魔力提供
「そっか!おねえちゃんは初めてやるよね。あれもお仕事なんだよ!あの机の上にはでっかい水晶玉みたいなやつがあってね?そこに魔力を流すの。魔術具を作ったり、研究に必要なんだって。毎日仕事の時間に皆一人一回、決められた魔力量を提供するんだよ。あたし魔力量がそんなに多くなくてやるととっても疲れるから苦手なんだけど、あれに魔力を流すのも魔力操作の練習になるみたいだから頑張ってるの!」
「そうなんだ。」
リリーからそんな説明を受けていると、魔力提供を行っていたであろう一人が振り向き、こちらにやってきた。
「次、リリーだって。」
「わ。今日は早いなあ。じゃあ呼ばれたから行ってくるね。」
どうやら次はリリーの順番らしかった。
先生の元へ向かったリリーを見守りしばらくすると、明らかに疲れた様相でこちらへ帰ってくる。
「次、おねえちゃんだって!やり方はウォーニー先生が教えてくれるから!すぐ終わるから頑張って!」
私の不安を汲み取り、励ましてくれたリリーに笑顔で応えると、ウォーニーの元へ向かった。
「よろしくお願いします。」
「ああ、君がエマね。じゃあ初めてだろうからやり方を説明するよ。まずこの水晶玉みたいなところに手を置いて。あー、両手でも片手でもやりやすいと思ったように置いてくれていいよ。」
ウォーニーの指示を受け、眼前の魔術具であろうものを見ると、丁度ぴったりサイズの小箱に入った水晶玉のようなものがそこにはあった。そして言われるがまま右手を水晶玉の上に乗せる。
「そうしたら魔術を放つ時と同じようにまずは集中。そして魔力で蝋燭の火を灯したら、その火を右手に向かって流す。他のとこには流さずすべてを右手に持ってくるんだ。で、それが出来たらこの小箱の上にあるランプが勝手に光るから、3つ目まで光ったら止めて。以上だ、やってみて。」
確かに小箱の上には小さなランプが10個ほど並んでいた。このランプが3つまで光ったら止める、随分と投げやりな指示の仕方だなと考えながらも集中を始めた。
魔力を感じ、蝋燭に火を灯すまで、魔術を使うごとにその速度が早くなっているのを感じる。
右手に魔力が集まって来たのを確認し、ランプの確認の為に目を開けたその時、
「おいおい!ストップ!もういいよ!」
ウォーニーが声を荒げた。
私は驚き、言われた通りに魔力を送るのを止め、ランプを見て驚いた。
3つつければいいところのランプが、実際には6つも点っていたのだ。
私はウォーニーの声の荒らげ方からしてまずいことをしたのだと悟り、咄嗟に謝罪した。
「ごめんなさい!目を開けるのが遅くて!」
「身体は?!息苦しかったり、だるかったりとか不調はないか?!」
「え?身体?元気です・・・。」
意味が分からなかったが、聞かれるがままに答えた私を上から下まで確認すると、
「本当に大丈夫そうだな。ふぅん、面白い。」
と私とランプを交互に見ながら呟いた。