日々
翌日からもリリーと行動を共にした。少し変わった事と言えば、そこにたまにテオとアーロが加わるようになった事。
「一緒につるむなんてうぜえ。」
なんて言っていた割には魔術の授業のあとには必ず私の所へやってきてコツを聞くあたり、真面目で勉強熱心には違いなかった。
リリーは
「あたしのおねえちゃんが減るー!」
なんてよくわからない事を言って嘆いていたが、どこへでも一緒に行けるのは女の子のリリーだけだよと言うと途端にご機嫌になっていた。
その日の魔術初級の授業で、事前にウォーニーに呼ばれた私は、何事かと思ったが、聞けば前回の授業で5大属性の魔術を成功させた事で初級の課題はクリアした事になるらしく、望めば中級に上がる事が出来るが、初級の授業をすべて受けてからでも良いし、どうしたいかという話だった。
私は迷わず初級に留まる事を選択した。
まだ実技でたまたま成功しただけで何も知識をつけていない状態では魔術学校なんて夢のまた夢になってしまう。何よりもこの何を聞いても目新しく面白い授業に参加しないという選択肢は私にはなかった。
2つ返事で留まる事を選択した私をニヤりと見つめたウォーニーは
「わかった。」
とだけ言うと授業を始めた。
授業が終わり仕事の時間ではまた早いうちに魔力提供の順番が回ってきた。
リリーに言われた通り、魔力の出力を小さくしようと心がけたが、気持ちスピードが落ちたくらいで、結果止めるのも間に合わず、昨日に引き続き6つのランプが虚しく光っていた。
向かい合うベンは報告は受けていたであろうが初めて見るそのスピードに目を剥き驚いている。
「ごめんなさい・・・。まだ調節が出来なくて。」
申し訳無さそうに小声で言う私に
「いや・・・、いいんだ。」
とベンは唖然とした表情で答えた。
それ以降の日々は初級の魔術の勉強を続け、魔力提供も少しずつではあるが、調節出来てきたと手応えを感じていた。
そうして過ごすうちに私が楽しみにしていた事の一つでもある、ドンノとの面会のある金の日がやってきた。
1周間ぶりに会ったドンノとは、日々の何気ない事や、今の悩みの種である魔力の出力調整に手こずっている話をした。
上手く出来たことや嬉しかった事を笑顔で話ていると、時折ドンノの手が伸びてきて、優しく頭を撫ででくれるのが嬉しくてたまらなかった。
またそんな他愛もない話をうんうんと笑顔で聞いてくれたドンノは最後に、魔力の出力調整のコツは細長い筒のようなものを思い浮かべると良いと助言をくれた。流したい出力をふまえた細さの筒を思い浮かべ、その中に魔力を通す事をイメージするとうまくいくかもしれないと教えてくれた。
面会が終わるとまた、洋服についたあの部屋の甘い匂いが無くなるまで、ドンノとの優しい時間を思い浮かべニマニマと笑みを浮かべるのだった。