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恋獄で、君と狂う  作者: 武藤夏
1章
1/36

【閉じ込められた闇の中】

第19回角川ビーンズ文庫用に書いた小説でしたが、

残念ながら第一次審査落ちで。。。

すでに完結済みのストーリーなので、ぜひ多くの方にご評価&読んで頂けたら幸いです。

【閉じ込められた闇の中】


 確かに、彼等は死んでしまっていた。


 死んでしまっているのは、合計で4人。床に敷かれた赤い絨毯に、3人の遺体が転がっていた。この部屋に飾ってある大剣で刺されたのだろう。使用人の服を着た彼等の肩や胸、首にかけての斬り傷は、間違いなく剣によるものだ。床に飛び散った鮮血が生々しい。


 もう1人の遺体には、その大剣が胸から突き刺されていた。


 彼の目は見開かれ、犯人の姿を最後まで見ていたのだろう。


 強張った父の遺体を前に、リーシャは現実を否定するように首を横に振る。


「嘘···」


 リーシャは生存者がいない部屋の中で、震える手で、父の指から抜け出た指輪を拾う。

 チェストにもたれかかった父の遺体を見ても、現実感がまるでない。しかし、父は死んでいる真似をしている訳ではない。大剣が胸に刺さっている状態は、例え自分が医者でなくても、死を確認することができる。


(父さん···使用人達も、どうして···) 


 リーシャは固唾を呑む。足を動かすことができずにいた。

 屋敷の使用人達に父の死を知らせ、助けを求めれば良い――脳裏で自分がすべきかわかっていながらも、突然の出来事を前にしたら、思うように動けないものだ。


(落ち着きましょう···。落ち着いて、正確に状況を整理しましょう···)


 リーシャは、窓辺を見た。窓は施錠されている。だとしたら犯人は、自分が先ほど入ってきた扉から入室したのだろう――と、振り返ろうとした時、突然視界が暗くなった。


「なっ···」


 悲鳴をあげようとしたが、視界と一緒に唇を布で塞がれていた。強く身体を抱きしめられており、身動きもできなかった。


(···誰ですかっ?)


 自分を強く抱きしめる人物を見ようとしても、身体が動かない。薄い香水の匂いがしたかと思えば、瞼が途端に重くなる。


 目を開けていられないような、強烈な眠気が身体を襲う。


「ああ、リーシャ···」


 自分を強く抱きしめている人物は、自分を呼んだ。低い男性の声だった。声で判断するに、恐らく若いだろう。


 声は、自分よりも頭一個分は高い所から聞こえてくる。自分よりも身長が高いのだろう。



(この方は···犯人でしょうか···?)



 恍惚として自分の名を呼ぶ声は、屋敷の中で初めて聞いた声である。



「ボクは、君を手に入れるためならどんなことだってしてみせるよ」


 視界と口を閉ざされ、まどろむ記憶の中で、彼が自分に囁いた声音はしっかりと耳に残った。 


次の更新は、明日の8月2日(日)の21時を予定しています。

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