EP1.1 最悪な出会い「神獣の娘ウリフィア」
一話と同じ話のヒロインの視点、世界観を交えて表現した話です。
ルマニア、そこはビースト(獣人)という種族で構成される国、そんな国の少し田舎に面した屋敷の一角、眩しい朝日に照らされウリフィア・ルプスは目を覚ました。
長い艶やかな白銀が混じった茶色の髪と耳と尾っぽを持った少女である。
頭から出ているかわいらしい耳をヒコヒコと動かし、ふさふさの尻尾をピンッとたてながら大きく延びをする。
「うっ、ウーン」
いつも通りの朝、大きなあくびと共にベットから腰を上げて窓に向かう、窓を開けると心地のよい風が彼女の頬を撫でる。
「お嬢様、お早うございます。朝食の準備ができております」
自室の前で使用人の声がする。
「わかった!今いくわ。」
返事を返すと静かに階段を下りていく音が聞こえる。
「お母様は?」
「領主会議で朝早く首都に向かわれました」
ウリフィアはこの村の領主の娘でありビーストの中でも神獣人という希少な獣人である。
食事を済ませ日課である村の散策に向かう。
「フィアちゃん、おはよう!今日も綺麗だねー、今日も見廻りかい?」
「はい、いってきます」
「フィア姉ーおはよう!、今度俺にも稽古着けてくれよ!」
「おはよう、また今度ね」
近所のおばさんや小さな男の子、周りの村人は彼女のことをかなり慕っている、神獣人の中のウォーウルフという立場でありながら驕り高ぶらずよく村の人の手伝いなどをしている。
こじんまりとした落ち着きのある村ということもあって小さい頃からみんな家族のように育ててくれたからというのもあるだろう。
しばらく村の様子を見て回り、外れにある小高い丘に向かう、そこは今は亡き父とよく来た場所だった。近くの崖が崩れそうだからと村人は近寄らず、屋敷の使用人や母親にもきつく止められている。
「きっと、お母様にはばれてるんだろうな」
しかしもうこの日課を変えようとは思わなかった。
その時、丘に近づくといつもと違う臭いが鼻に付く、凄く嫌な予感がする。さらに近づくと一瞬何者かの気配がする、なぜかすぐに消えてしまったがそれがさらに不安を煽る。
「父上と植えたアルムの木、香りが強すぎてわからない、この近くなのは確かなのに、近づくとどうしてかき消されてしまう、こんな時に仇になってしまうなんて。」
昔、父と植えた香りの強いアルムの木、この木の香りが好きでこの木を植えたのだが、今はこの匂いが仇となってしまていた。
気のせいなのか?、一瞬気配はしたが今は全く感じ取れない、疲れているのかもしれない、帰って休もう
感覚が鋭い獣人にとって気配が関知できないことはほとんどない、気のせいだと帰ろうとしたその時だった。
バキッ、ドンッ!
幹が折れる音と共に何者かが地面に着地する。
見たことのない服装でフードを被っている。身長は175ほどあるだろうか。
直感で距離をとる、関知できなかった存在が急に現れた事に動揺が隠せない。
危険だ、そう体が伝えてくる。腰にある護身用のショートナイフに手を当てる。
「あなた何者?!」
緊張が張り積める...。
「...人違いです」
何が?!
必死で目の前の人物【声からして男だろう】の言っていることを理解しようとするが全く理解できない。もしかすると挑発されているのではないかと思えてくる。
「あなたが何者なのかわ知らない、でも、私を馬鹿にしているのだけはわかる」
自分の強さには自信があるウォーウルフということもあるが普段からだてに獣術の訓練をしているわけではない、殺さず後で尋問すればいい。腰を落とし戦闘体制にはいる。
すると驚くことに相手の様子が一変する。戦いに馴れているのか体を半身にし少し距離を置いてきた、さらに先ほどまで感じなかった恐怖心がわく。
足に少し力を入れモーションのないまま相手の目の前まで距離を積める、
この距離なら!
しかしフィアは目を疑った、確かに避けられない位置まで来てあとは伸ばした腕が相手に届くだけのはずだった、しかし目の前の男は焦ることなく伸びかかった腕を横から軽く押し軌道をそらす。
「まだっ!」
焦ったがカウンターなどの反撃はない、それにここで攻撃をやめることはできない確実に仕留めなければならない。
「はぁはぁ、あなた本当に何者なの?」
その後何度も仕掛けるが今度は触れることさえできなかった。
さらに精神は追い込まれる、昔の父がなくなった日のことを思い出す。
「俺は...」
すると不思議なことに男の体が止まり苦渋の顔を見せる。
何か仕掛けてくる、その態度さらに恐怖心を煽る。
今しかないもう大切な人を奪われる訳にはいかない!。
体の力をを解放する。
「やはり敵対者、本当はは戦技を対人として使うことは禁止されているのだが、緊急かつ特例としてあなたを殲滅する」
先程までとは格段に違うスピードで近づき渾身の力で蹴りを入れる。
轟音と共に男の体が飛び近くの崖にあたり崩れ落ちる。体が消し飛ぶほど威力を出したはずだがまだ存在がある。しかし上半身左側と右足は多量出血を起こし体は全く動かない。
「呆気なかったな、先の戦闘でてこずると思ったが...!」
崩れかけていた崖はついに悲鳴をあげた。
最近寒くなってきて風邪を引いてしまいましたが、編集頑張るどー(´д`|||)ゞ