紹介
「じゃあ、次ジョンの番だから声かけてきて。どの子か分からないなら隣のお友達に聞きな。」
ウォーニーは小箱を見たまま言った。
「あ、はい!」
私は何が何だか分からないままとりあえずリリーの元へ戻る。
怒られなかったから良かったのかな・・・。なんでそんなに魔力を込めたつもりじゃないのにあんなにランプが点いちゃったんだろう。
そんな事を考えながら自分の魔力操作の仕方が悪いのかと反省していると
「おねえちゃん!何があったの?!何だか元気ないけど本当に体調悪いの?大丈夫?!」
リリーが心配そうに顔を覗き込んできた。
「ああ、うん。体調は全然悪くないの!それは大丈夫。あとで詳しく話すからとりあえず、次の順番のジョンって子は誰か教えてくれる?」
「あ、そっか!次の子ね!ジョンは二列目の隅に座ってる金髪の子だよ!」
「ありがとう。先に呼んでくるね。」
私はジョンに声を掛け、リリーの元へ戻ると先程のランプの話をした。
「どうしてあんなに沢山ついっちゃったのか分からなくて。まだ魔力も水晶玉に流れてないと思ってたんだ。私の魔力操作の仕方が悪かったのかも。リリーはなにかコツを知ってる?あと、結局体調の事以外なにも言われなかったんだけど、あれ先生は怒ってたよね?」
「あれは怒ってたんじゃなくて、おねえちゃんの身体を心配してたんだと思う!魔力って生命の源とも呼ばれてるから、少なくなると疲れるし、一変に無くなると死んじゃうこともあるんだって!だからそれを気にしてくれたんだと思う!」
「そうなの?!」
「うん。でもおねえちゃんはそれだけ魔力を使っても平気って事は、あたしなんかよりもずっと魔力が多いんだと思う!いいなあ!羨ましいよ。あたしは3つ点けるのだけでも大変だもん!」
リリーは眉を八の字に潜めげんなりした顔をした。
その様子が何だか小型犬のようで可愛くて思わずくすりと笑ってしまう。
「でもコツかぁ。コツとかはあんまり分からないけど、魔力の多さが原因なら、すごーくちょっとずつ流してみたらいいかも!」
「そっか。ちょっとずつね。明日からやってみる!ありがとう。」
リリーはそう言った私に笑顔で答えると、既に机上に準備してくれていた魔術具の組み立てについて丁寧に教えてくれた。
おかげで初めてだというのに難なく作業を進めることが出来、上手く出来たことで調子にのった私たちは、どちらがより沢山組み立てられるか競争を始め、仕事の終了時間にはお互いへとへとになっていて思わず二人で笑いあった。
その夜、今日からの居室をリリーに案内され、同室の子たちを紹介された。よく喋るのは、茶髪に茶色い目のテオで、オリーブグリーンの髪にグレーの瞳のアーロは人見知りなのか時折うつむいてもじもじとしており、3人の話をうんうんと頷きながら聞いていた。
「何であたしとはちゃんとお話してくれなかったの?」
とリリーがテオに詰め寄る。どうやら私が来るまでこの3人はあまり話すことがなく、雰囲気もぎくしゃくしていたらしい。
「女と話すことなんかねえ。」
つんけんした様子でテオが返す。
「エマおねえちゃんだって女だしテオはアーロとも喋らなかったじゃん!」
リリーは納得のいかない理由にご立腹だ。
「・・・それはそれ。これはこれだ。」
もっともな理由が浮かばなかったらしいテオは適当にごまかした。
「なによそれー!!!」
「まあまあ。リリー、これからまた仲良くしていこう。」
ぷいっとそっぽを向き拗ねているリリーをなんとか宥める。
「なあなあ、エマねーちゃん!そんなことより魔術のやり方教えてくれよ。俺、魔術式を描くの苦手でさ。どうやったら上手くかけんの?」
どうやら私とは打算を持って仲良くしたいらしい調子の良いテオは、リリーはお構いなしにベッドからずいっと身を乗り出してくる。
「ぼ、ぼくもききたい!」
やっとのことで絞り出したような声で、顔を真っ赤にしてこちらを見つめるアーロ。
「皆ずるい!!あたしも教えて欲しい!!」
すねて膨れていたはずのリリーだったが、すぐさまこちらのベッドに飛び込んできた。
私も初めてやったのだ。コツなんて分からない。だけどこれだけ期待の眼差しに晒されて断ることなんて出来ない。
「わかった、いいよ。」
思わず口をついて出てしまった言葉に責任を取らなくてはと、その夜は3人に、時間が私なりの魔術式を描き方を出来る限り伝えた。