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【7話:奇襲】

「黒上・・・久しぶりだな・・・」

「神楽坂くん、急に呼び出してどうしたんだ」

夏休みでシーンとした教室、二人の男が黒板の前に立っていた。

「お前の狙いは俺なんだろ?回りくどいことしないで来いよ」

強く迫力のある声に黒上は一切の怯みも見せずにいた。

「別に僕は神楽坂くんを倒したいわけじゃない」

「じゃあなんでこんな事するんだ!歩美を・・・歩美を死に追いやって!」

「あぁ、でも殺したのはお前じゃん」

体格のいい大男は歯を食いしばり拳を強く握りしめた。

「ああ、でも俺は歩美の意思を継いだ、お前にだけは絶対・・・」

「まぁそうだよね、俺の目的はお前を眷属にする事。僕の眷属になる気は無いよね」

「死んでもな」

「でもいいのかな?僕のボスは柳大輝をもう時期殺す気だよ?君、彼と友達だよね?僕の眷属になればボスを止めてあげれるかもね」

大男はその場に呆然と立ち尽くした。頭を抱えその場にしゃがみこんだ。

「じゃあ神楽坂くん、改めて聞くね。僕の眷属にならないか?」


補習が無事に終わり本格的に夏休みに入った。打倒黒上を掲げた俺らはザックス指導のもと戦闘の練習をしていた。夜見音歩美をいじめていた、黒上。それに辰巳のこととも関係があるような気もする。ともかく黒上をぶっ倒して知ってることを吐いてもらおう。

今日も戦闘練習を終えみんなと別れた俺は一人自宅へと帰宅することにした。

額に冷たい感覚を得た。手のひらを空に向けてみる。ポツン。ポツン。やがてその冷たい感触は連続的にやってきて一瞬にして土砂降りの雨となった。

俺は何か違和感を感じた。周りには人が数人、急な大雨を予想していたかのように折りたたみじゃない、普通の傘をさしている人がいた。警戒心を持った俺はその数人を注意することにした。

(後ろだぁ!)

俺はとっさに横にステップを踏んだ。驚くことに後ろの水溜りから凄い勢いでレーザービームのような水が飛んできた。

「避けられたのね」

「だがワタクシに狙われたのが運の尽き!」

俺の前後に長めのバングと三つ編みサイドポニー、ノースリーブのシャツを着た女の子がいた。二人の違いはサイドポニーが右か左かの違いのみでそれ以外に違いという違いは見当たらない見事なドッペルゲンガー的な似っぷりだ。

「ワタクシの能力は水操作!ねぇねの雨降らしと合わして最強なのよ!」

「菜々、私たちの手の内バラしてどうするの」

「ねぇね、ごめんなさい!」

「いいのよ菜々」

瓜二つっ子は俺の周りをぐるぐると回り始めた。

(こいつらぁできるぅ)

(悪魔化するか?)

(できるのかぁ?練習で一度もできなかっただろぉ)

(やるしかないでしょ)

少女二人は指パッチンをした。雨がもっと強くなり、その雨水が全方向から俺を襲ってきた。

「我が眷属よ、主人たる我に魔力を集めよ!」

爆煙が舞う。俺に集まってきた水が花火のように一気に飛び散る。体が熱い、けど力が溢れてくる。これが悪魔化か。すごい。俺の頭からはツノ、白い翼が背中から生えている。

「悪魔化だ!ねぇね!」

「悪魔化はできないってボス言ってたけど、ちょっと楽しくなりそうね菜々!」

「うん!ねぇね!」

「私たちも悪魔化する?」

「うん!ワタクシ達も悪魔化しよう!」

「我が主よ・・・眷属たる我を鼓舞させ魔力の恵みを!」


舞子は家に帰ってテレビをつけると青い枠が出ていた。テロップで大雨特別警報と書いてあり舞子は目を疑った。そこには一地区だけ赤色に塗られた地図がありその場所は大輝の住む場所だったからだ。

次の瞬間体がふらっとした。舞子はすぐに大輝が悪魔化するために魔力を集めたのだと察した。

「大輝・・・」

舞子は家を飛び出した。

チャットアプリのグループチャットを開始した。大輝の眷族残り三人も集めて彼の元へ向かうべきだと考えた。

「もしもし、みんな緊急招集、今大丈夫?」


俺は本能で勝てないと感じた。一対一でも多分勝てないのに二対一・・・しかもコンビの息がめちゃくちゃあっている。悪魔化した彼女らの動きは黒上の比じゃないくらいに速い。それにいろんな方向からの水攻撃を避けなくてはいけない。

(ザックス、なんかいい作戦とかない?)

(正直えぐいなぁ・・・せめて人数がいれば戦う方法もあるんだがぁ)

(逃げるべきか?)

(いやぁ、無理だぁ。この雨だとあの水攻撃でどこでも狙われるはずぅ)

策がない。くそっ!俺はやけになって少女に殴りかかる。パワーはあるんだ、当たりさえすれば!

「ムキになって隙が生まれやすいって本当だったんだね!ねぇね」

「これなら楽勝ね」

水の矢が肩を貫く。苦痛に悲鳴が漏れる。俺は手で肩を抑える。

「これで終わりよ」

水の竜巻が俺の目の前に現れた。これに飲まれれば確実に死ぬ。

「ちょっと待った!美々!菜々!」

俺の目の前には黒上と辰巳が立っていた。

「黒上!なんでこんなところにいるのよ」

「辰巳を眷属にした。ボスの命令だ。ひけ」

「ワタクシ達、任務果たせてない!」

「しかたないわ、ボスの命令なら・・・菜々」

俺は怒りでいっぱいだった。辰巳が、敵陣にいる。

「おい、どういう事だ?辰巳に何をした」

俺は黒上めがけて殴りかかる。悪魔化している俺の攻撃は避けきれず拳が顔面の目の前に、と、その時!拳が激痛に襲われた。黒上の目の前に鉄の壁が現れていた。

「大輝、俺は自分の意思でこっちに着いた。文句があるならかかってこい」

「辰巳・・・お前・・・」

俺は驚いた。辰巳の発言は多分嘘だ。なのでそこに驚いたわけではない。俺が驚いたのは鉄の壁を辰巳が作った事だ。辰巳の能力は錬金術?でもそれって確か夜見音の姉の能力なんじゃ・・・?

「辰巳、いろいろ話してもらいたいことがあるけど後でいい。どうしても戦わないといけないっていうんだったら戦おう」

この状況、多分辰巳はなんらかの弱みを握られていて従わされているんだと考えられる。それなら戦って隙を見て連れて逃げるしかない。

俺は辰巳の死角に入る。そうすれば一発攻撃を入れて気を失わせて連れて帰れる。足に力を入れる。地面を踏みしめ一歩大きく足を出す。姿勢が一気に低くなりこれは目では追えないはず。

踏み込んだ足元から鉄の棒が飛び出してくる。バランスを崩した俺は地面に転んだ。と同時に鉄の壁が四方を囲む。

「しばらく隠れてて・・・ごめん、巻き込んで」

小さな声が耳元で聞こえた。俺は辰巳の方を向こうとしたが急に視界が真っ暗になった。俺は自分の周りを金属、多分鉄で囲まれたのだと考えた。そしてこのエレベーターで下る感覚、地面の中にでも落ちていっているのだろうか?俺は色々考えるのをやめた。辰巳には何か考えがあるのだろう。任せることにした。


「大輝ぃ!」

大輝と辰巳の周りを鉄の壁が覆ったのが舞子の目に入った。舞子は全速力で壁に向かった。

「君、それ以上近づかないでもらえるかな?」

黒上が舞子の前に立ちはだかる。

「大輝・・・私に魔力を分けて!!」

舞子が大きく振りかぶり殴りかかる。細い腕はうねりをあげて魔力で輝きながら黒上を襲う。黒上は一般人と油断していたせいか避けきれず吹っ飛ばされる。

「君・・・悪魔憑きか・・・」

舞子は倒れこんでる黒上に回し蹴りを繰り広げる。黒上は腕で攻撃を受けきる。

「いや、この威力・・・ただの眷属になった人間か」

「大輝を返して!」

舞子は我を失ったように飛びかかる。黒上はため息をつくと攻撃を受け流す。

「油断!」

後ろから蛹咲姉妹と夜見音が黒上を抑え込む。

「黒上くん、柳くんを返して」

「大丈夫、彼には手をあげない。それが神楽坂くんとの契約さ」

鉄の囲いがなくなるとそこには柳大輝の姿はなく辰巳だけが立っていた。

「これでいいか?黒上・・・」

「ああ、よくやった」

黒上は悪魔化をした。ものすごい力で押さえつけていた少女三人を吹き飛ばす。

「約束通り柳くんには手を出さない、その仲間にもてはっ出さない、でいいな」

「ああ」

舞子は口をぽかんと開けて突っ立っていた。そこに夜見音が寄ってきて耳元で囁く。

「多分神楽坂くんは柳くんを安全なところに隠しているんだと思う、裏切ったわけじゃない、そう見せているだけ」

舞子はその言葉に納得した。しかし黒上側についたことには代わりはないはず。

「でもね、敵の勢力が集まっている、多分人質としてとられていた柳くんが安全なところに隠された。それに人出がある。敵を討つなら今だと思う」

夜見音は一歩前へ出た。

「黒上くん、私のお姉ちゃん、夜見音歩美をいじめたのはお前だろ」

黒上は黙っていた。この言葉は夜見音から辰巳への合図。辰巳も思うところがあるのだろう。辰巳は全てを察した。

「黒上、やはりお前を倒す。歩美さんの恨み、今晴らしてやる!」


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