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禁忌の恋

作者: 無花果
掲載日:2021/09/13

読んでくださりありがとうございます。

 彼とするいつもの喧嘩。でも、今日はいつもとは違った。


「だから、私の顔をみてって言ってるでしょ!」


 彼に対してここまで怒ることは初めてだ。だから、言い過ぎだと思い顔から血の気が引くのが分かった。


彼が動く前に、私はさらに言い募る。


「わたしの顔をみて!」


 いてもたってもいられず、つい彼の裾を掴み、心の奥底の気持ちが漏れ出してしまった。


もう、戻れない。


 彼は目線を逸らしならがら、うんざりだと言うように私の手を掴んで、ぼそりと呟く。


「だから、言っているだろ。お前は何を言っているんだって」


私には分からない。彼が何を言っているのか。


「お前は最初から顔が無かったろ」


かおがない。


 現実感が湧かず私は左手を顔にそえる。

そえたはずだった。


無かった。顔が、


思い出した。

私はカオナシだ。


「うわぁあああぁっっああー」


声は出る。涙も出ている感覚がする。

でも、無い。肝心な顔が。


 彼と仲良くなる内に、気が付けば、顔がないという事を忘れていった。


 彼からすれば狂気の沙汰だろう。私は元々怪物。

 それが、怪物が自身を人間だと勘違いしていたなんて。


 それほどに、それほどまでに、私は彼を愛していた。


 自身の記憶を歪めてでも、彼と一緒にずっといられるように。


それも、これでおしまいだ。



「ねぇ、知ってる?怪物が人間に恋をする話の末路って」


声は震えていないだろうか?


「あぁ、前に言ってた事か。でも、その話はしたくないんじゃないのか?」


 彼は先程までの私の醜態を忘れたかのように、普通に話す。


 私は笑顔を浮かべようとして、顔がない事に気づく。落ち込みそうになるも、笑っている雰囲気を出す。


「その人間はね。怪物のことを忘れちゃうの」


 絞り出した私の言葉とともに涙が流れた気がした。

 彼は動かない。心の中にポッカリと大きな穴が空いたようなそんな顔をして。


あぁ、私という存在は、彼の中から消えた。

それは彼を見て分かった。


あぁ、これできっと最期なのだ。

もう、彼とは会えない。


怪物が初めてする人間の彼への最初で最期の恋。



ヒトとカオナシの恋、それは禁忌だ。


カオナシは人とちがう

顔がない以外にも、特殊な性質を持つ

カオナシは恋をすると、自身のことを忘れる。そして、いずれ怪物だと思い出す。その時から、カオナシが恋した相手は、カオナシのことを忘れ出す。

それは、とても辛いが、救済はあった。その人間にカオナシの記憶が消える事を伝えればいい。

そうすれば、その人間からカオナシの記憶は一瞬にして消える。そして、カオナシ自身の存在も消える。


人間の記憶とともに自身の存在も消す。

これがカオナシの禁忌だと言われる恋だ。


帰宅途中に、わたしの顔をみて!って言うシーンが思い浮かんだので、物語にしてみました。

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