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【6話:眷族】

「それにしてもぉ、ティア、お前もぉ魔王目指しテェるぅのかぁ?」

「ザックス、アンタの知ったことじゃないでしょ」

暗い魔界。魔王候補の悪魔達が集まる玉座の空席な大きな城。百もの悪魔が大きな丸いテーブルの周りを囲んでいる。白いテーブルクロスの上には豪華な肉が大量に並んでいる。どの悪魔も会話などせず獣のように肉を頬張っている。

百の席のうち二席空席があった。大広間から伸びる一本の廊下。そこには二人の悪魔の姿があった。

大柄のザックスに対し横に並ぶとやや小柄に見える悪魔はザックスにしがみついた。

「我は魔王になりたいわけじゃない。我は・・・ザックス、アンタに勝ちたい」

「ティア、そんな覚悟のやつにぃ、俺はぁ負けねぇ!」


舞子に一昨日よりも後に覚えていることを聞かれた俺は俺は昨日の記憶、というよりも今日の夢について話した。

(大輝ぃ、それぇ、俺の過去ぉ・・・)

なんか少し恥ずかしそうな悪魔の声に俺は思わず笑ってしまった。

「でもよかった、ホント元気に目を覚ましてくれて」

舞子は昨日あったっことを俺に話してくれた。

昨日舞子散歩をしていたらしい。そしたら公園へ向かう俺を見て声をかけようとしたらしい。そしたら黒上の姿があり不穏な雰囲気を感じ取り身を潜めたと。黒上が消え、その後俺が倒れ、それを俺の家まで運んでくれた。舞子はそう言った。

(戦闘ぅの様子をぉ、教えてほしいぃ)

ザックスの発言を伝えるとに舞子は昨日見たことを全て俺らに話した。

(大輝ぃ、これはまずいぃ)

(どういうことだ?)

(黒上はぁまだ開戦前だっテェ言うのに、もう悪魔の戦い方ぁを習得しているぅ・・・)

俺は何が何だかさっぱりだった。頭がついてこない。黒上が悪魔みたいな姿になったとか言ってたけどなんだよそれ。

「ねえ大輝、記憶ないのってやっぱり・・・」

「多分そうだよな。黒上は悪魔と契約していて俺に能力を使った」

俺は黒上の能力を予想してみた。

(なぁ、俺の予想を聞いてくれないか)

(ほうぅ)

(黒上与一、彼の能力は記憶をなくすこと)

(まぁ、誰でも今ぁの状況を見ればぁ、わかるよなぁ)

(そして公園へ行くって約束のことは覚えているから消せる記憶には時間制限があるってところだな)

(俺もぉそう思うぅ)

舞子が心配そうに俺の顔を覗き込んできた。

「大丈夫?なんかぼーっとさっきから上の空だよ」

「ごめん、舞子。ザックスと能力について話してた」

「大輝・・・私にできることがあったらなんでも言って」

真に迫るようなそんな舞子に俺は少し怯んだ。

「どうしたんだよ」

「昨日の一件で私本当に怖くなったの」

俺の手を両手で握ってきた。強く、強く。ぎゅっと。

「大輝が、大輝が死んじゃうんじゃないかって」

涙ぐんだ彼女の声は俺の心に突き刺さる。

「大輝がこんな危ない目にあうのは全部私のせいだもん」

「舞子・・・」

「あの時、私が転校しなければ。あの時、私が手を差し伸べられていれば」

俺は舞子の声を黙って聞いていた。彼女の息が整うと俺は握られた手に反対の手を添えて強く握り返した。

「俺もごめん。一度、死のうとした。でも俺のために泣いてくれる人がいる。俺のことを本気で心配してくれる人がいる」

舞子の目を見る。

「俺は死なない。ずっと近くにいる。そばにいる。どこにもいかない」

舞子は声にならない声を出して泣いていた。

舞子は泣き止むと「そろそろ帰るね」と言ってこの家を出て行った。俺は色々と決心した。

(ザックス、二つ言いたいことがある)

(なんだぁ?)

(まず、夜見音歩美をいじめていた犯人はほぼ黒上で確定だ)

(根拠はぁ?)

(いじめの記憶が消されていただろ?それをできるのは黒上だけだ)

(それだけじゃあ確定はしないんじゃないかぁ?)

(ザックス、舞子の話を聞いていなかったのか?黒上、あいつの目的は悪魔憑きを部下にすることらしい)

(ほうぅ)

(仮に夜見音姉が悪魔憑きだったとしたらどうだ?)

たしかにこれだけじゃ確信とはいかない。でも俺はなぜか黒上がいじめの犯人だとそう思った。

(なるほどぉ、それでぇ、二つ目はぁ?)

(俺も強くなりたい)

敵が強い以上こちらも強くならなくてはいけない。

(いいだろぅ。というかもとよりそのつもりだぁ)

この日から特訓の日々が始まった。幸い夏休みだ。補習はあるが時間はある。俺は強くなってやる!黒上に勝つ!

(なぁ大輝ぃ、そもそもなぜ悪魔憑きをぉ手下にしようとしているかぁ、わかるかぁ?)

(戦力が増えるから?)

(それもあるがぁ、一番の理由はぁ『眷属』)

(眷属?)

(主従関係を結ぶとなぁ主人から眷属へ、眷属から主人へ魔力を送ることができるんだぁ)

(はぁ)

(まぁ主にぃ眷属から主人への魔力移動がメインだぁ)

(なるほど、だから魔力を得るために手下を集めているのか)

(この主従関係は悪魔憑きでない人とも結べるがぁ魔力が弱すぎてあまり意味がないぃ)

(それで悪魔憑きを狙ってるわけだ)

(そのとぉりぃ、つまり悪魔っぽい体ぁになる・・・悪魔化ってぇいうんだがそれをするにはぁ膨大な魔力がいるぅ)

(つまり手下を作れと?)

(まぁ無理ぃだろうなぁ)

(お!つまり他にも方法があるんだな?)

(魔力ってどうやって生成されると思う?)

(わかるわけないだろ)

(ほら、今一瞬ぅ、魔力高まったぁ)

今?一瞬?今何かしたか?俺はザックスの質問がわかるわけなくてイラっとした・・・イラっと?これか!

(イラっとすること?)

(惜しいなぁ、正解はぁ・・・)

(焦らすなよ)

(おう、正解はぁ、感情が高ぶることだぁ)

(なるほど)

(火事場の馬鹿力ぁとかぁいうだろぉ?あれって魔力がドバドバ出てるからできるんだぜぇ)

(じゃあ強い気持ちを抱けば魔力が出てきて悪魔化できるわけだ)

(まぁなぁ、でもぉ一人ノォ力じゃぁ足りないなぁ、大輝。いいかぁお前も眷属を持てぇ)

(だから悪魔憑きなんて見つからないからこうやって色々考えているんじゃないか)

(普通の人間でいい。大輝の知り合いぃはなんかしらの大きな気持ちぃを持ってぇる)

俺はしばらく無言でいた。



「まさか負けるとはな」

「柳大輝についている悪魔はかなりの大物です。ドローで逃げ切った僕を褒めてほしいものです」

「お前は俺の自慢の眷属だ。だが負けたやつを褒めるわけにもいくまい」

中年の小デブな男性は椅子に腰掛けた。

「お前も座れ。柳とかいう少年は先頭が得意なやつに任せる。お前はあっちの任務を早く遂行しろ」

「はい」



俺は今話せる、協力してくれそうな人を電話で公園に集めた。水鳥舞子、森山美代、夜見音愛香。この三人なら俺に協力してくれるのではないか。

「みんな集まってくれてありがとう。お願いしたいことがあるんだ」

「お願い?」

夜見音は不思議そうな顔で俺を見つめた。彼女には悪魔については全く話していない。何から話したらいいものか。

「まず一つ言っておかなきゃいけないことがある。舞子と美代ちゃんは知っていると思うけどこの世には信じられないかもだけど悪魔がいるんだ」

「悪魔?」

「聞くより体験した方が早いんじゃない?」

舞子の案に俺はのった。

「夜見音、手を出して」

差し出された手のひらに俺は触れた。


スカッ!


俺の体は腰を抜かして地面にペタン座りをしていた。

「俺には悪魔が憑いている」

夜見音は俺の体で頷くと立ち上がった


スカッ!


入れ替わりを解除すると夜見音は意外と落ち着いた表情をして何かを解決したかのようにちょっとすっきりとした様子を見せた。

「お姉ちゃんはもしかしたら悪魔に憑かれていたのかもしれないです」

夜見音は目をつぶり昔を思い出していた。

「ある日金塊をお姉ちゃんが持ってきたんですよ」

「金塊?」

「私もお姉ちゃんも大喜びではしゃいだものです」

「ところが次の日からお姉ちゃんは暗くなって・・・」

彼女は辛そうな表情を隠して話を続けた。

「今思えば金塊を持ってきた時点で違和感に気がつくべきでした。外に落ちてたとか言ってたけどあんな重いもの持ってこれるわけないし・・・」

俺は頭の中で少し推理がついた。

「錬金術・・・?」

まて、前になんだか錬金術的な能力を聞いたような・・・辰巳!そうだ、あの殺人事件の鍵の・・・あれってもしかして錬金術?確か鍵をかけた時に出てくるデッドボルトってのが水銀になってたって、もしかして・・・それも夜見音姉がやったのか?

なんだか重要なパーツが揃った気がした。辰巳の汚名を晴らせるような、そんな気が・・・。

「ごめんなさい、話逸らしちゃいました」

「いや、その話について詳しく聞かせてほしい」

「でもその前に何かお願い?があったんでしょ?」

「そうだった、ごめん。本題を言わせてくれ」

黒上との戦いについて話した俺は深々と頭を下げた

「お願いします!眷属になってください!俺の下に着くなんてすごいやなこと言っているのはわかっている。俺にできることはなんでもするから、だから、お願い!」

舞子が俺の頭を強く持ち上げた。

「頭をあげて、言ったでしょ!私にできることがあったらなんでも言ってって」

夜見音は俺の横に立って肩に手を乗せた。

「もともと協力を頼んだのは私だし私が断る理由はないわ」

美代ちゃんは俺の前に立って頭を下げた。

「私は柳さんに大きな恩があります。姉さん私と会話してくれるようになったんです。喜んで眷属になります。それに・・・」

美代ちゃんは木陰に隠れる少女を無理やり引っ張ってきた。蛹咲だ

「蛹咲・・・」

「柳、きちゃってごめん。でも私に償うチャンスをください!あなたの役に立つ!だから、私も・・・!」

俺はもう一度みんなに頭を下げた。大粒の涙が頬をつたる。きっと醜い顔になっているだろう。俺は心から感謝の意を唱えた。

「みんな・・・!ありがとう」


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