解決
私の心は晴れやかだった。もっと早く相談していれば、良かったと自分の行動を思い返す。そうすればこんなに思い悩まずにすんだのに。
軽い足取りで食堂に向かうと、皆が静かに食事をとっていた。相変わらず以前の賑やかさはない。そんな光景に少し胸が傷むも、気を取り直しリリーを探した。
アーロと一緒に食事をとるリリーは表情も暗く、やはり疲れが滲んでいるようだった。アーロも同様だった。
「あ、おねえちゃん!おかえり。今日は何をお話したの?」
それでも私を見つけるとすぐさま元気に振る舞おうとするこの健気さにまた胸が傷んだ。
「今日は悩みを解決してもらったの。話せて本当によかった。」
「そうなんだ!だからご機嫌なんだね!よかったねえ。」
「うん!だから何か手伝えることがあったら何でも言って!勉強でも仕事でも、私が力になるから!もちろんアーロもテオもね!」
いつの間にか隣に座っていたテオと向かいに座るアーロにも声を掛けた。
「ふふ、急になにそれー。おねえちゃんにはいつも助けてもらってるよー。」
「そ、そうだね。いつもありがとう。」
「おう、いつも通りだな。」
そう言って笑う3人の姿を見て、心底ドンノに相談して良かったと思った。
気分を新たに、翌日の仕事から積極的に、他の子供達の手伝いをすることに決めた私は、部品を持ってきたり完成品を移動させたりするような雑用を自分の仕事の合間に積極的にこなしていった。皆には感謝されこそしたが、やはりいつもよりペースが落ちているのが見て取れた。
そして終わりの時間に差し掛かるにつれ、集中力が切れたのか、席でぼーっとしてしまう子も増えているように思えた。
そんな状況から、私一人でカバーしたところでどうにかなるのかとまた否定的な考えが頭を過ぎったが、ドンノの言葉を信じようとすぐさま思い直し、翌週からも頑張らなくてはと気を改めた。
そして、太陽の日の休みを一日挟んだ翌週、また私はサポートの必要そうな子たちのフォローに励んだ。魔術の授業では集中できていないであろう子達には、わかりやすく内容をまとめたノートを貸し出したり、仕事では前週と同じような雑用をして回った。
だが、そんな私の頑張りも虚しく、やはり一人で何十人もいる子供たちのフォローなど間に合うはずもなく、日を追うごとに疲労が子供達を襲っていった。一日休みの日があるとはいえ、前週の疲れも重なり、その疲労度はかなり増しているようで、それは、仕事の進捗度にも顕著に現れだした。
これまで遅れたことの無かった納期に規定数量の魔術具が作りきれなかったのだ。そのため、最優先事項として、仕事を進めることになり、授業も一旦ストップして皆で規定数量分完成させるまで一日中仕事の時間になってしまった。慣れてしまえば単調な作業だが、勉強と違って子供達にとってはあまり意欲はなく、面白みのない作業だ。普段であれば魔術の勉強の為と思い頑張れる事も、今はその目的が出来ない。早く終わらせれば通常通り授業再開と言われても、その疲れからか作業効率も悪く、思うように進まなかった。
何日もそんな状況が続いてくると、耐えられなくなった子供達が泣き出した。心身ともに限界が来ていたんだろうか。だがそれでも我慢しているのか、わんわんと声を上げて泣くのではなく、皆同じように声を押し殺しすすり泣いていた。