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ウォーターメロンは小さな友達

10月の貴石。

トルマリン。

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「急がなきゃ、11月どころか年越しちゃう」

僕は急に学校が忙しくなったので、いつものようにお祖父さんのところへ行けなかった。

10月の話なのに。

家に着いても、慌てていて口調が早くなった。

「あ、お祖父さん。これ、栗拾いに行ってきたよ。食べてね」

お茶をもらってふっと息を吐き、お祖父さんに言う。

「ね、お祖父さん、いろんな色があるのってきれいだね」



結婚式を終えた花嫁さんがね、幸せいっぱいで乗り込んだはずの船でおきた事件なんだ。

船はいわゆる豪華客船ってやつで、お金持ちの人たちが多くて。

その人たちを狙って? 宝石を売るひとがいたんだ。

青いビロードのトレイに敷き詰められた石は、すっごくカラフルでさ。

赤、橙、黄、緑、青、藍、紫って色とりどり。


ある日、その宝石商さんが行方不明になっちゃったんだ。

うん。宝石と一緒に。

それで、真っ先に疑われたのが花嫁さんだったの。

前の日に、宝石を買ったんだって。

ひとつの石なんだけど、片方が赤で、もう片方にいくにつれ緑になってて。

変わってるよね。


でも怪しい人が増えちゃった。

宝石商さんから買った人がいっぱいいて。

うん。それは普通だと思うの。

ただ同じ前の日に、宝石商さんが売ってる石は全部トルマリンっていう石だって言う人がいて。

買った人は、ルビーとかサファイアとかって思ってたんだ。

値段が全然違うんだってさ。

だから問題になってたらしいよ。


花嫁さんは、トルマリンって知ってたんだって。

昔に持ってたんだけど珍しいから博物館にって言われて、送り出したんだけどね。

で、船に積んで運んだ時に無くなっちゃったんだ。

それがこうして、偶然にも船で出会って、花嫁さん嬉しくてさ。

自分の石だって思ったのは、石が返事をしてくれたからとか。

こう石をね、大事に大事に布で拭いてあげたの。

そしたら、ぴりぴりって指に返事の感触があるんだって。

だから、花嫁さんは犯人じゃないってなって。


他の人たちは、自分が買ったのがトルマリンだって知って怒ってたけど、宝石商さんに何かをするなんてありえないって言ってて。

みんなで彼を探すことになったんだ。

お昼に雰囲気の重い中、ちゃんと美味しいごはんは食べたみたいだよ。

豪華客船のごはんおいしいだろうね。

で、おやつの時間もきっちり休んで。まぁ、これは雨が降ってきたから休もうってなったらしいけど。

すぐ止んじゃって捜索再開。

甲板を歩いてたら、虹がきれいにかかってて、見つかるなら今じゃない?ってみんなが軽く言ったのに、本当に見つかっちゃったんだ。

船が沈没するときに使う小さいボートの中に横になってたんだよ。

当然、みんなからつるし上げみたいにされて、お金は帰ってきたみたい。

花嫁さんは、トルマリンが欲しかったからそのまま購入したけど。


「ね、お祖父さん。石は本当に欲しい人のところに行くってホントだったんだね」

「一弥は、エジプトの伝説を知らないのかね。トルマリンは、虹の色を吸い込みながらこの地に生まれてきた石だという。それほどカラーに幅があるということだ。花嫁さんが買ったのは『ウォーターメロントルマリン』と呼ばれている。また、電気石という別名もある通り、擦ると静電気を発することもあるのだよ。残念ながら比較的新しく名付けられた石で、古き良きミステリになっていないけどね」

「お祖父さん好みのミステリは、なかなかないんだね。今月もう一回来れるように頑張るからね」

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