまった。

そんなリリー達の様子を見て居た堪れなくなった私は、トレイごと夕食を持ち、走って自室へと戻った。その姿をみて慌てて止めようとするリリーには、気付くことは出来なかった。

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