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元大魔導師は、家族のために完璧な姫になりきりたい  作者: ぽよぽよ大魔神
前章 大魔導師エマ
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不安

ドンノの言ったとおり週が開けた今日、子どもたち皆に魔力提供量の増加について伝えられた。

私は皆が喜んでくれるだろうと信じて疑わなかったし、どんな反応が返ってくるか、楽しみにしていた。

しかし、蓋を開けてみると子供達の反応は良いものではなく、口には出さなかったものの、不安や不満を顔に浮かべている子がほとんどだった。

ざわざわとする勉強部屋で一人私は、徐々に大きくなっていく自責の念に押しつぶされそうだった。先程までは喜んでもらえる自信しかなかったというのに、冷静になった今、どうして増やしても良いなどと言ってしまったのか、自分で自分が分からなかった。

この発表後の皆の反応を見てから、ドンノに相談されていた事をリリーたちに話そうかと思っていたが、とても言い出せる雰囲気ではなく、黙っていよう、瞬時にそう思ってしまった。


私の今日の予定は午後に中級の魔術の授業がある為、午前の今、仕事部屋に来てこうして仕事をしているわけなのだが、前方で行われる魔力提供と、そこから自席へ戻っていく子供達を見ていると、さらに後悔の念が押し寄せてきた。今までの魔力提供では、体調を悪くして戻ってくる様子の子はいなかったにも関わらず、今回、私のせいで魔力提供量が増えた結果、明らかに顔色を悪くして持っどてくる子達が半数以上いた。そしてそれは私と同じくらいか、もしくはそれ以下の低年齢の子に多いように見えた。

そんな子供達の姿を見て咄嗟にリリーの事を考えた。彼女の今日の予定は、授業は午前で午後が仕事の時間だと言っていた。今頃授業で、この不幸な知らせを聞いた頃だろうか。それを聞いてどう思っただろう。リリーの心境を考えると改めて自責の念に苛まれた。どうして皆が喜んでくれるなんて思ってしまったんだろう。あの時はそれが正解だと信じて疑わなかった。

そんな事をひたすらに悶々と悩んでいると、いつの間にか自分の魔力提供の順番は終わり、仕事の時間すらも終わっていた。リリーにどんな顔して会えばいいんだろう。そう考えると食堂への足取りは重くなった。


食堂へ着くとリリーは既に着席しており、私を見つけるやいなやこっちこっちと手招きをした。俯き加減でリリーの隣へ座る。


「おねえちゃん聞いた?魔力提供の量が増えるって話!どうしよう~!私今まででさえ大変だったのにその倍だなんて。」

リリーの眉毛はへの字に曲がり、ひどく不安そうな表情をしていた。


「もうおねえちゃんは終わったんだよね!どうだった?皆の様子とか?おねえちゃんは大丈夫だった?」


「私は大丈夫。・・・だけどやっぱり見てたら大変そうな子が何人かいたかな。」

リリーの目を見れず、俯き加減で話す。


「ねえ、おねえちゃん元気ないよね?顔色も良くないよ?本当は大丈夫じゃないんじゃない?やっぱり体調悪い?」


「体調は本当に大丈夫!」


「そう?じゃあ他に悩み事でもある?あたしがいつでも聞くよ!」

リリーの温かさに言葉が詰まって出てこなくなった。何をおいても人の心配を先にしてくれる。自分の気になる話は後にして私を気遣ってくれるこの心の優しい子に対して私は自分の事しか考えず、本当の事も言わないで嘘をつくのか。鼻の奥がツンとする。この娘には言わなくては。決意したその時。


「あの「あ!いたいた。ねえちゃんも聞いたよな?魔力提供量が増えるって。」

テオが私の隣に座った。


「ちょっとぉ!今おねえちゃんはあたしと話してたんだけど!」

リリーがぷりぷりと怒っている。


「いいじゃねえかそんくらい。でさーねえちゃんって魔力量多いんだろう?オレもあんま多いとは言えないからこの機会に魔力量を増やせないかと思ってさ。ねえちゃんは増やす方法知ってる?」


「・・あ、うーんとね。魔力は使えば使うほど増えるから、普段の魔力提供でも増えていくみたいだよ。」

リリーが心配そうにこちらを見ている。大丈夫の意味を込め微笑むと、リリーも笑みを返してくれた。



「へえ!そんなら一石二鳥じゃん。悪いことばっかでもないんだな。」


「確かにー!魔力量が増えるならちょっと頑張ろうかなって思えるよ!」

言えなかった。少し前向きに考え出した二人を前に、先程の決心は萎んでしまった。

それと同時に安心している自分もいた。そうだよ、悪いことばかりじゃなくて、皆にいいこともあるんだよ。だから大丈夫。私は自分に言い聞かせた。

きっと大丈夫。

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