放課後 しゅん
4話の放課後の話です。
「はる、はる が好きだよ。」
「ふふ、どうしたの?僕も好きだよ?」
驚きもせずそう答える はる 。
急に はる に好きだと言ってしまった。
いつもの教室。
今日は何故かまだ帰っていない はる がいた。
なんでも、まだあいつのお迎えが来ないらしい。何かの担当者になったとか。
いつもは見れない夕日に照らされる君と話をしていたら。綺麗な君を見ていたら。
無意識に言葉にしてしまった。
「違うよ、はる 。俺の好きと はる の好きは違う。」
「 はる のは友達としてでしょ?」
「……?…そうじゃないの?」
あーあ、まったくわからないって顔しちゃって。
なおさら俺の眼中に無い感じが伝わってくるよ。
「そう。俺の好きはね。」
そう言って向かいに座っている はる に近づく。
「えっ、ちょっと しゅん どうし……」
俺の唇が最愛の人のそれに触れた。
目は閉じない。じっと はる を見つめる。
はる も驚いて目を見開いている。
随分と色気のないキスだったかもしれない。
でも、はる の唇が。驚いた瞳が。触れた肩が。
全てが美しく愛おしくて。
角度を変えて深くしようとした時。
「ちょっと!」
はる に押される。か弱い力だった。
「何するの!?」
「だって、はる 、そうでもしないと俺の好きがわからないでしょ?俺の好きはこういう好きなんだよ。」
「でも……だって………」
「男同士だから?」
はる が真っ赤な顔でこっちを驚きながら見る。そう。はる は友達だと思ってた俺に、しかも男同士なのにこんな「好き」を向けられるとは思っていなかったのだろう。
「はる は知らないかもしれないけど、はる のことみんな綺麗だと思ってるよ。」
そう言いながらまた身構えた はる に近寄って、細い腰をしっかりと抱き込む。
「こういう関係にもなりたいって思ってるよ。」
真っ赤になって俯いた はる の顎をすくって俺と目を合わさせる。
もう一度口づけようと思ったら、
「わ、わかったから!ちょっと離れて!」
「じゃあ、俺の好きに対する答えを聞かせて?」
「………僕、その、ちょっと今日は……帰る!また今度にしようよ!」
「そうやって逃げるの?」
「!?」
「そうやって逃げてあいつに頼るのか?俺と向き合え。そして自分の気持ちと。困った時だけ頼ってあいつは助けてくれるのか?」
こんな時まであいつに頼ろうとしてる はる につい口調が強くなってしまった。
はる は はっと した顔をしてまた俯いてしまった。
本当はわかってる。
あいつは はる のことなら飛んでくる。でも はる が黙ってるってことはそういうことだろ?
俺が付け入る隙があるんだ。
「まぁ、俺も今日は急ぎすぎたよ。ごめんな。また今度返事を聞かせてくれ。」
そう一言残してこちらを見たままの はる を振り返らずに俺は教室から出た。
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