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元大魔導師は、家族のために完璧な姫になりきりたい  作者: ぽよぽよ大魔神
前章 大魔導師エマ
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試験

アリアの宣言通り、その日は1日みっちりと文字の勉強を行った。翌日の水の日以降も都度、炊事当番の見学や授業の見学を挟みつつ、基本的には文字の勉強に1日の大半が費やされた。そしてとうとう、一週間の見学期間はこれで終わりだとアリアから告げられたのは、土の日の終わりの事だった。


「一週間お疲れ様。勉強が始めての割に良く頑張っていたと思うわ。来週からは部屋も変わって仕事も、当番も、見学ではなく一緒に参加してもらうわ。もちろん授業にもね。その授業についてだけど、最初に話したように、文字の読み書きがきちんと出来ると判断出来なければ意味がないから、参加することは出来ないわ。そのために一週間みっちり勉強してきたのだけど。それでその成果を見せて貰う為にも、初めにも話した通り文字の試験を明日行うわ。明日は太陽の日で1日お休みのだけど、私は用があって少し出かけるの。5の鐘が鳴る前までには帰って来られると思うから、そうしたら5の鐘から試験を始めるわ。それまでの時間は自由に過ごして。部屋でゆっくりするのも良いし、勉強を続けるのも良いし、あなたに任せるわ。じゃあ、何か質問ある?」


「ううん、大丈夫。」


「よかったわ。休みの日も食事の時間は同じだから忘れないで。あと、分かってると思うけど研究所の外は魔物が出て危険だから外出は禁止よ。じゃあ明日も早いから、私はもう寝るわ。」

言い終えるとアリアは早々にベッドに潜り込んだ。


「うん、おやすみ。」

待ちに待った魔術の勉強が出来るかが明日決まるかと思うと不安で私は中々寝付けなかった。


翌朝エマが起きると、アリアはもう部屋にはいなかった。

空っぽになったアリアのベッドを見て、明日からは違う部屋になるのかと思うと少し寂しさを覚えた。アリアの言ったように1日ゆっくり休む事も出来たが、万全に備えるために勉強する事を選んだ。いつの間にか熱中しており、時間はあっという間に過ぎていった。


予定通り、5の鐘の前にアリアは帰ってきた。ただ、その顔は酷く青ざめていて、まるで初めて会ったあの日のようだった。

心配になった私は


「大丈夫?休んでいた方が良いんじゃない?」

と声を掛けたが


「平気よ、こんなのすぐ治るから。さあ、さっさと始めるわよ。」

と机を突き合わせ、準備を始めてしまった。

しぶしぶ私も準備を始めたが、確かにアリアの言った通り顔色はすぐに良くなり、元通りの血色の良い状態になるまで然程時間は掛からなかった。

そんな様子をみてほっと胸を撫でおろしていると、予定通り5の鐘の合図でアリアは試験を始めた。アリアの出す問題に、読んだり書いたりしながら私が解答していく。

数十問終わった所で、


「これぐらいで良いでしょう。」

とアリアが試験を止めた。

バクバクと鳴る心臓を抑えながらこちらを見真剣な表情で見つめる次の言葉を待っていると


「全問正解よ、よく頑張ったわね。」

とほんのりと笑みを浮かべ、アリアが言った。

それを聞いた瞬間、私はアリアに駆け寄り、ぎゅっと抱き着くと、


「ありがとう!アリアのおかげ!アリアの教え方が上手だったおかげで勉強がすごく楽しかった。これで私も明日から魔術の勉強が出来るんだね。本当にありがとう!」

驚いた様子のアリアだったが、私の背にそっと手を回すと


「あなたが頑張ったおかげよ。」

と微笑んだ。


「へへ。あと私ね、アリアの事お姉ちゃん見たいだなって勝手に思ってたの。アリアに教えて貰えて本当に良かった。安心したらお腹減っちゃった。私夕食食べに行ってくるね。」

喜びのあまり今まで思っていた事をさらりと伝えてしまったのはいいものの、やはり照れくささには勝てず、さっと話題をずらすとそそくさと食堂へ向かった。


「行ってらっしゃい。」

そう呟いたアリアの額にはうっすらと汗が浮かんでいた。

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