Episode4:質疑応答
【ワタデパート】
自分の開発プロジェクトの多くを担い、まずそれよりも若くしてこの大きなプロジェクト。リーダーに抜擢された小鳥遊という人物には、感情がないながらも興味を抱いた。
アザミ曰く、小鳥遊は男とも女ともつかない顔だちながらも美しく、技術があり、仕事をあっという間に終わらせるので、支持する声は多かった。ただし、性格の面倒くささ、人使いの粗さにおいても右に出るものはいなかったので、正直扱いに困っていたらしい。
「そういえば、搭載プログラムの名前の由来って知っていますか?」
「いや、そんなデータが私の中にはない。」
「戦闘にはあまり関係ないですしね…。ELSFY移住を半世紀前くらいに訴えていた団体のスローガンが基なんですよ。<We entrusred future to ELSFY>っていう。
「なぜそれを基に?」
「<AIは未来を担っていく>っていうメッセージだそうですよ。あのラボって昔から意外とロマンチスト…っていうか、そういうタイムカプセルみたいなことをしたがる人がいるんですよねー。」
「結局何を言いたいんだ。」
「あ!あぁ、ごめんなさい…。あの助けるのは博士を優先させてください。資料はどうにかできるかわかりませんが善処します。なので、どうかよろしくお願いします。」
当然だ。任務であり自分のシステムについて把握するよい機会だ。資料に関しては、おそらく小鳥遊がどうにかするだろうし、アザミに自分を託したのも信頼があってこそなのだろう。それだけ信頼されているのだから十分期待のできる人物だ。
ところで、自分のボディーとなった人間の家族は生きているのだろうか。家族だけではない。友人、恋人、仕事の関係者…それらにあったらどうすればよいのだろう。自分はまだそのデータを保持していないから対処しきれないはずだ。どこまでラボの人間が対応してくれるのかもわからない以上、どうすればよいものか。
「あの!最後に少しいいですか?」
「ああ。」
「これ、ELSFYにあるラボの住所です。シャトルセンターの近くにあります。」
「分かった。念のため受け取っておく。」」
この住所も自分のデータの中に保存しておく。
「あの、死なないでください。例え博士が救えなくても、自分の命を第一にしてください。貴方CW-79には未来とラボの思いがあるから…。」
「…了解。」
なぜ、自分を小鳥遊より優先しろというのか分からなかった。自分が人造人間だからだろうか。
次回『Episode5:私の思い』