義足
破られた檻の前に絶対的な存在が多数の目が少女を見つめている。
研究所内で、収容していた怪物が脱走したのだ。
怪物が少女に飛びかかろうとしたその時、横から青白い光線が、怪物に向かって照射される。
暫し呆気に取られる少女であったが、立ち上がり、怪物とは逆の方向へと走っていった。
少女は混乱する研究所から逃げ出した。
うなされていた少女が目を覚ます。
見知らぬ部屋にハッとしたのか、体を起こし、周りを確認する。
「研究所じゃない?」
生活感のある木製の部屋。窓から見える景色がこの建物が森の中にあると少女に判断させる。
ここが何処かを探るべく辺りを見回していると扉が開き、そこから黒髪の少女が現れた。
見た目は成人前といった印象だ。
黒髪の少女のとなりには神々しささえ感じさせる斧が浮かんでいる。
「目が覚めましたか?」
「ここは……どこ?」
「私の家です。あなた、倒れていたんですよ」
おそらく助けられたのだろうと考えた少女はほっと安堵の息を漏らす。
そして安心して空腹を思い出したか、少女の腹の虫が鳴く。
「ちょっと待っていてください」
そう告げた後に黒髪の少女がおかゆを少女にご馳走した。
「さて、食事も摂って落ち着いたことですし、あなたのことを教えてくれますか?」
優しく、安心させる声で尋ねる。
「ああ、すみません。私はアンゼリカといいます。呼び捨てで構いませんよ」
思い出したようにアンゼリカと名乗った少女は、再度名前を尋ねる。
「サネリア……」
「サネリアね。倒れる前のことは覚えてる?」
「研究所……逃げ、て……」
そう言いながらサネリアは泣き始めてしまった。
するとアンゼリカは尋ねるのを止め、安心させるように抱きしめる。
サネリアは安心したのかそのまま寝息を立て始めた。
「あの義足……」
外も暗くなった頃、私は思索に耽っていました。
サネリアというあの少女の義足は私の持つ戦斧と同じ空気を感じました。
気になって調べてみると義足に書かれた未知の文字を発見したことによって、“遺産”であることを確信します。
「サネリアが言っていた研究所という施設が関連してそうですが……」
彼女の歳の割に落ち着き払った性格とも関係あるのでしょうか?
その場合、彼女は被験体だったと考えられます。詳しい情報は知らない可能性が高いでしょう。
しばらくは様子見ですね。