~『うまれまちがえ』たおとこのこ~
もふもふで、ほかほかで、とほほと笑えるお話を書いてみたくなりました。
……どっちかというとギャグです。
しょーもない! と笑っていただけると幸いです。
これは、とおいとおい、むかしのおはなし。
この地上にまだ『しあわせの白い竜』が生まれることのできた、
そんなとおい、むかしのおはなし。
* * * * *
むかしむかし、あるところに、それは不運な男の子がいました。
どのくらい不運かというと、それはうまれたときからです。
男の子のおとうさんとおかあさんは、本当は女の子がほしかったんです。
それでも、せっかくさずかった命なのだからと、まずしいながらも愛情たっぷり。
毎日、ドジや不運ばかりの男の子を、だいじに育ててくれました。
けれど男の子は、やっぱりとても不運でした。
おりからの不景気で、おとうさんは会社をくびになってしまいます。
おかあさんも、大きな病気にかかってしまいます。
ついに男の子は、おやもとを離れることになってしまったのでした。
男の子は、ほんとうはかなしいきもちでした。
でも、おとうさんとおかあさんがげんきになるまで、それまではぼくもがんばらなくちゃ!
……と、えがおでおうちを出たのです。
左目の下、ふたつならんだちいさなほくろ。
これさえみれば、とうさんとかあさんは、おまえがわかるからね。
ぜったい、もういちど、三人いっしょにくらそうね。
そんな、なみだながらのことばをかたく、信じて。
* * * * *
そうして教会にあずけられた男の子でしたが、そこではおともだちができませんでした。
いったいだれが言ったのでしょう。
男の子は“やくびょうがみ”だとうわさされていたのです。
おべんきょうも、うんどうもにがてで、ご用を言いつけられてもしっぱいばかり。
そんな男の子を、みんながばかにします。
心のささえになってくれたのは、いつもやさしい神父さまと、
神父さまがかわいがっている、もふもふかわいいねこたちだけでした。
けれど、教会はあるひ、火事でやけてしまいます。
男の子は、ほかの子供たちと、だいすきなねこたちをにがし、
自分はけむりにまかれて、しんでしまったのです。
神父さまも、ねこたちも、ほかの子供たちもみんなぶじ。
ただひとり、不運な男の子だけが、しんでしまったのでした。
それでも、男の子のたましいはやすらかでした。
ああ、これで、らくになれる。
もう、しっぱいしなくってすむ。
だれにもばかになんてされないし、めいわくもかけないですむ。
やくびょうがみだなんてもいわれない。
おとうさんとおかあさんも、ぼくをしんぱいしないですむ。
こんなぼくだから、きっと天国へはいかれない。
でも、もしもつぎのいのちがあるならば、もふもふにかこまれて、ばかなしっぱいなんてしないで、みんなとなかよく、しあわせにいきていきたい。
……ううん、きっと、こんなかんがえもまちがいなんだろう。
かみさまどうか、ぼくのことはただ、ひかりのつゆとしてけしてください。
もう、あんなふうに、不運やばかなしっぱいで、かなしいきもちになるのは、いやです。
どうか、どうか、おねがいします。
男の子のたましいは、そんなふうにいのりましたが――
神さまからのおへんじは、まったく意外なものでした。
『ぼうや、泣くのはおよし。
ほんのみじかい人生だったけど、おまえはとても、とてもいいこだった。
だから、チャンスを上げよう。
おまえはこれから、3回まで生まれ変わることができる。
おまえの望むとおりの姿にね。
さあ、もういちど地上にいって、しあわせをさがしておいで』
えっ、かみさま、でもぼくは――
おどろいて声をあげましたが、そのときにはもう、男の子はうまれかわっていました。
もふもふまっ白いけがわに包まれた、人知を超えた知恵とちからをもつ、
まぼろしのドラゴン『モッフール』に。
男の子、あらためモッフールはさけびました。
「そっ、そーじゃな――いっ!!」