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Until the end of life~転移傭兵と種族少女達の物語~  作者: I am Human
一章 ビースト(獣人)の国
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EP4 迷走、失踪


 今は考えても仕方ない、もうすぐウリフィアが戻ってきてしまう。急いで準備しないと。

 

 罪悪感はある、命の恩人に感謝せず勝手に出ていくのは心苦しいが今はこんな物騒な物を持っている己が安全だと言う確証はない、むしろ黒に近いグレーだ。

 拳銃を一丁抜き急いで黒い縦長のケースを閉じ、準備をする。

 リュックに畳まれた白のパーカーと着ているズボンを押し込み、代わりに入っていた迷彩服とキャプ、黒の迷彩柄のネックウォーマーに身をくるみホルスターを腰に巻き、拳銃を差す。

 

 準備はできた。しかしどう見ても不審者だな。

 

 大きな鏡に写った自分を見て苦笑するしかない。

 こんな格好してる時点でまともじゃない、誰かを傷つける前に出なければならない。

 重い鞄を持っているとは思えない動きで空いている窓から身を投げる。二階から躊躇なく飛び降り綺麗に一回転し着地する。

 

 全くどこで覚えたんだか...

 

 自分でさえ呆れてしまうほどに体が動く。

 そして久遠は夜の闇にその姿を消すのだった。

 


...To change...To change...To change

 

 久遠の巻いていた包帯を回収したフィアは部屋から出た後彼の体を拭くものを探しに一階まで降りてきていた。

 

 「しかし不思議なやつだ、最初は見たことのないフード付きの着物を着ている完全に怪しいやつだと思っていたが、命を掛けて私を守ったり、慰めたり綺麗だなんて...あいつは私をどう思っているのだろう...」

 

 自分の頬がほんのりと赤く染まっていくのを感じる、これが異性を好きと感じる感情なのだろうか。

 そんな感情をフィアは胸にそっとしまいこんだ。

 

 「今はこんなこと考えている場合じゃないな、色々不思議なことは多いが、久遠の記憶が少しずつ戻るのを気長に待つことにしよう。

 そうだ、お腹が空いているかもしれない、何か作るか!」

 

 そして彼女は調理場に足を運んだ。

 しかし彼女はこの少しの時間を後悔することをまだ知らない。

丁度この時久遠は出支度を進めていたのだから。

 

 「何を作ろう、嫌いな物は無いだろうか、アレルギーとか、聞いて来ればよかったな...」

 

 そう言いながら調理を開始する、なんだかんだあったがもう夜になっている、疲れていることを考慮して軽めの物を作る。

 すると何者かがドアを開く音が聞こえた。

 

 「お嬢様が料理をされているのを見るのは久しぶりでございますね、あの不思議な殿方にですか?」

 

 「キャシーナ」

 

 調理場に現れたのは、猫のすがたを模したような少女キャシーナ・フェーレース、ここの使用人兼護衛役である。ショートカットの黒い髪に黒を基調としたメイド服をまとったクールビューティのケットシーである。

 

 「そうよ、命の恩人だから、これく位では返し切れないけれど...」

 

 「本当にそれだけですか?」

 

 少し悪戯っぽい笑みを浮かべながら料理を着々と手際よく進めるフィアを見つめる。

 

 「ねぇ、キャシーナ。」

 

 「何でございますか?」

 

 料理の手を少し休めるとフィアはキャシーナの方を向き少し切なさが混じった笑顔を見せる。

 またキャシーナモそれに対して動じることなく優しく声を返す。まるで仲の良い姉妹のように。

 

 「これが恋なのだろうか...」

 

 「...二日前お嬢様が血相を欠いて私に助けを求めて来たときには正直驚いたものです。見に行ってみれば得体の知れない男が傷だらけで倒れていたのですから。」

 

 二日前のことを思い出す、使えている家の主人が服に血をべったりと付け血相を欠いて助けを求めて来たときは、ただ事出はないと思った。

 急いで見に行けば見たことのない服を着た少年が血まみれで横たわっていたのだから。

 

 「傷の手当てをしようとフードを取れば、見たことのない種族で見たことのない鞄や服、そうあの大きな鞄には何が入っていたのか、開けることは叶いませんでしたがかなり重かった記憶があります。

 おほん!話がだいぶそれてしまいましたね。

 彼を連れ帰ってからの二日間のお嬢様の様子を見守らせて頂きましたが、あれだけ男嫌いのお嬢様が献身的に身を寄せる程の殿方。きっと気づいていらっしゃると思いますが命の恩人、というだけではないと思いますよ?」

 

 

 フィアはけてし男性が嫌いな訳ではない、村の人たちとは普通に話せるしなんともない、ただ王都の一部の者が苦手であるというだけで。

 そして、久遠を好きだという気持ちは確信へと変わった。想いを伝えるのはまだ先になるだろうが少しだけ光が満ちた感覚だった。

 

 「ありがとう、キャシーナ少し道がわかったような気がする。」

 

 「お嬢様は控えめに言ってもお綺麗なので、あとは積極性だと思いますよ。

 お世継ぎを楽しみにしております」

 

 「そ、そういうのは段階をだな...」

 

 「段階を踏んで、なんです?」

 

 ゆでダコのようになったフィアをキャシーナはまた悪戯っぽく笑うと部屋を後にした。

 そしてできた料理を乗せフィアも久遠の元へ向かう。

 

 「久遠、食事を持ってきた。」

 

 ...

 

 「久遠?」

 

 扉を開け周りを見渡すと、服も鞄も無くなっていた、ベットは綺麗に整えられ。窓から風が入りカーテンを揺らす、まるでここにはもう居ないと言っているように。

 

 「そんな、何で」

 

 作った料理をテーブルに置くと急いで走る。満月で照らされる闇夜を裸足でフィアは掛けるのだった。

御布団様が体から離れない時期になりつつあります…

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