表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋獄で、君と狂う  作者: 武藤夏
3章
19/36

【雪の密室の犯人】

【雪の密室の犯人】


 アレクセイが死んだ夢を見るのは、何度目だろう。


(···また、この夢ですか···)


 リーシャは、自分の視界に広がっているのは「夢」であると認識していた。

 雪原の中、アレクセイや、使用人達の死体が転がっているのだ。彼等がアレクセイの書斎で死んでいたのは、確かにリーシャの記憶の中に残っていた。


 彼らが殺されたのは書斎であり、彼等が殺されたということも、確かな事実である。

 父の遺体には、書斎に飾られていた大剣が刺さっていた。

 まだ生々しい血の跡が、白い雪にじんわりと広がっていくことに、リーシャは背筋に冷気が走っていくのを感じた。


(···私、意外とトラウマになっているのですね···)


 夢の中のはずなのに、寒いと感じる。

 足先、指先、そして頭から冷たさが徐々に広がっていき、寒さからは逃れようがない。夢の中でも動けば良いはずなのに、足が棒のようになっており、動けないのだ。


(···雪の、密室···)


 リーシャは動けない状況ながら、冷静に目の前の光景をそう認識する。


 降り積もった雪の上を歩けば、必ず足跡が残る。


 アレクセイや使用人達が他殺であるのなら、雪の足跡が必ず残るはずなのだ。多くの推理小説でも、雪が降り積もる中、家屋の中で被害者は殺され、犯人は足跡を”残さない”ことが多い。


 雪に閉ざされた家が、事実上の密室となるわけだ。

 どう犯人は足跡を残さずに、被害者を殺したのか、それを読者は推理しなければならない。


(私は殺していません。私は、ちゃんと覚えています)


 同じ家屋にいた家族が犯人であることもある。


 だが、リーシャは殺していない。


(···あの時、1人の足跡だけはありましたね)


 雪が降り積もるラザレフ邸で、自分を連れ出す際に――足跡が残されていたのを覚えている。


 夢の中でも、あの時のように、背後から抱きしめられた。


 力強く抱きしめられ、リーシャは自身の胸がざわめくのを感じた。夢の中であっても、彼の存在は自分に温度を伝えてくる。その温かみにすら、自分は静かに恐怖した。


 自分が今まで触れなかったものが、そこに存在するかのように錯覚してしまう。


「あぁ、リーシャ···」


 恍惚とした声が、背後から聞こえた。


 彼は、自分の目を塞ぐ。

 ふさがれた目は暗闇に染まり、何も見ることができない。


「ボクは、君を手に入れるためならどんなことだってするよ」


 囁かれた声音は、狂気を含んでいるように思えた。


 そう感じるのは、リーシャが確かに見た、たった1人の足跡の記憶が関係している。


(だって、彼が本当に私を手に入れるために行ったことなら···正気の沙汰とは思えない)


 ――ルカが、アレクセイや使用人を殺して、リーシャを誘拐したとしたら。

 考えないようにしていたが、その可能性は極めて高いのだ。彼が嘘をつくことや、何より雪の中の足跡が証明している。


 外部から来たのは、彼だけだった。


(ガリーナも、彼が単身でラザレフ邸に入ったと証明している···)


 ルカが犯人だったら、自分は誘拐犯どころか殺人犯の手の内にいることになる。ゾッとしない考えに、リーシャは夢の中で彼の腕の中から逃れようとする。


 決して離されない腕の中で、自分はどうしたら良いのだろう。


 視界を真っ暗に閉ざされたまま、自分には、何ができるだろう。


次の更新は、明日の27日(日)の21時予定です('ω')ノ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ