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禁忌の恋

作者: 無花果

読んでくださりありがとうございます。

 彼とするいつもの喧嘩。でも、今日はいつもとは違った。


「だから、私の顔をみてって言ってるでしょ!」


 彼に対してここまで怒ることは初めてだ。だから、言い過ぎだと思い顔から血の気が引くのが分かった。


彼が動く前に、私はさらに言い募る。


「わたしの顔をみて!」


 いてもたってもいられず、つい彼の裾を掴み、心の奥底の気持ちが漏れ出してしまった。


もう、戻れない。


 彼は目線を逸らしならがら、うんざりだと言うように私の手を掴んで、ぼそりと呟く。


「だから、言っているだろ。お前は何を言っているんだって」


私には分からない。彼が何を言っているのか。


「お前は最初から顔が無かったろ」


かおがない。


 現実感が湧かず私は左手を顔にそえる。

そえたはずだった。


無かった。顔が、


思い出した。

私はカオナシだ。


「うわぁあああぁっっああー」


声は出る。涙も出ている感覚がする。

でも、無い。肝心な顔が。


 彼と仲良くなる内に、気が付けば、顔がないという事を忘れていった。


 彼からすれば狂気の沙汰だろう。私は元々怪物。

 それが、怪物が自身を人間だと勘違いしていたなんて。


 それほどに、それほどまでに、私は彼を愛していた。


 自身の記憶を歪めてでも、彼と一緒にずっといられるように。


それも、これでおしまいだ。



「ねぇ、知ってる?怪物が人間に恋をする話の末路って」


声は震えていないだろうか?


「あぁ、前に言ってた事か。でも、その話はしたくないんじゃないのか?」


 彼は先程までの私の醜態を忘れたかのように、普通に話す。


 私は笑顔を浮かべようとして、顔がない事に気づく。落ち込みそうになるも、笑っている雰囲気を出す。


「その人間はね。怪物のことを忘れちゃうの」


 絞り出した私の言葉とともに涙が流れた気がした。

 彼は動かない。心の中にポッカリと大きな穴が空いたようなそんな顔をして。


あぁ、私という存在は、彼の中から消えた。

それは彼を見て分かった。


あぁ、これできっと最期なのだ。

もう、彼とは会えない。


怪物が初めてする人間の彼への最初で最期の恋。



ヒトとカオナシの恋、それは禁忌だ。


カオナシは人とちがう

顔がない以外にも、特殊な性質を持つ

カオナシは恋をすると、自身のことを忘れる。そして、いずれ怪物だと思い出す。その時から、カオナシが恋した相手は、カオナシのことを忘れ出す。

それは、とても辛いが、救済はあった。その人間にカオナシの記憶が消える事を伝えればいい。

そうすれば、その人間からカオナシの記憶は一瞬にして消える。そして、カオナシ自身の存在も消える。


人間の記憶とともに自身の存在も消す。

これがカオナシの禁忌だと言われる恋だ。


帰宅途中に、わたしの顔をみて!って言うシーンが思い浮かんだので、物語にしてみました。

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