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プロローグ ~少年よ、リッチでエッチな生活を目指せ~

初投稿です。さらっと見てやってください。


「やーっっとついたぁー!!長かったぁ!!」


 眼前にそびえたつ大きな壁を見つめて、人ごみの中だというのに少年が叫んだ。


「もう、おにいちゃん!急におおきな声出さないでよ!…長かったのは同感だけどさ。ほら、早く列に並ばないと入るのが遅くなっちゃうよ。」


 隣に付き従うように立つ、可憐な少女が呆れたような、しかし優しい声で諭す。

 そうして二人は、壮大な壁にぽっかりと開いた穴のような場所から伸びる列の最後尾に軽い足取りで向かうのであった。


(いよいよだ…ここから始まるんだ!リッチでちょっとエッチな俺の幸せ生活が!!)


 少年はその年齢らしい希望に満ちた笑顔でなかなかにゲスイことを思うのであった。






 貿易都市グリードはヴェルフ王国領内において王都に匹敵するほどに発展している都市である。西側は海に面しており、多数の大型船が停泊している。都市内の治安維持のため、都市の周りは大きな石壁が囲っており、侵入者を阻んでいる。堅牢で大きな門の前には、今日もずらりと入場審査待ちの列が出来上がっている。列に並ぶもの目当てに屋台や露店が並んでおり、あたりは活気に満ちていた。


「よし!通っていいぞ!気をつけてな! よし、次のもの!」


 元気な門番の声が響き、手早く次の審査対象者が門番の前に現れた。



 一言でいえば珍しい組み合わせだった。13~5歳と思われる身長の少年と顔立ちの整った少女の二人組。身なりや装備はそれなりにしっかりしていて、孤児というわけではなさそうだ。長旅用の大きなバッグを二人とも背負っているので、近くに住んでいるものでもない。しかしながら、彼らの世話をする大人の姿が見えないのだ。

 門番はあとから保護者がやってくるのだろうと思い、数秒待ったが、一向に大人は現れず微妙な空気が流れた。


「あー…えっと、君たち二人だけなのかな?」


「そうだけど何か問題があるのか?」


 子供扱いに少しイラっときたのかぶっきらぼうに少年はそう答えた。すると少女が滑らかな動作で少年の脳天に強烈なチョップをかました。


「お兄ちゃん!言葉遣いが荒いよ!私が話すから黙ってて!すいませんうちの兄が…」


「ガチいってぇ…わかったよアオイ…あとは任せた…」


 少年は頭をさすりながら後ろに下がり、少女が門番の前に立った。仲睦まじげな二人の会話に少しほっこりした門番は戸惑いつつも余裕をもって少女に尋ねた。


「えっと…ほんとに二人だけなんだね?」


「はい。珍しいとは思いますが私たち二人だけです。」


「身分証明証はあるかな?」


「ちょっと待ってください…確かここらへんに…これじゃない…んしょ…あった。これですよね?」


 可憐な少女が大きなバッグから懸命に探す姿に、門番は再びほっこりしながら二人分のカードを受け取る。


「どれどれ…名前はリュージ・シオダくんとアオイ・シオダちゃんか…。ん?…え?…」


 門番は名前を確認しうなずいたのち、その下の出身地と備考欄をみて固まった。




『出身:ポポリュンク山  備考:■■〇■〇■ ■■■  ■〇〇■■■■■』

                   



「なんだこれ…、なんで備考欄にこんな意味の分からないものが書かれているんだ…?しかもポポリュンク山だと…?あんなところに人間は住めないだろ…」


 門番は動揺を隠しきれないのか小さくそうつぶやいた。

 ポポリュンク山とは都市グリードの北東に位置するガダル山脈の中で、もっとも標高の高い山である。鋭い岩肌に囲まれていて草木はほとんど生えていない。山頂付近の雪は1年を通して消えることはなく、基本的に眺めるだけの山であり、好奇心から登頂に挑戦した者のほとんどは諦めるか帰らぬ人となっている。

 門番はそのような過酷な環境で暮らしてきた人間がいると信じられなかった。しかしカードの右下に押されている証明印は門番の経験上、間違いなく本物であった。


「しゅ、出身は間違いなくポポリュンク山なのか?」


「はい。そうですけど…あぁ、田舎すぎておどろかれたんですね。わかります。確かにあの一帯で暮らしているの私たちだけですから。なにもないですし。」


 アオイは遠い目であきらめたような口ぶりでそう言った。すると


「そう!!ガチなんもない!遊びも!うまい食べ物も!!なーんにもないんだ!だから俺たちはここに来たんだっ!!」


 ここまで黙っていたリュージが、憤慨しつつ鼻息荒くそう言った。いきなり大声を出したことに門番は驚きつつも、その説明にはすんなりと納得がいった。


「あ、あぁ、なるほどな。確かにグリードだったら全部そろっているな。」


「そうだろ!?だから早く通してくれよ!楽しみで待ちきれないんだ!!」


 門番は元気いっぱいにつかみかかるような勢いで懇願するリュージをみて、少なくともこの二人に悪意はないだろうと確信した。それに、気になる点はあるが証明証は間違いなく本物なのだから、通しても何も問題はない。むしろとどめておくほうが無礼に当たる。そう考えてからの行動は速かった。


「わかった、わかった。通って良し!しっかり楽しんで来いよ!驚いて悪かった。お詫びに何か困ったことがあればここに尋ねてきな。できる限り協力してやるからさ。俺の名前はウェグリア。ウェグでいい。」


 通常、門番が通行人に自分の名前を教えたり、個人的な関係を持ち掛けたりはしない。不正につながりかねないからである。しかし、ウェグリアはこの二人が結構気に入ったと同時に心配になったため、見守っていく決意をした。それゆえの自己紹介だった。


「おぉっガチ助かる!!ありがとな!ウェグ!!じゃあまたな!!」


 許可が出たのがよほどうれしかったのか、リュージは早口で別れの挨拶を言うと、猛ダッシュでグリードに入っていった。


「あぁもう!おにいちゃん、待って!!  ありがとうございました。ウェグさん。ではまた!」


 アオイは礼儀正しくそう述べると、足早にリュージを追いかけていった。

 可愛らしく追いかけていくその後ろ姿を見て思いついたのかウェグは最初の助言をアオイに投げかけた。


「働き口を探すならまずは『ワークハロー』に行け!それがおすすめだ!」


「『ワークハロー』ですね!わかりました!ありがとうございます!」


 しっかりと聞こえていたようで、アオイからはそう返事があった。


「すげぇ二人だったなぁ…  よし!次のもの!」


ウェグは少しばかり深呼吸をすると、気持ちを切り替えて業務に戻ったのだった。


ここまで読んでくださり誠にありがとうございます!!

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