同室
私が夕食から戻ると、自室にアリアの姿はなかった。浴室に行っているのかと考え、自分も入ろうと思い向かうが、そこにもアリアはいなかった。さすがに自室に戻ったら帰って来ているだろうと思っていたが、まだアリアはまだ帰って来ていない様子だった。
アリアと一緒の部屋で過ごせる最後の日だと思い、せっかくだからと沢山の事を話したかった私は、アリアが帰ってくるまで起きて待っていようと思ったが、待ちくたびれてついには寝てしまうまで、アリアは戻っては来なかった。
翌朝目が覚めると、アリアは既に起きて身支度を始めていた。
その姿を見た私は
「アリア!おはよう。昨日はどうしたの?何時戻ってきたの?私、アリアと最後に話したくて待ってたんだけど寝ちゃ
「おはよう。昨日はあの後仕事を頼まれてたの。朝食を済ませたら勉強部屋に行くといいわ。今日は初級の授業からだから、行けば誰かが教えてくれるわ。私もう出なくちゃいけないから先に行くわね。」
私の話を遮るようにして一方的に話すと、アリアは足早に出て行ってしまった。
「行って…らっしゃい…。」
最後の日くらいゆっくりと話したかった私は、近づいた筈のアリアとの距離がまた遠ざかったような気がして心がささくれた。
仲良くなれたと思ってたのは私だけだったのかな。そんな気持ちを、思いを、流し込むように朝食を勢いよく掻き込むと、気持ちを切り替えて勉強部屋へと向かった。
アリアが言っていたように午前の最初は初級の授業で、既に前列の席に座っていた赤い髪の見知った少女を見つけると、私は一目散に声を掛けた。
「リリー!おはよう!」
「エマお姉ちゃん!おはよう!凄いね!もう文字の試験に受かったなんて!」
リリーは嬉しそうに返事を返した。
「アリアの教え方が上手かったから。すごく助かったんだ。」
「そうだね!アリアお姉ちゃんの授業とっても分かり易かった。でもあたしは一週間じゃ合格出来なかったもん!やっぱり凄いよ!」
リリーに褒められ誇らしく思うと同時に少し照れ臭かった私は笑って誤魔化した。
「へへ、そんな事ないよ。」
「そうだ!今日からあたしとお部屋も一緒だから一緒に過ごそ!後で案内するね!」
「本当?!」
リリーの話に先程までのの沈んだ気持ちが吹き飛んだ様だった。
「うん!昨日アリアお姉ちゃんが準備しておいてって部屋に来たんだ。本当なら同じくらいの歳の子達と同じ部屋になるんだけど、エマお姉ちゃんと同じくらいの歳の子達のお部屋が空いてなかったんだって。それであたしと同じ部屋になったって。でもエマお姉ちゃんと一緒のお部屋になれたから、空いてなくて良かったって思っちゃった。」
イシシといたずらっ子のような笑みを浮かべるリリーは思わず抱きしめたくなるほどいじらしかった。
それと同時にアリアが私の為に準備をしてくれていた事を知ると、勝手にささくれた気持ちになった自分が恥ずかしく思えた。
「私もリリーと一緒の部屋になれてすっごく嬉しい!これからよろしくね。」
「うん!」
その言葉にリリーは力強く頷いた。