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第四話:神様だって本当はこの設定は嫌だったりする

前書きは特にありません

ミスティがとっさに思いついた『感覚共有』の魔法での

神装擬態のデバイス接続。

基本的には、女軍勢の集団戦で

多数を指揮する時に使う戦法であって、

レベルの低い味方勢の攻撃や回避の精度を上げる

オーソドックスな行動だそうだが、

男の神装擬態に対してこれをするのは、初めての事らしく

意外な発見があったそうだ。


つか、男の神装擬態とデバイス接続するのって初めてなんだ…。


え?どういう事?

って聞くと、ブレイカー系の男達は

『大きな戦』にしか参戦せずに、

挙げ句にそれを何処から聞いて来たのかも不明で

突然、参戦してきて

女側が立てた作戦を、時には台無しにする様な動きで

好き勝手に戦うらしい。


だから、『この様な形での共闘』には、ならんらしい。


まぁそれでも、ブレイカー系の男が参戦する戦いでは

だいたいが勝利か、あるいは撤退戦にしても被害最小で終わるので

作戦が台無しになっても不問にしているそうな。


何より、戦が終わるとブレイカー達は脱兎の様に逃げ出すので

文句の言いようも、戦闘中に罵声を上げるしかないとの事。


何でそんなに非協力的なん?

って追加で質問すると、

ブレイカー系の男でも、事情が、個々に違うらしく

『女嫌いの所以』が、それぞれに違うので

ひとくくりの理由では無いらしい。


ただ、それよりかは、『アイツ等を警戒してるのが最大の理由かも』

とミスティは口を濁した。


なんか、あんまり積極的に話したくない事があるらしい。


そんな事言われて引きを作られたら、こっち、逆に気になるやん!

こんな異質な世界で情報を漏らしてたら、

どんな事になるかわからんのに!


でも、そこは「まだ」話させないで欲しいそうな。

ミスティ的にも、胸くそが悪くなる話だそうで…。


ほう…それは、厄介そうだ…。


むしろ是非、早く聞きたいものだが。


ともあれ、今まで戦場では出会っても、長々と話したことも無く

脱兎の様に逃げ出すブレイカー系の男の様な俺と

その神装擬態に、こうも長時間アクセスできるというのは

極めて稀を更に稀にした所で、


ミスティの神装擬態の能力をこっちの擬態にエンチャントできるのなら

その逆も出来るのでは? とミスティは言いだし、

試しに、違った連結実験をやっている。


それは今の感覚同期の逆バーション。


ミスティーの周囲知覚のセンサーを、

こっちの擬態のマナを大量に集める性能を使って

効果範囲を拡大する、という実験だ。


要するに、俺の神装擬態をパワーブーストにして

索敵能力を上げることが出来るかどうかって実験。


なかなか、この子、戦闘に関しては頭がクルクル回るのな…

いきなり嫁になりたがる、貞操観念的にはアホの娘なのに…。


「索敵波動…試験展開…

 パルス探針波、発振…」


と彼女が呟くと、同期している俺のアンプリファークリスタルが光って

周囲から、なにか光の様なモノを集めている。

ああ、これがマナを集めるって奴なのかな?


「凄いわ…私の小さなアンプリファークリスタルでは

 探知不能だった範囲が、マナが大量にあるおかけで

 信じられない範囲で、見える…」


と彼女がそう言うと、彼女は手から、

ホログラフィの平面映像を映しては、地形俯瞰図を展開した。

んでもって、多分、敵なんだろー、赤いマークが、

その地形のいろいろな所に映っている。


「まぁ、逆探されないように、パルス時間を絞ったんで

 今見えているのは、大物とか基地的な大雑把なモノだけど

 それでも、斥候として索敵に出てる私としては

 これだけの情報が分かれば、求められた以上の仕事は出来たわね…

 ちょっと追加で、もう一つ、させて…」


と、彼女がここに何の目的で来ているのか

という情報を知れたと同時に、彼女は別の事を試験しようとした。


『まー、ただ俺は棒立ちしてるだけだし

 必要な事なら、どうぞどうぞ…

 そっちの方が良く分かってるだろうから

 マナ枯渇なんて事もしないんでしょ?』


と俺は生返事する。

少なくとも、俺は目の前で見せられた地形情報と敵の分布に

閉口してしまっているので、専門的な事は任せる事にした。


だって、なんか赤いマークの点、多いんだもん…。


あれ全部敵かよ…大物か基地的な…。


最初の球ポリゴンの様なええ加減な奴でさえ、この量なら面倒やわ。


「じゃぁ愛しの旦那様のお言葉に甘えて…

 広帯域擬装索敵波動…展開…

 探針…発振…」


と、またそう言うと、俺のアンプリファークリスタルが輝く。


「ふむ…私達が野宿できる範囲程度の索敵で良かったのだけど…

 その10倍の範囲まで見えたなんて、恐ろしいわね…

 レベル1の神装擬態でさえ、男と女の擬態連結が出来たら

 ここまで能力が変わるの?

 なんだか、私、今、凄い事を大発見したんじゃないかしら…」


と、独り言の様な事を言う。

で、言葉の内容からするに、これからの野宿で

周囲に危険な敵が、近々に居ないかを調べてたらしい。

なんで、前のと別なのにしたのかは、よーわからんが

まぁ、必要なんだろう、そういう事が…。


とかボンヤリ思っていたら。


(チャラララッ、チャッチャ~♪

 バウト君の神装擬態は、索敵能力レベル1を覚えた!)

とかいう、なんかどこぞのゲームのBGMと同時に

そんなメッセージが脳内に響く。


俺は思わずボタンを押しそうになった。


(いやだから、この程度の事でボタン押すな!

 能力レベルアップのメッセージサービスだろうが!)


とか向こうの方から先にコメントが。


(このBGMにイラッと来たんですが…)


と心の中で返す。


(ゲームニートの君、分かり易いチョイスにしたのに…)


(あ、俺、格ゲー派なんで…)


(さいですか)


そんな、アレとのやり取り。

ボタン押さなくても、こういう所では会話が成立するのが怖いな。


まぁともかく、これが、使い続けたら自動レベルアップする

神装擬態の能力って奴か…。

なるほど…。

それも、他の人が共用で使っても能力が上がるとな…。

じゃ、ミスティに索敵で、このロボット使わせまくったら

自動的に索敵能力が、どんどん上がっていくって事か?

それなら、楽だな…。


でも個別スキルアップなんだ。

その系統を鍛えたら、その系統が伸びるって方向性か。

分かり易いけど、一括で能力全般が上がるわけでもないってのは

ちょっと面倒か?


(ええい、ゆとり世代が!)


(うるさいよ!)


とまぁ、そんな感じで、レベルアップの形態もわかり

夜も拭けてきたんで、周囲に早々に危険が無いと分かったんで

野宿することになった。


が…


まぁ、ミスティが携帯してた小箱が

キーワードと共に展開して四人用ぐらいのテントになるのは

魔法が技術化した世界なら、あっても不思議では無いのだろう。


テントがあそこまで小さくなるのは、流石に驚きだが

自動化が俺達の地球の世界よりも、

遙かに発展してるこっちの世界なら、

全自動のアイテムが沢山あるのは、そういうモノかと慣れるしかない。


どこぞの漫画の、ホイ○イカプセルの様に

カプセル投げたら、一戸建て住宅が展開されるよりは

まだ、この光景の方が現実感はあるか?


だから、野宿がファンタジー世界みたいに

寝袋1つとか、殺伐としたモノになるわけではない

のは喜ばしいんだけども…


えーっとミスティさん?


「あのー、俺に抱きついてガタガタ震えてる

 この光景って、どういう事なんですか?」


と、言葉通りの今の状況に閉口する。

ビキニつーか水着か下着姿に近い女の子に全力で抱きつかれて、

おっぱいとか密着とか、すっごく素晴らしいんですけど、

サービスとか愛情表現とか、そういう方向性じゃなく

ただ、ミスティが抱きついてきて震えている姿という

違和感の方がきつかったんで、

冷静になってしまってそれを尋ねる。


「だってしょうがないじゃない!!

 今は食料確保に、神装擬態を狩猟モードで

 私の体から離しているのよ!!

 無防備の丸腰なのよ!!

 敵が周囲に居ないのは分かって居るけど、

 自分の神装擬態が自分の直ぐ側に無いってのは

 本能的な恐怖なのよ!!」


と、そういえばビキニアーマー系のあれが無くなって

ぶっちゃけビキニ姿のそれで抱きつかれている

今の状況に、アーマーの方が何してるのか理解した。


あー、神装擬態って、そういう便利な事も

オートでやってくれんのねー。


「いやいや、それなら、今までの野宿はどうしてたん…

 食料を擬態が取ってくるまで、

 キャンプ拠点でいつも震えてたわけ?」


と、すっごく震えている彼女に、普段もこうなのかと尋ねる。


「いつもなら、一人なんだから

 狩猟も擬態装備して、自分でやってたわよ!」


とその質問の答え。


「え?だったら、今日もそうすればいいじゃん…」


と、素朴な疑問を口にすると。


「私がここを離れている間に、貴方がどっかにトンズラしたら

 私は天からの贈り物を全損する事になるのよ!!

 側に居ないと、不安で仕方ないじゃない!!」


と、凄い返事が返ってきた。


「ちょっと待て、

 なんで俺がいきなりトンズラするという発想になるんだ…」


俺はミスティの素っ頓狂な言葉に呆れるしかなかった。


「まぁ世界の常識をまるっきり忘れれる

 凄い記憶喪失の貴方なら、そういう事は無いかなーって

 頭の中では思えるけど!!

 貴方みたいに、ブレイカー系の目をする人を前にして

 トンズラされないって思える方が、私的にはどうかしてるわよ!」


と、その俺の言葉にミスティが応える。


「え!? 俺がブレイカー系の目をする人!?

 ブレイカー系の人って、俺みたいに目が虚ろな人なん!?

 それも、ブレイカー系の人だったら、

 女の子が側に居たら、即、トンズラするん!?

 なんなん、そいつ等! おかしいレベルの女嫌いやろ!」


「目が虚ろ?

 いえ? 凄く生き生きして輝いてる目の事よ…

 今の貴方の様な…

 ブレイカー系の男の人は、みんな目がそんな風に生き生きしてるの!

 というか本当に貴方の記憶喪失って凄いわね…

 もう記憶喪失とかいうレベルじゃなくて、

 異世界の人みたい!」


とか、そんな返事を聞いてドキリとする。

俺の目が、生き生きしてる!? 

ヒキニートのゲームオタクで目が死んでる俺が!?

つか、どういう事!?

それで、俺が異世界転生だってストライクを

感じてしまう違和感ってどういう事!?


「す、すまん…

 記憶喪失なんで、常識がさっぱりわからんのだ…

 ブレイカー系の人は、俺の様に目が、生き生き? してて

 でも女嫌いで、一緒にいるとトンズラするって!?

 そんな面白い男達なの!?」


と、俺はなんかよくわからんブレイカー系の男という奴の

人間性について尋ねてみる。


「…面白い?

 記憶喪失の貴方には、それが面白いと思えるのね…

 私は、女だけど、彼等の気持ちが分からなくもないから

 面白いとか、そうじゃなくて

 それも仕方ないかなぁって思うだけだけど?」


とミスティは俺との感覚の齟齬を口にする。

ああ、こういう所かー。

こういう所が俺が異世界人間の雰囲気が出てるんだ…。

女側から見ても仕方ないかなぁと思える何かが

女嫌いになる常識的な部分なのか…。

つーっても、そんな得体の知れない

ブレイカー系の人の態度を演技できるわけもなし…

こんな美少女ビキニが側に居て、

心、ときめかないアホな男が居るわけもなし。


今の「近い近い!」の弱い拒絶は、

俺が女の子に免疫が無い故であって

女嫌いとかそういうのとは全然違うしな!


こういうのもきっと違和感なんだろうけど…。


つー事は、ブレイカー系の人は、全力ガチ逃げするって感じ?

うぉう、わからねー、ブレイカー系の男の神経…。


「分かる範囲でいいんだけど、

 ブレーカー系の男の奴って、どうして女嫌いなのか

 教えてくれね?

 そこら辺がよくわかんねーんで…」


と、俺はきっと違和感バリバリなのだろうけれど

先々に抑えておかないとマズイだろう知識を彼女に教授願う。


その質問にやはり彼女も眉をひそめるのだが…

仕方ないなーとばかりに口を開いた。


「私は女なんだから、彼等の本当の所がどうなのかは

 やっぱり分からないわよ?

 ただ、傾向として、ブレイカー系の人達も、

 大雑把には3つのタイプがあると思えるわ…」


と彼女は言う。


ほう、ブレイカー系の分類でも更に、3分類とな。


「1つは…オールダー系…

 この人達は…えっと、その…

 長年、クリエイター系の男の人をやってきて、そのー

 高齢で…枯れる?…らしいんだけど…

 もう子供作るの無理って、なっちゃったお爺さん達で

 そんなお爺さんになった人達が

 この歳になったらクリエイター系辞めてもいいでしょ?って

 寿命の最後は、戦って死にたいって街を出て行っちゃう人々なの…

 この人達は、女嫌いっていうより、飽きたって感じかな…

 街の人も子供作れない老人に様は無いわって感じで

 簡単に放流するし…

 だから、オールダーの人達は、

 比較的に私達の事は大事にはしてくれるのよ…

 自分の子供達だからって…

 ブレーカー系の人々でも一番共闘できる人達かな…

 戦闘中にポックリ逝く事も多々だけど…」


「爺さん達かよ!!」


「簡単に言えば、そう」


「ああ、なるほど、それはー、そうかもねー」


「そうなのよ…」


俺は、散々人生子作りさせられて、弾が出なくなった老人が

最後に一花咲かせようかと、出て行った集団だと理解して

見た事も無いのに、何か尊敬の念を抱いてしまった。

熱いナー、その爺さん達…。


「で、2つめは…アベンジャー系…かな?

 今は、私も似たような立場だし…

 アベンジャー系は、女でも男でもどっちでも『成る』系統ね…

 アベンジャー系の男版…って所かしら?

 私が、アベンジャー系の女版って事なのかもしれないけれど…」


と2つめの分類を語る彼女。


「アベンジャー?ミスティも同じ?それは?」


と言葉の意味を尋ねる。


「まぁ、復讐者よ…

 街や国を魔装擬態に襲われて、自分達の愛する人々を殺されて

 魔装擬態に復讐を誓って、戦い続けるようになった人達…

 その男版が、ブレイカー系の分類アベンジャー

 貴方も、言葉の物言いからすれば、ここの分類になるのかしら?

 見も知らない国の人々の亡骸を見て、

 女が大量に殺されてるなら許せないって、激高してくれるような

 心の広いアベンジャーってのも珍しいと思うんだけど…」


とそう言って、その分類の特徴を語るミスティ。


「ああ、なるほど。

 この力を使って魔装擬態を潰そうと考える復讐者系ね…

 それは、普通に理解できるけど…

 それがどうして、女嫌いに?」


と、自分の中で、一番しっくりくる存在が

女嫌いになってしまう理由が見つからなくて首を捻る。


「うーん、彼等も、オールダーと同じく

 極端な女嫌いってわけじゃないんだけど…

 他所の国の女に積極的に手を貸してやる義務は無いって

 そういう感じかな…

 愛情の裏返しというか…

 滅んだ自分の国と、殺された自分の周囲の女性を

 ずっと愛しているからこそ…

 他所の国に編入されて、

 そこでクリエイターになるのを良しとしないという感じの…

 この世界は、男の人が野良ってるのなら

 是非ともウチの国に来て下さいって、

 勧誘するのが当たり前だから…

 それに迎合するのが嫌な人が、アベンジャー系になるの」


と彼女は、アベンジャー系の人間の心理感を

彼女の憶測も含めてそう説明してくれた。


「ああー、あーー

 他所の国で子作りする奴になるんなら

 愛した者を殺した化け物をぶっ壊してやるって

 そういう方向に走っちゃう人か…

 それはー、でも、わかるけどなー」


と、オールダーと同じ様に、これも納得できそうな感情の男達に、

むしろ言われるように、一番感情的には、俺のそれに近い感情の

男達に、近親感を覚える。

というか、女嫌いというよりは、好きだった人達を忘れられない的な

そういう意味での女嫌いって事かな?


それは、分かる様な分からん様な、微妙な所だ。


「そうなのよ…

 私も国を滅ぼされて、立場的には同じだから

 アベンジャー系の人達の気持ちは分かるのよねー

 だから、何とも言い難い心境というか…」


と彼女は溜息をついた。

ふむ、そりゃ、王国のトップの王族で生き残りなら

女の人でもアベンジャーになるしかないし、

神装擬態なんて、十分な戦力が在れば、出来てしまうんだから

同じと言えば、同じ立ち位置って事か…


「ふむ…でも、そういう人達なら

 共闘は不可能じゃない様にも思えるんだけど?

 別に、女が絶対に嫌いって、そういう事じゃないんでしょ?」


と俺は、なんで「女嫌いなんで作戦を合わせるレベルでの手を貸さない」

という奇妙な状態になるのか、首を捻った。


「そりゃ、オールダーもアベンジャーも、ブレイカー系の

 主流では無いからよ…

 三種類ある分類の中で、オールダーとアベンジャーの比率は

 足してブレイカー全体の50%に、なるかならないかよ?

 最後の一派が、半分を占めているから、

 共闘が根本的に難しくなるのよ…」


と、そう言って彼女は物凄い溜息を付いた。


「ん?最後の一派が50%の最大勢力?

 じゃぁ、3つめの派閥って、どういう奴等なのさ?」


「えーっと…」


それを聞いた時、難しそうな顔で口籠もるミスティ。


「えーっと…『ホモ系』…よ…」


少し逡巡した後に、仕方ないとばかりに口を開く彼女。


「は?何だって?」


そこで俺は、よく分からない単語が彼女から出たような気がして

鈍感系ラノベ主人公の口癖的テンプラを思わず口にした。


「だからその…ホモ…な男の人達よ…」


俺のある一種意地悪な二度聞きに、

ウンザリした表情になってそう答えるミスティ。


「ホ、ホモ?

 ホモって…えーっと、アレですか?

 男と男じゃないと愛し合えないとかいう、

 あの…不思議な…アレですか?」


俺は、俺の世界での認識であるホモが、

こっちの世界と同じなのかも含めて彼女に言葉の意味を確かめる。


「全く、貴方は記憶喪失って言うワリには

 変な事だけはしっかり覚えているのね…

 訳が分からないわ…

 でも、まぁ、そうよ…

 ホモ一派…それがブレイカー系の最大勢力…

 男同士じゃないと、愛し合えない…とか

 訳の分からない事を叫んでは、女なんぞ大嫌いっだ、近寄るな!

 って、話し合いにもならない集団よ…

 ちなみに、ブレイカー系ってのも大くくりであって、

 オールダー系とアベンジャー系は互いに交流があるけど

 ホモ系とは対立してるって、内部対立してるらしいわ…

 でも、戦場ではそれが一斉に、()いする事になるんで

 共闘が至難になるという所かしらね…」


と彼女は深い溜息をついて、そう語った。


「ホワァァァ!?

 ホモォォォォ!?!?

 ブレイカーの大半は、フォモォォォ!?

 何で!? どうして!?

 何がなかしゅーて、こんな世界で、男同士のケツの穴を求める

 そんな奴等が戦闘集団の大半になるの!?」


俺は彼女の衝撃的な言葉に、激高するしかなかった。

いやそうだろう?そうじゃないか?

こんな美少女がスプラッタされる世界で、

化け物絶対殺す集団は、ホモの集まりだって!?

そんなの理解できるわけがなかった。


「そんな事、女の私に聞かないでよ!!

 私が男の貴方に、それを聞きたいぐらいなんだから!!

 どういう精神状態になったら、

 男同士で愛し合うとか、子供さえ残さない

 非生産的な精神構造になっちゃうのよ!!

 それも戦闘大好き、戦場では好き勝手にぶっ壊しますって

 一番、私達の作戦連携を乱す集団なんだから

 滅茶苦茶迷惑してるんだから!」


と、俺の激高に激高で返してくるミスティ。


いや、彼女の言葉は最もですね。

彼女の方が疑問に思うのは当然です。

でも、俺だって疑問でしかないわ。


俺は即座に『神様とちょっと相談タイムボタン』を押した。


------------------------------------------------------


「いや、分かるけどな…

 ここでそのボタンを押してくるのはな…

 でも、ここはちょっと流して欲しい所なんだよ…

 街のシーン描写が無いのに、先にこの情報出したって

 意味不明なのは当然なんだからな…

 だから本当はこの段階では情報出したくなかったけど

 会話の流れ的に、ここで説明で不思議じゃないから

 しゃーねーから出したんだし。

 本心的には、この集団は作中には出したくは無いんだから!!

 まぁ、もう説明で出した以上、出さないわけにはいかんように

 なったわけですけど!! 。・゜・(ノД`)・゜・。」


「いやいや、マジでわかんねーんですけど!!」


「わかんねーんなら、話の方の進行に従ってくれ。

 理論逆算的に、街での男の状態の描写を考えた時に

 そういう奴が出るだろうなーって事で出来てる設定なんで

 街に行かない限り、所以の説明もできんし!」


「えええええええええええ

 なんかなー、納得できませんなー

 まー、神様がそういうなら、しゃーねーかー」


---------------------------------------------------------


そして時は動き出す。

そんな風に、ブレイカー系の男達の

大雑把な説明を聞いた直ぐの事だった。


「ようやく、夕食の材料を擬態が取ってきたようね…

 ふぅ…擬態とこれだけ離れるなんて、

 今まで無かったんで

 生きた心地がしなかったわ…」


と、彼女はお使いから帰ってきた

犬っぽい形状に変形している彼女の擬態に手をやって

安堵の声を漏らした。


犬形状のそれは、今日の食事の哀れな動物達を

咥えている様な感じでいる。


うう、動物さん達すんません。

飢餓には、この世界の人も異世界人の俺も敵わないんで

その命、せめて美味しく頂かせて貰います…。


と、これらか胃袋に入るそれらに、心の中でそう呟く俺。


「ちょっと待ってて…

 まぁ味の方は保証しないけれど、

 これで夕食を作るから…」


とミスティは言うと、擬態を変形させて、

今度は調理師の様な形に変形させる。


「料理…もできるんだ…」


と、俺。


「うーん、まぁね…

 ただ、私は王族だったんで、一年前までは

 調理系のスキルを上げる事さえして来なかったんで

 今のレンジャー生活になってから

 やむなく覚えだしたレベルなんで…

 味の方に期待されても…という感じで…」


そう言って彼女は恥ずかしそうに頭をかく。


俺の聞いた意図は二重の問いが重なっていたんだけど

うーん、そういう言い回しの答えから、

どーもこの世界は、料理も、擬態が全部やって

本人はそれの監督的な感じになるらしい…。


なるほど、万能機械か…


こういうのを見せられると、万能機械というのもよく分かる。

ただ、男の方の奴では、ここまで汎用的に使えないんだろうけど…。


つー事は、男の方のはより戦闘特化って事か…。

デカイってのは純粋にパワーはあるけど、

細やかな事が圧倒的に苦手って事だし。

男の神装擬態は生活感からすると、尖ってる形態なんだなー。


で擬態が、人間バリに苦労して夕食を作るのを二人で眺めながら

そうやく出来上がった夕食が俺達の前に出てくる。


「あ、味は…期待しないでよね!!

 栄養失調にならない食事が出来ればいいかって

 その程度しか、1年の修行じゃ出来なかったんだから!

 これでも、最初の絶望的な出来よりは

 食べれるようになったんだし!

 それに今の遊撃レンジャー兵みたいな生活になる前までは

 王族なんて、お付きの給仕が食事を作るのが当たり前で

 料理技能を鍛える必要も無かったんだし…」


と、微妙な感じで、食べれそうだけど上手そうには見えない

目の前の二人の食事を前に、やや赤面しているミスティ。


「こんなわけわからん世界に放り出されて

 飢餓でのたれ死にしないだけでも、有り難いと思うよミスティ。

 俺なんか、調理能力ゼロなんだし

 君が居ないと、ここで死んでるだろうしね…」


と、俺は、自分でも料理がヘタクソな事を自覚して

コンプレックス持ちまくりの彼女に、慰めの言葉を送り

同時に言葉通りの

現実的に贅沢言ってられない今の状況を口にする。


食えるだけで今の状況はありがたいのだ。

ビバ女の子!

ヒキニートの俺に料理など出来るわけがなかろーが!

コンビニとレンジの無い世界など、生きていけるわけもない!


と、彼女以上に卑屈になりながら「いただきまーす」と言って

彼女が作ってくれた料理を口にする。


「う゛…」


これは…

彼女の言葉通り…食えない事も無いが、上手いわけでもない。

これを食べれば餓死は逃れられるだろうが、

人間の情感に、味覚で何か訴えかけるかと言えば

それは絶対に無いという、そんな味だ。


あえて言うなら、旨みが少し落ちた

カロリーメイトみたいなそんな感じか?


旨み成分をなんとか作ろうという意志だけは伝わってくる

微妙に健気な面もあるといった感じ。


「美味しく無いって、素直に言ってくれて良いわよ…

 街での給仕系の神装擬態を鍛えている女性の料理とは

 雲泥の差だって、私だって分かっているんだから…

 私自身、これを美味しいと言える度胸なんて無いし…

 男は胃袋で捕まえるモノとは良く言ったモノだわ…

 料理が上手い女の子の方が、男様に愛でられるのも

 自分がもし男だったら、納得は出来るし…」


と憮然とした表情になって、自作の料理を難しそうな顔で食べる彼女。

ほう…その格言は、この世界でも同じなのか…。

そういう所に妙に感心してしまう俺。


すっげー異世界ダナーとは思っていたけれど

俺達と同じ所は、同じなんだと分かると、ちょっとだけ安心する。


「まぁ、国土回復の戦いで

 これから、長々とおつきあいになるらしいんで

 今はこれでもいいんじゃない?

 食べるだけなら、

 確かに言われるように、これで十分だし…

 少なくとも、俺は料理その物が出来ないんだし

 誰かに作って貰って、食べるモノがあるだけで、

 命を助けられた事になるからね…

 これ以上、贅沢言ったら、罰が当たるよ…

 それに神装擬態のチートな性能を思えば

 料理を続ければ続ける程、上手くなっていくんだろ?

 なら、これが、これから一緒に暮らしていけば、

 どんどん上手くなっていくとしたら

 それはそれで、楽しみだって思えるじゃない…」


と、自分で勝手に自虐してる彼女に

俺が出来る精一杯の気の効いた台詞を口にしてみた。


まぁ、食べたら吐き出す様なトンデモじゃないんだし

コンビニ料理に慣れている俺としては、

コンビニ料理まではあと少しって所でもあるんで

ここまで修行された女子力の方に感動する所であって

それも、修行を続ければ、もっと上手くは成るんだろうから

絶望する所では無いと思えた。


そんな思いで言った何気ない言葉だった。


「………」


そんな言葉にポカンとする彼女。


「え?俺、また何か変な事言った?」


そんな自分的には無難な台詞にした言葉に

ポカンとしてるミスティを見て、

また何か異世界語を口にしてしまったのかと、

今の言葉の落ち度を考える俺。


「いや、えっと…

 男の人に…そういう風に言って貰えるのって

 なんだかちょっと嬉しくって…

 こんな料理、街の男様に出したら

 周りが『姫様でも流石にこれは失礼ですよ!』って

 皿を取り巻きに代えられるレベルだから…ね…

 給仕一筋の特化系には絶対に敵わないのは…

 分かって居るけれど…

 でも、私の料理を、そう言ってくれるのは…

 正直に嬉しい…

 変な感じ…

 記憶喪失だからそうなのだって、

 頭では納得できるのに、

 むしろ、異世界の男の人に…出会っている…みたいな?」


と言って彼女ははにかむ。


そんな彼女の言葉に、今の自分の台詞が

異世界言語になってしまっている事を伝えられ呆然と成る俺。


つか、この世界の男の状態って、どういう状況なんよ!?

えええええええ!?


そんな、今の無難に行ったハズの台詞で

物凄く嬉しそうな顔になられると、俺、キョドるしかないやん!


戦う事を選んだ男の大半はホモになるだとか、

これだけで、凄く嬉しいとか、どういう事なん!?


この世界の男って、どういう存在感なのよ!?


と、彼女の思わぬ反応と、

何気ない感じで言った言葉が、異世界転生語になってる

この状況に、俺はやっぱり呆然となるしかなかった。


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