授業
到着した勉強部屋では既に授業が始まっており、文字の書かれた壁の前に立つ先生であろう大人と、その前には背の高い机があり、少し間をあけて子供達用の長い机が数列並べられ、その机と平行に並んだ長い椅子には、最前列から詰めるようにして子供達が数人座っていた。
その子供達の背後を通る形で教室に入ると、アリアは先生に向かって軽く頭を下げた。アリアに習い、私も少し頭を下げたが先生はこちらを気に留める様子もなく授業は進められた。
アリアに促され、前方に座る子供達から離れた一番後ろの方の席に座ると、私は透かさず気になった事を、授業の邪魔にならないよう小声でアリアに聞いてみた。
「勉強って子供たち皆一緒にするんじゃないの?」
想像したよりも子供たちの人数が少なかった事が気にかかった。
それを聞いたアリアはため息をつき少し嫌そうな顔で私を見ると、私よりも抑えた声で答えた。
「もちろん皆が受けられる授業もあるわ。最初は初級の授業から受けて、そこで出される試験に合格すれば中級、また中級に合格すればさらに上の上級の授業が受けられるようになるの。だから今この中級の授業を受けているのは、初級の試験に合格していて、まだ中級の試験には合格できていない子たちよ。」
そんな!皆が同じ授業を受けられないなんて話は寝耳に水だった。自分に出来るのか、出来なかったらどうしようという不安が私の表情をじわじわと変えていく。
「このくらいしっかり勉強すればすぐに合格出来るわ。この内容なら私も合格しているもの。」
アリアは前を見据えたまま言った。
その自身の透けた横顔に、不思議と本当に大丈夫な気がして気持ちが落ち着いた。
つんけんした態度だが、その言葉の素直さに、なんだか励まされた気がした私は自然に笑みが零れた。
その様子に怪訝な表情を浮かべたアリアは、とりあえず見なかったことにして前に向き直った。
引き続き授業を見学しながら、アリアによる説明は続いた。
「まず、今授業をしているのはウォーニー先生、他にはあなたも知っているドンノ先生も含めて先生は全部で4人いて、この後の初級の授業をするのがベン先生で、上級の授業をするのはレント先生。それから、もう一人のルース先生は今は別の仕事があってこの研究所にはいないけど、もう少ししたら戻ってくる予定だからその時にでも挨拶しておくといいわ。」
「わかった。ねえアリア、私あの文字が読みたい。でも読めないの、あれはなんて書いてあるの?」
アリアの話を話半分で聞きながら私は、ウォーニーによる初めて聞く魔術の話に夢中だった。
そんな話半分で聞いていたであろう私に、じとりとした目をむけながら
「これから話そうと思ってたわ。」
と話を続けた。