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元大魔導師は、家族のために完璧な姫になりきりたい  作者: ぽよぽよ大魔神
前章 大魔導師エマ
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成功

先程と同じ工程を辿り、魔力を練り魔術式を描く。出来たらイメージに切り替える。

まずはウォーターだ。魔力が集まって水が流れる。流れるイメージでは上手くいくような気がしなかった為、魔力から水が湧くイメージを描く。湧いた水が丸く形を成すように宙に浮く。

私が恐る恐る目を開けるとそこには、思い描いた通りの球体となった水が宙に浮いていた。

またしても子供達からわぁっと歓声が上がる。

成功した嬉しさから私が少し緊張を解くと、


「いいね。次、ウィンドはどうかな。」

間髪入れずにレントが要求した。

2回とも成功させた事と、子供達の歓声に私自身も気分が高揚し、謎の自信が湧き出ていた私はコクリと頷く。そして、すぐにウィンドの準備を始めた。

既に慣れた様子で魔術式を描くと、今度は裏路地を吹き抜けていく突風を思い浮かべた。はっきりとイメージ出来る風としてそれが一番に思い浮かんだ。淀んだ空気を攫って、その一瞬だけでも裏路地の暗い雰囲気を変えていくその風が私は好きだった。

瞬間、皆の髪を巻き上げるような突風が通り抜け、私の目の前でヒュルヒュルとまとまると、小さな竜巻のようなものが出来上がった。

私の額にはうっすらと汗が浮かんでいたが


「次はアースだ。」

とレントに声を掛けられるがままに目を閉じた。

魔術式を描きあげると、土と聞いて一番に思い浮かべたのは裏路地の土だった。表通りと違い舗装されておらず、むき出しの土が私の寝床だった。

冷たくも、温かくもあり、雨が降るとエマを悩ませるそれをイメージすると、こんもりとした土が宙に浮かんだ。


「まだ行けそうだな?次、ウッドね。」

次々と成功させる余韻を感じる間もなく畳み掛けられる指示に黙ってしたがう。

この魔術の感覚を確実に掴みたかった。

研ぎ澄まされた感覚を頼りに、感じる魔力を存分に発揮し目も開いたまま魔術式を描き上げる。

木で思い浮かべたのは街から離れたこの森だった。

思い浮かべるとともに私の目の前には見る間に小さな木が生えてきてあっという間に手の平の大きさの森を形作った。


成功した事にほっと胸を撫でおろすと、パチパチパチと大きな拍手の音が聞こえてきた。


「いやぁ、実に素晴らしい。」

レントは拍手をしながら私を称えた。その表情は非常に満足げだった。

そのまま視線を時計に移すと


「おっと、もうこんな時間か。では本日の初級の授業はこれで終わりだ。皆、仕事に行くように。」

レントが声を掛けると、子供達はぞろぞろと部屋から出て行った。

リリーに一緒に行こうと目配せされ、私も荷物をまとめ続いて出ていこうとすると、レントに引き止められた。


「エマ、君はこの後ドンノ先生の執務室へ行きなさい。」


「ドンノ先生のですか?」


「ああ、先程君の魔術の才能について報告したら痛く喜ばれて、是非話をしたいと言われた。君、ここへ来て丁度一週間になるだろう?ここでの生活はどうかも気にされていて、それも合わせてゆっくり話を聞きたいそうだ。とりあえず仕事は後にして、そちらへ行きなさい。先生の執務室は分かるかな?」


「はい、アリアに案内してもらったので。」


「では大丈夫だね。」

レントの背後で、部屋を出て行ったリリーがこっそり手を振ったのを、名残惜しそうに見送った私は、ドンノの執務室に向かった。

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