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第六話:神様、こういう中継ぎ話作る時は(省略)で処理できねーかなーと何時も思う

前書きは特にありません

「まぁ、言いたい事はこっちも分かってるし

 どっちかというと、これは誤算の産物でもあるんで

 神様だって、元々は想定外だったんだよ」


「想定外?」


「これは昔からネタになってる

 『男女が一緒に冒険してんのに、長期冒険で何もおきねーとか

  男は玉無し、種無しなんかよネタ』って奴が元々の起源でな

 大雑把ファンタジー…

 例えばロー○ス島戦記ホニャララさん」


「ホニャララになってねーよww」


「まぁあれの、パーンさんは、あの年齢になっても

 ディードリットとハーフエルフ作れてねーって

 どういう事ですか?ツッコミってのが昔あってだな。

 それもスレインとレイリアは二人の間に、

 ニースを生んでいるんだから二代目ができねーほど

 時間が無かったは言い訳にならん以上

 あんな長年連れ添った、心を通わしている女相棒に

 手も出してネーとか、酷い朴念仁のパーンさんは、

 種無しか、それともハイエルフってそんなに不妊なんかいな

 って笑い話しがあってだな…

 大味なファンタジーは、主人公とヒロインの間に

 子供は出来てはいかんのだ! という呪いがあるんだネー

 って、笑うしかないわけだ。」

 

「はぁ…」


「しかし、ある程度のリアリズムを求めてしまうと

 ぶっちゃけ、夫婦状態同然の男女パーティが

 長年一緒に冒険してて、子供も出来んとか

 そんな事、ありえんだろ? という当然のツッコミもあってだな

 しかし、半面、物語的な都合として

 換えが効かんレベルに女冒険者が高レベルになってしまうと

 妊娠しちゃったんで10ヶ月お休みです

 とか言われると、冒険が崩壊するのも事実なわけだ。

 ディードリットがハーフエルフ妊娠中なんで

 ジンを召喚して戦うの無理デースとか言ったら

 あんな高レベル冒険のクエストは、根本的に崩壊すっからな…」


「そりゃそうだろうけどなww」


「冒険系で、それもレベルアップ性質が伴う話で

 男女パーティーってのは、常にこの

 リアリズムを求めたら冒険崩壊

 ナァナァにしたら、主人公は鈍感系超朴念仁で

 見てる方がイライラするってジレンマを抱えてしまってな、

 それのカウンター法の1つで、今回、導入してみたんが

 中々妊娠なんかしねーんだよ! って逃げ口上だったわけよ」


「物語での男女パーティー都合での設定だったんかい、これww」


「そそ、元々は、ヒロインとネンゴロになっても

 そこあんまり心配しなくてもいいよ状態を作る為に

 入れただけの設定なんで、

 この設定、それ以外に今の所は深い意味は無いんよ。

 なんか後で屁理屈つけてもええんやけどな…」


「そういう目的だけの設定なんかww」


「いや、物語進行には、それだけでも重要なんやで!

 ところがね…副産物的な効果で

 男女比1:99の世界で、更にそれもあるとなると

 人間の動き方がより異世界な状態になってな…

 まぁ、現実に数学的に考えていけば

 1:99の比率でしか生まれない時点で、

 人類は自然全滅するだろうっていう

 これだけで、かなり無茶な設定なのに

 更に子供産むのさえ、時間がかかり過ぎるとかあったら

 どー考えても、この人類、全滅するしかねーだろーって思うんだけど…

 その分、人口維持の為に、人類の生活スタイルが

 よりハードになって、俺達のストライクゾーンから

 圧倒的におかしな所にストライクゾーンが生まれるナァと

 考えてたら思ってサー

 それはそれで面白いナーって思ったんで

 だから、これで通す事にしたんよ…」


「面白さ優先www」


「まー、物語なんてネー、作ってる側が面白くなけりゃ

 モチベ維持は絶対にできねぇ事だからネェwww」


「いやでも、今の所、ヒロイン、読者的には

 ビッチにしか見えないと思うんですが

 それでいいんですか?」


「そこん所が、我々の常識限界って奴なんで

 当面は、アホチョロインのビッチ娘って思われても

 しゃーねーかねー

 この世界感なら、この娘、相当身持ちが堅い方になって

 ただ、デレたら、オルコッ党の党首並に

 脳味噌ピンクになる、惚れた相手デレデレ系って事なんだけど

 俺が急いでるのも重なって、

 一日で嫁になるような、アホ娘化させたのは事実だしの…」


「突貫工事的な面で、態度が加速したというわけか」


「そこら辺がねー、サジ加減の判定で難しいんよねー

 まだ出てきてねー奴等や、

 この世界感から考察できるシーンを思えば、

 お前ってキャラが棚牡丹なのは事実だし

 これを逃して次があるとか、考える方が無理だからの…

 出会って、自分の味方になってくれると確信できれば

 即嫁になるだろうなーってのは思うんで

 一日でこうなるのも、納得できるんだけどねー」


「そこら辺は、先々、進めればやがては納得できると?」


「多分ねー、ただ、もっと輪郭が見えてしまう

 『街』編には、直ぐには行けない、キャラの行動論的にも

 行かないってのがあるんで、当分は

 溜めの駄話というか、準備話というか、

 それしないとってのがあってなー」


「夫婦の営みは、超速で起きたのに

 それ以外は、時間的な『間』を取るんかよww」


「ま、そこら辺の詳しい事は、むしろ物語のキャラと

 会話してから知ってくれい。

 ミスティーナの今の立場なら、

 お前をゲットしたこの状況では街に帰れん。

 そこら辺の所以は、物語の中で知って欲しいのだよもん」


「はーー、壮絶な玩具になってるのー俺…

 いきなり、ヒロインが嫁になったとか、

 この高速感は、普通じゃねーですよ?」


「まー、俺の作品は、

 超速でヒロインから嫁になる奴ばっかりだけどなww」


-------------------------------------------------------


なんだろう、この気持ちの悪さ…。

昨日の、あの散々な俺の無様な様を見て、

彼女が「プゲラw」になるのが当たり前だと思っていたのに…

それはやむを得ないだろうと思っていたのに…


もう顔緩みまくりのデレデレ状態で

おっぱいむぎゅーっと背中に押しつけられて

嬉しそうにされてる、不思議な光景を見ると

この状況は男として嬉しいとか、

普通の反応が全くできなくなる…


自分で言うのもアレだが、あそこまで無様なアレなら

引かれるのが当然だと思うのだが?


いや、まぁ互いに初めてなんで、

向こうも向こうで手際よくとかそんな訳なくて

互いにすっげーグダグダだったけれども

グダグダの酷さ的には、俺の方が圧倒的に上だったんで

俺に引かれるのが普通だと思うのだが…。


何故、こんな頬が緩みまくりで嬉しそうなんだ

このチョロインさんは…。


「えっと、あの…

 自分で言うのも何ですけど…

 あんなに無様な姿を見せて、嫌われるどころか

 すっげー、喜ばれてる感じに思えるんですけど…

 気のせいなんですかね?」


俺は、あまりにあまりのギャップに

自分からいうのもアレな事を思わず口にしてしまった。


「???嫌う??

 何で?

 お互い、初めて同士、見事に無様だったんだし

 そこはお互い様じゃない…

 それよりは、ここから始まるんだと思うと

 なんだか妙に嬉しくって」


とか言いながら、またおっぱいをむぎゅーっと押しつけて

背中抱きつきしてくる。

え?このチョロイン、何言ってるん?


「おーけー、互いに無様でイーブンだったと

 心広く受け止めて貰えるんなら、こっちも救われますが…

 しかし、これから始まるんで嬉しいって、どういう事ですか?」


と、俺は彼女の異世界言語がわからず、思わずそれを聞く。


「そりゃ、だって、これでようやく

 王族だってのに、奇特な神装擬態の継承子作りも始めずに

 戦闘ばっかり参加してるアベンジャーみたいな女がっ!

 って陰口叩かれずに済むし

 亡国の姫なんだから、えり好みしてるんじゃないわよ!

 とか陰口叩かれずに済むし…

 他にも、ウチの国はお父さんが、

 王都から領民を逃がす時間を稼ぐ為に

 神装擬態使って、王都防衛の戦いに出ちゃって

 そこで戦死したんで

 代々、引き継いできたシルベリアス王家の

 王族男子の神装擬態を失ってしまったわけで…

 これから王族級神装擬態持ってる男の人と出会うなんて

 もう絶対に不可能な状態だったんだし

 そんな、どん底の状態だったのに

 天から、信じられない奇跡が降ってきたのよ!

 王族級神装擬態を遙かに越えてる、

 どう考えてもおかしい神装擬態持ってる男の人と

 夫婦になれたとか、

 嬉しいに決まってるでしょ!

 多少の無様なんか、これからの楽しみへの

 エッセンスでしかないわよ…

 そんな人が、22歳まで女を知らないとか

 冗談みたいな話なんだもん!

 なんか、逆にウットリしちゃうわよ…」


とか、スゲー返事が返ってくる。

うわー、なんか彼女は彼女で、彼女の世界で色々抱えてるんだー

言葉の意味はよーわからんけど…

かなり今の立場が針のむしろ状態なんだーー。


という事は、その何気ない台詞で分かったが

しかし、そこでグダグダになるのがむしろ

ウットリするとか、どういう事やねん!?


「えーっと、記憶喪失って設定なんで

 そこら辺の所、もうちょっと分かり易く

 説明いただけると…

 大変ありがたいのですが…

 まー、もう記憶喪失とか無理のある事言わずに

 実は、俺、君の言葉通りの異世界からの転生者で

 神様から君を助ける為に遣わされたんだ…

 とか、こっちの事情言っても、どうせ信じてくれないだろうし…」


と、俺は、そもそも隠す必要なんかあるか?と思いだして

ぶっちゃけな話も混ぜて聞いてみた。


「うーん、その言葉

 それは流石にって思うのだけど…

 貴方の在りえなさを考えると、

 その説明の方が、まだ納得できるのが苦しいのよね…

 貴方がこの世界の男だったら

 貴方の存在を説明できないんだもの…

 どこで生まれて、どうやって生きてきたのか…

 それも22年も、この世界で野良で…」


「うお?じゃぁ信じてくれる!?」


「半分くらいなら、今では信じてもいいわ…

 貴方の異質さを思えば、その言葉通りじゃないと

 今までの違和感が説明できないんだもの…

 いきなり、男女1:1だろ?とか言ってくる、

 素っ頓狂な発想をする人なんだし

 記憶喪失でも、それは無いでしょう…って所だからね…」


「おおお、そういう所がもう既に異世界言語になってんのか…

 そうか…発想の段階でギャップがあるから

 自然に思える言葉が、壊れ言葉になるのか…

 お互いに…」


と、彼女の適当な感じで口にしていた言葉に

互いに「???」になる根源を見つけた様な気がした。


「まー、だからって、異世界から男の人がやってきました

 私を救いに神から遣わされました…

 なんて話を、まともに信じろって言われても無理よ…」


と彼女は笑う。


「どうして?」


俺は率直に問い返す。


「だって、もし本当なら、私、幸せすぎるじゃない?

 どうして私なの?

 この世界には、私よりもまだ遙かに不幸な人が居るってのに

 私だけ助けてくれるとか、神様、贔屓のし過ぎでしょ?

 それこそ、北の軍事大国の誘拐されて奴隷状態の男の人の方が

 遙かに不幸なんでしょうから…

 世界不幸順位なんてモノがあるなら、せいぜい中ぐらいの私に

 何を思ったのか、最高レベルの幸福を与えてくれるのなら

 この世界の神様は、エコヒイキが酷すぎるって事じゃない?」


俺の質問に彼女はそう言って難しそうに笑う。


ああ、そっかー。

神様が全知全能で全てを愛している存在なら

世界の苦悩を救うっていうんなら、全部救わないと、

贔屓以外の何物でもないもんな…


そう考えたら、何で私だけ? って信じる事も出来なくなるか…。


それはそうですよねー

神様が世界を創造し、それを愛し、全知全能だったらば…。


でも、まー相手が邪神様だったら、

邪神様の依怙贔屓が起きてるんですって、それだけなんですけどね。


(そうよw)


っぐっ!! こいつは…。


「だから、半分って所…

 異世界から貴方が来た男の人って話は

 そっちの方が、記憶喪失って言われるよりも

 納得出来るけど、何故私が一番幸せになるような

 そんな都合がいい事を神様がしてくれるのか?ってのは

 納得出来ない。

 でも、貴方が異世界から来た男の人で

 この世界の事が何も分からない状態だって話なのなら…

 もうちょっとこの世界の常識を伝えない事には

 ありとあらゆる事が、危ないでしょうね…」


と彼女は、微妙な所で彼女の理解の落とし所をつけた。

ふむ、今は半分ぐらいでもいいか。

もう、記憶喪失で通すのは無理がありすぎるんだから

「この世界を知らない」という観点で

重要情報を情報提供していただけるのなら、より有り難い。


「とりあえず、何から聞きたい?

 貴方が異世界人的に、

 この世界がよく分からないって所として」


「何からかー」


と、意識の乖離が、ようやくマシになった所で

いざ、常識の何を知りたいと聞かれると、それはそれで困るな。

そもそも、世界常識が無いから聞きたいのであって

話の肴が最初にないのに、聞くことを聞かれるのも困る。


「まー、まずは近々に分からない事からにしようか…

 この世界をまだ全然見回してないのに

 何を聞きたいって言われても、難しいし

 だったら、そのー

 いやー、俺的にはトラウマレベルなんで

 昨日のあの無様さが、逆にウットリするって

 君のその神経は、何処から来るのか知りたい」


と、俺はまずは完全に崩壊した男の尊厳を

最低レベルで回収したいと思い、話の続きでそれを聞いた。


「うーん、逆に私には分からないんだけど…

 どうしてそういう質問になるのかが…

 いや、女の私がウットリするってだけなんで

 異世界人ではない、この世界の男の人が

 今の状況にウットリするかは…確かに分からないけれど…」


と、難しい答えを返す彼女。


「男の方は分からないって事か…

 でもなら、この世界の女の人は、

 グダグダな最初にウットリするモノなん?

 誰でもそうなの?

 俺の世界では、そんな事は無い話なんで…」


彼女の言葉に頭をかきながら、俺はそう言ってみる。


「ふーむ…この世界の女の誰でもがウットリするか…

 って聞かれたら、それは何とも言えないわね…

 私ってば、みんなに言われるように夢見がちのお姫様だから

 リアリストな人達が同じなのかは保証できないし…

 でも、贅沢じゃない?

 最初から、何もかも上手くいかないで

 互いに手探りで頑張っていくなんて話」


「贅沢??」


「だって、普通なら、

 『男子11歳にて精通起きしモノなら

  速やかに性教育の手練れ女が、女の扱い教えるべしって』

 一般市民と交わる前に、女の扱いあれこれ仕込まれるのよ?

 一般市民に初めてお披露目される男の人なんか、

 もうその段階で、女に子供を仕込む手練れよ?

 じゃなかったら、昨日の私達みたいに、

 凄いグダグダで無様な事になるじゃない…」


「は?」


その時、俺は、俺の心臓が嫌な音を立ててドクンと鳴った。


「でもサー…

 まぁ私は、私と一緒に戦ってくれて

 女嫌いじゃないブレイカー系の人、なんて

 都合の良い男の人に出会いたかったから

 ってのもあるけれど…

 それを差し引いても、子供作る為だけに

 心が仏の様な、全て私に任せなさい的な男の人を見ると

 そこに愛が無いのは寂しいなって…

 贅沢な事を思う女でありまして……」


と彼女はコツンと自分の頭を叩く。


「え?じゃぁ何?

 この世界の男は、生まれた時から

 街に囲われて、性教育受けて、

 女の扱いが凄く上手いテクニシャンに強制的にされるの!?」


俺は、この世界の「男」の扱いの「常識」に

ようやく触れて違和感の大元を垣間見た気がした。


「そうよ…

 それがクリエイター系の男の人…

 歳を取るほどに、どんどん目が魚の腐った様な目になっていく

 なんというか…

 私的には可哀相に思える人達…」


「!!」


その言葉を聞いて、俺の背筋に冷たいモノが走った。


そうか!

この世界の「男」は、生まれたその時から社会拘束されるのか!!

男というただそれだけの1点で、社会から束縛されるのだ!

人口比1:99なんて極端な比率だと、そうなってしまうのか!!

俺は彼女のその言葉で、完全に盲点だった

この社会感的に自然な動きというのをそこで理解した。


「だからね…

 こうやって、たった二人だけで

 右も左もわかんなくって、毎日苦労しながら

 少しずつ歩み寄れていけるんだ、これから…って思うと…

 素敵じゃない?

 最初から何もかも完璧な男の人に任せっきりで

 子作りに慣れていくのと…

 なんだか二人で苦労しながら、一緒に発見していくの…

 どっちが愛があるだろうって思うと…

 私は後者かなぁって…」


そう言って彼女は、はにかむ。


あ、ヤバイ…


なんか、俺、ヤバイ…。


この笑顔と言葉に、俺ヤバイ…。


神様がこの子はこの世界では

身持ちが堅い方って言ってたのこういう事か!!


きっとこの子は「この世界では異端」の部類なんだ…。

俺達の世界ではギリギリ、取れる心の球を投げてくれるけど

この球の投げ方ですら、この世界では異端の部類なんだ…。


愛があるか無いかで愚図る女は、きっとこの世界では異端なんだ…。


逆に言えば、まだ見た事の無い、この世界の「街」って…

男女人口比1:99になるこの世界を維持する為に

物凄く、俺達の世界からは子作りにシステマチックになってる

正に「異世界」なんだ…。


多分…「街」は愛が無い世界なんだ…。


それが当たり前だから、心が通うかどうかだけで

ウットリする様な神経になるんだ…。


それが彼女の言葉の片鱗で感じられ、俺はゾッとした。


ここは「異世界」だ。


俺の価値観が何も通用しない…異世界なんだ…。


それを俺はこの時、ようやく認識する事が出来た。





とまぁ、世界常識の勉強も必要ですねって事にはなったけど

それはそれ、この様な敵地でのほほんとし続けるわけにもいかぬと

最低限のフォローが必要だ、と彼女は言い出し

俺の神装擬態の能力を借りたいと言ってきた。


よーわからんが、ここは言われるままにしよう…。

何より、成り行きが強引すぎたとはいえ、もう俺の嫁だ…

つか、俺が婿の方が言い回し的に正しいか…。


ともあれ、昨日の無様でしたけど

素晴らしい美少女との御馳走様を思えば

幾らでも手を貸しましょうとも。

そこは、ヘタレな男ですから!


「長距離暗号通信…展開…」


と彼女は俺の擬態のパワーアンプを使って

何やら通信を始めた様だった。

っていうか、通信の時点で、魔法っていうより科学ですよね…。

魔法も突きつめたら、SF科学と同じカー。


『姫様!連絡が無かったから心配しておりましたよ!

 深くに偵察に出ずに、直ぐに帰ってくるのでは無かったのですか?』


そこで、誰か知らない女の人の声が響いた。


「御免なさい、ミリット。

 ちょっとアクシデントがあってね…

 でも無事は無事よ。証明の為にバイタルデーターも送るけど

 何処も怪我なんてしてないわ…

 ただ、面白い事に出会ってね…

 数日は、まだ我が故国の索敵を続けるから

 そう、オキュルトス王国の軍の方には伝えておいてくれない?」


と彼女の返信。


おっと、新しい国の名前が出てきましたぞ?


『姫様っ!オキュルトスにとっても姫様は大事な戦力。

 それに我々の難民受け入れは、

 過分に姫様の存在あっての事なのです…

 その要の姫様を失ったら、オキュルトスとしても

 シルベリアスの民の保護は、難色を示しましょうぞ…』


と、あっち側の言葉。

うわ…なんか彼女の立ち位置、無茶苦茶難儀そう…

よーわからん会話のハズなのに、断片だけで深刻さが分かった。


「アイネイア王女は、そこまで懐の狭い方ではないわ…

 求められていた以上の働きを報告すれば

 多少の予定変化は不問にしてくれるでしょうし

 それに、私の身のことは心配しないでも大丈夫…

 思わぬ事が起きて、そうそう死なない状態になったんで

 このチャンスに、色々と…ね…

 じゃぁ、定時にこうやって連絡するので

 そういう事で…」


と彼女はそう言って通信を切った。


「といった感じなんですが…」


と可愛く舌を出すミスティ。


『あー、自国の難民を隣国に保護して貰ってる代わりに

 ミスティは隣国の遊兵として働いてるって理解でいい?』


と、俺は昨日までの会話も含めて、

彼女の置かれてる漠然とした立場を確認してみた。


「そういう事…

 隣国に身を寄せている亡国の姫としては

 肩身の狭い立場でね…

 特に王族系の神装擬態は重要戦力なんで、

 そこが交渉材料にもなるわけで…」


とミスティは肩を落とす。


あー、この子、健気系なんだー。

野良ってる男見て即惚れせにゃならんほど

切羽詰まってる状況なんだー。

あーやべー、これだけで、嫁への愛が溢れてきたわー。


『しかし、話の内容から思うに

 街には帰還しないとマズイんじゃないの?

 君自身が、交渉材料って言うのなら…』


と、難民を背中に背負って自分の身で交渉してるのなら

交渉の中心が長期不在は苦しいだろう事を指摘する。


「貴方が居なかったら、今日にでも帰るつもりだったんだけどね…

 貴方という素晴らしいお宝を、何も策も立てずに

 ホイホイ隣国に持ち帰れるほど、王族はアホじゃいられないのよ」


その俺の言葉に、呆れかえるミスティ。


なんとー!?

俺という存在がポイントだったんかー!


「この世界の共通ルール…

 と言いたいけど、北の狂信国家があるんじゃ

 それも微妙なんだけど…

 一応の共通ルールでは、男宝は分かち合い…

 なのだけれども…

 貴方みたいな宝を、ホイホイ気前よく分かち合ってたら

 王国同士の交渉なんてやってられないのでしてね…

 隠し通せるかどうかはともかく、

 常識もよく分かってない貴方と

 あまりにも異質なその神装擬態があると

 色々と調べてから、方向性を決めないと

 駄目よねって私の都合…」


『男宝は分かち合い…ですか?』


と俺は、微妙な言葉に反応する。

ミスティの心配している事が、俺にも漠然と分かった。

こんな俺みたいな奇特なのが、突然街にでも現れようモノなら

すっげーシステマティックな女の人達が

万歳特攻してくるような事が起きるのではないか?


あるいは、拘束の為に捕縛戦闘か?


怖いぞ、そんな光景…。


「ともかく、昨日以上に、貴方の擬態を調べさせて…

 それと出来れば、貴方を鍛えたい…

 いくら男の神装擬態が強くても、

 マナ枯渇やら、色んな捕縛方法論と

 数の暴力の前には、1人では無力だからね…」


『なるほど、女の人に武力を持ってでも

 求められるわけか…今の俺は…』


そりゃ、なんて素晴らしいハーレム状態…


…なわけあるか!!

武器持って襲いかかって取り押さえられるハーレムなんか

全力で願い下げだよ!!


「うーん、コネクトに慣れてきたんで

 貴方の擬態の性能も見れそう…

 まずはスキルレベル…

 って、何これ!?

 無いか、ほとんどレベル1!?

 本当に子供と同じじゃない!!!

 嘘でしょう!? ここまで形になってる神装擬態が

 この能力でレベル1なんて、どういう事なの!?

 だったら、鍛えたらもっと強くなるの、これ!?」


と、彼女の方が俺の擬態がレベル1なのを確認してくれた。


まー多分、チート設定なんで、

鍛えたら天井知らずに強くなったりするんじゃないですかね?

鍛えたら…


「うん? 索敵能力レベル1があるじゃない…

 これなら、周囲に何か居る程度の事、分かるハズなんだけど?」


と、彼女は俺の空っぽに近いスキルの中で

目に付いたスキルを指差す。


『ああ、それねー

 昨日ミスティが索敵とかしてたじゃない?

 それしてたら、こっちにスキルが増えた…

 昨日発生したばっかりのスキルなんよ…

 どーも、この擬態、他人が媒介利用してスキル使ってても

 能力が上がるみたい…

 だから、ミスティに索敵沢山して貰ったら

 レベル2になるのかなーって俺も実験して貰いたかった』


と、ボンヤリと語る俺。


「は!?何ですって!?

 他人がコネクトでの貸与起動してスキルを使ったら

 そのスキルが伸びていくですって!?」


そんな俺の言葉に、物凄い顔になるミスティ。


『いや、よーわからんから、

 それを確認して欲しいってのが本音なんですけど…』


と俺は返す。

その言葉に眉をひそめるミスティ。


「女同士のコネクトでは、そんな事起きないのに…

 男の神装擬態とコネクトした時だけ起きる特有の現象?

 だとしたら、それは凄い発見なんだけど…」


とミスティは物凄い形相になった。


むー俺はこっちの世界にきたばかりだし

このロボットの事も、よーわかってないしなー。


「ん?何このスキル…

 同期共鳴成長レベル1,血の契約レベル1…」


と、そこで、すっからかんの俺のスキルの中で

異彩を放つ2つのスキルを見つけてミスティの視線が止まる。


「スキル説明を要求…

 同期共鳴成長:

 神装擬態同士が許可し合った特別同期の契約下において

 スキルを使い、スキル成長をした場合、

 互いの神装擬態にレベルアップが施される。

 貸与反動成長の、この擬態のデフォルト能力に対し

 契約を交わした相手側の神装擬態も強化成長が起きるのが

 異なる点。自分も味方も強化するスキル…

 って、どうぅぇぇぇぇぇぇ!!?」


スキル説明を読んでいたミスティが、

読み終わった後にその内容を理解して奇声を上げた。


「ちょっと待って、デフォルト能力、貸与反動成長って

 どんなスキルなのよ!?

 説明!

 貸与反動成長:

 この擬態固有能力。この擬態とコネクトして

 他の神装擬態のスキルを使った場合、

 その使用スキルを経験として学習する能力。

 他者と連結共闘するほど、性能が上がるスキル。

 って、何この反則なデフォルト固有能力っ!!

 んでもって、上位能力にあたる

 同期共鳴成長は、自分だけが強化されるんじゃなくって

 共闘した神装擬態の方も成長するですって!?

 ナニソレ!?」


と彼女は絶叫する。


『あのーすいません…自分の機体の事なんですが

 俺にはさっぱりよくわからないんで

 どういう事なんでしょうか?』


悶絶してるビキニアーマーの美少女を見ているのは

目の抱擁にもなるし楽しいが、まったく分からん事で

慌てられると、困るのは困る。


「ああっええっと!

 貴方の擬態は、レベル1だろうがトンデモ無い代物って事よ!

 まず、最初の特徴は、

 貴方の擬態固有の、貴方の擬態にしか無い能力で

 貴方が言ったとおりに、この擬態に連結して

 私なりが能力を使いまくると、そのままってわけじゃないけれど

 使われたスキルを取得していくって事…

 私の索敵スキルがレベル8だから、

 全取得なら突然レベル8になるハズだけど、

 レベル1しか発生してないから、少しずつ自動学習していくって

 そういう固有能力みたいね…

 でも、私とかが貴方の擬態を媒介に使用すれば、

 貴方の擬態がどんどんスキルを増やしていけるんだから

 能力取得の修行時間を短縮してくれる、恐ろしい固有スキルよ…」


『ほう…』


おお、神様、妙な能力で設定しやがったな…。

他人の能力を吸っていく系のスキルか。

でも使用頻度の量でスキルレベルアップが進むんで

全取りじゃないと…。

ツエーけど、理不尽過ぎるわけでもないと…。


「これだけの能力でも、世界中の国から

 王族神装擬態として欲しがられる性質なのに、

 貴方の擬態には、その上位能力があるのよ!」


そこでミスティは驚いているんだか嬉しいんだか

どっちなのかわからない、破顔しまくった表情をした。


「固有能力の更に上位能力は、

 神装擬態が特殊同期で特殊契約を交わした両者のみ

 この擬態、あるいは、まぁこの場合は私の擬態?

 そのどっちかがスキルアップを連結動作ですると

 互いの擬態に、オプションが発生するっていう

 同時擬態成長するって、能力!!」


『あん?』


「つまり!貴方と私が連結共闘したら

 私達、どっちもの神装擬態がパワーアップする能力よ!」


『ほわぁぁぁぁ!!

 何ですかその、強烈なスキルは!!』


「こっちが聞きたいわよ!!」


あまりにも頓狂な自分の擬態の性能を教えられ

共闘前提で強くなるというシステムに閉口する俺。


え?神様、何でこんな性能入れた?

何企んでやがりますか?


「うーん、特殊契約してる擬態のみって条件があるんだけど

 その契約リストに既に私の名前が登録されてるのよねー

 そんなのいつやったのかしら…」


と彼女は今度は、自分の擬態のパラメーターチェックを始める。


「あら?

 …私の擬態のスキルにも、同期共鳴成長のスキルと

 あ、こっちもあるんだ、血の契約…スキルが登録されてる…

 いつの間に?

 というか、この血の契約ってどんなスキルなの…

 参照…

 ヒ・ミ・ツ。

 血の契約を結んだモノ同士が行える擬態最終奥義。

 って、なんじゃそりゃー!!!

 スキル内容、ヒミツって初めて見たわよ!!」


とか、ヒロインにあるまじき悪態をつくミスティ。

いや、うん、あのアホ神のする事なんで

驚くには値しないが、能力参照、ヒミツって

それはなかろうて…

ミスティの様に激高するのが当然だ。


しかし俺はボタンを押さない。


こういう程度はきっと、応答拒否されると見きった。


(その通り)


ちっ…


どーも、神は俺の擬態だけはチート能力にしてくれたらしい。

ただし、修行前提で、共闘する事も必要条件として…。

このヒロインさんと、二人三脚してると強くなるロボットかー。

ほー、奇妙なロボットを作りやがって…。



後書きも特にありません

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