10-2
隙間に投稿!
「サクラ様、今日は窓からのお越しではないのですね」
「城へ来る用事が別にありましたので」
「まあ! どの様なご用事だったのですか?」
レンドルフ王からの依頼を了承した私はクルル姫に会うべく、彼女の執務室へとやって来ました。
クルル姫の執務室はレンドルフ王のとは違い私室を兼ねているようで、安定のピンクな世界。
可愛い系の調度品や休憩の為の大きなソファーなど、元々の私室を移築したかのような部屋でした。
ただし外交のトップとしての任があるので資料を収める棚や壁に大きな地図、本棚なども設置。
ちゃんとお仕事もしているようで執務机の上には何やら書類が置いてあり、筆記用具と印、ティーカップと茶菓子がセットになっておりました。
何だかアース世界のOLさんみたいです。
「あ、サクラ様を何時までも立たせているなんて失礼ね。どうぞ、お座りになって」
「お呼ばれしますね」
私とクルル姫がソファーに座ると専属侍女さんたちが紅茶を用意してくれ、私が会いに来ると何時もこうなる布陣、クルル姫の後ろに専属侍女長のフェンネルさんが立って他の2人が壁際に控える、になりました。
「ありがとうございます、フェンネルさん、アンジェさん、エレーナさん」
いつも通りの鉄面皮で会釈するフェンネルさんは所作が美しく鮮麗された動きを見せるメイドさんです。
メイドさんといっても戦闘が出来るメイドさんで、彼女の職業はバトルメイドという使用人職でも上位に位置するものです。
職業的なランクでいえば私が就いているメイド長と同じで、暗器が使えて近接戦闘が得意な職業というラノベにありがちな職業だったりします。
フェンネルさんは暗器を使うよりも体術、主に打撃系統のグラップラーで、女性特有の柔軟性と軽さを活かしたスピードタイプです。
でも手数ではなく急所を狙う一撃必殺なので、って何故私は何時も他人の事を説明する時に戦闘力に関して話をしちゃうのでしょうか。
フェンネルさんの魅力は20代後半なのに20代前半に見える美貌とスタイルの良さ、ニコリともしない鉄面皮ですが厳しい、あれ?
これを聞くと誉めてないどころか悪口になりますけど、彼女は実は甘い物が大好きで口にすると蕩ける笑みを見せてくれるなどなどとても魅力的なおねぇさんです。
性格は真面目で厳しく、声もそれに伴って硬いですからちょっと損をしている可愛い人、それがフェンネルさんです。
これが彼女の情報だったのですが、レンドルフ王の執務室からここまで案内してくれた案内役の文官さんから追加情報が得られました。
此度の大改革でクルル姫が外交官トップで交渉担当に就任したのを期に彼女も外交官に就き、レンドルフ王から伯爵位を叙勲したそうです。
今までは王城従事隊と王族隠密部隊に所属していたのですが、正式にクルル姫専属護衛として近衛騎士団に転属。
人数は少ないですがクルル姫専属近衛部隊の隊長、そして外交官な侍女長という奇妙な存在がフェンネルさんです。
なお、クルル姫専属侍女であるアンジェさんとエレーナさんも所属部署の変更があり、王城従事隊ではなく近衛騎士団所属となっています。
大改革で従事隊自体の区分けが変わったからという理由のようですが、フェンネルさんのように王族専属の側仕えは護衛も兼ねるべきという事のようですね。
なのでアンジェさんもエレーナさんもフェンネルさんから体術の訓練を受けているとか。
アンジェさんは腕が太くなったと嘆き、エレーナさんは痩せたと喜び、2人の反応は正反対です。
クルル姫との雑談の中でそんな会話になったのでそんな話も聞けました。
あ、この2人の事ももう少し。
アンジェさんは王都の上位貴族の令嬢で、花嫁修業がてらに自らの意志で王城従事隊に所属。
なので礼儀作法は完璧なのだそうですが、ちょっとツンとした所があるけど基本優しい性格で、フェンネルさんに憧れているので所作や口調を真似ているそうですよ。
エレーナさんは同じく王都の貴族、でも下級である男爵家の令嬢だから礼儀作法はちょっとなので、甘い物を食べてクルル姫の前でも表情を崩すからフェンネルさんによく怒られてます。
実家の意向で仕方なく王城従事隊に所属したけどフェンネルさんの抜擢によりクルル姫専属に成れたからとても感謝しているそうです。
フェンネルさんが2人を選んだ理由が何となく解ってしまう人物紹介でした。
「まあ、ダンジョンに! お怪我はされなかったのですか?」
「一緒に戦った仲間が優秀でしたから大した怪我は。それに魔法ですぐに治せますから」
「サクラ様は魔術師ですものね。あ、それで城への登城の用向きはどのような事だったのですか?」
「それが、クルル姫が今度外遊に出られるとか。それで護衛を」
「まあ! 一緒に行って頂けるのですね!」
確かにその通りですが、私の話を遮ってはフェンネルさんに怒られちゃいますよ?
「姫様」
ほら、やっぱり。
「ネル、聞いたわよね? ソーサリアンへの旅にサクラ様もご一緒してくれるのですって! とっても楽しみだわ」
ある意味やっぱりです、クルル姫。
そしてフェンネルさんも仕方がないみたいな反応、分かり難いですがそんな反応するのもやっぱりです。
フェンネルさんはクルル姫だけには甘いですから。
「サクラ様、よろしくお願いしますね」
「はい、こちらこそ」
美少女なクルル姫が満面な笑みを浮かべてそう言われたら、多分誰も断れないです。
レンドルフ王と話し合いをしなくても結局同行する事になっていたのでは?
そう考えても仕方がないと思います、きゅぃー。
そうそう、クルル姫を訪ねたのは何も交流を深める為だけじゃなく、ソーサリアン魔法王国外遊の確認をしたかったからです。
メンバーはクルル姫、侍女としてアンジェさんとエレーナさん、外交官が2名、従事者が2名、御者が4名、護衛の騎士がフェンネルさんを含めて11名の計22人です。
外交官に関しては1名はベテランの男性で、もう1名は新人の女性。
従事者は御者や騎士たちの世話役で、御者が4名なのは交代要員も必要だから。
護衛の騎士たちは全員近衛騎士団に所属しているクルル姫専属で、フェンネルさんが隊長を務める部隊だそうです。
移動は基本馬車になり、クルル姫専用の6人乗りの大型1台、4人乗りの中型1台、荷馬車1台の計3台で、フェンネルさん以外の騎士たちは全員騎馬での移動です。
進路予定は宿場町を2つ挟んでコンテラクト王国西方のブルボン侯爵領都と王国最西の町フォレを1泊ずつ。
その後は小国である都市国家を2つほど通過して、中央地域でも西方にあるソーサリアン魔法王国領内の宿場町で宿泊、ソーサリアン魔法王国までは8日間の予定です。
これはあくまでも順調に進んだ場合の予定であり、何かしらのトラブルがあった場合を見越して先方には8日から10日の日程で伝えているそうです。
そして現地の予定ですが、初日はソーサリアン国王との謁見と歓迎の晩餐会を予定。
2日目からソーサリアン魔法王国王立魔法学校の見学でを予定。
3日目からは王立技術研究所、魔法道具製造工場などを見学に3日間を予定し、1日休息日を挟んで最終日は国王との謁見のみとなっているそうです。
帰路に付いては行路と逆転させるだけですから、まあ、そう言う事です。
「以上が今回の外遊スケジュールとなっております」
「なるほど、ありがとうございます」
ソーサリアン魔法王国に到着してからのスケジュールで謁見と晩餐会は嫌ですけど、それ以外は興味深々です。
魔法学校とかテンプレですけどどういうものか興味が尽きませんし、魔法道具の作成現場が見れるとか楽しみです。
ただ、正直移動に掛かる日数が永過ぎるのが面倒だなぁ、と思います。
アース世界と違って主な交通手段が馬車ですし、仕方がないとはいえ掛かり過ぎです。
街道はある程度整備されていますから時速10km前後として朝から晩まで休憩を何度か挟んで大体8時間移動ですから80kmぐらいかな。
定期便などの馬車ならもう少し早いでしょうが、大国の王女を乗せた馬車だからゆっくり目でしょうし、これぐらいかと。
地図で見ると宿場町や都市との間隔は大体馬車で1日の計算で作られているようですしね。
そう考えると大国と称されるコンテラクト王国でも馬車で10日前後で横断出来ちゃうんですね、思ったより小さいです。
多分前世での私の出身国である日本と同じぐらいの面積しかないのではないでしょうか?
あれ?
もしかしてファンタジア世界って結構小さい?
「外遊メンバーとの顔合わせは事前に出来ますか?」
「可能です。そうですね、明日にでも時間を取りましょう。姫様、宜しいですか?」
「そうね、サクラ様が一緒に行ってくれるのを伝えないといけないわ。お願いね、ネル」
「畏まりました。なお出発は3日後となりますのでよろしくお願いします、サクラ様」
「きゅぃー!?」
出発日が目前過ぎですきゅぃー!
その日は話だけ聞いて王城を下城、孤児院まで戻りました。
クルル姫から泊って行って欲しいとお願いされましたがあまりにも急な事だったので今回はお断りです。
だって下手したら次孤児院に訪れるのが1ヶ月後とかになりそうですし。
王城に行くと言って出て1ヶ月も来訪がなかったらジュリアナさんたちも心配しますからね。
「と、いう事で帰ってきました」
「そういう事で王城へね。しかしクルル姫が外国へか。この間までお披露目もされてなかったのがなぁ、大丈夫なのか?」
ジュリアナさんの言いたい事は分かります。
おそらく皆が考える事だと思いますし、心配ですよね、我儘姫と言われていた王女様なのですから。
コンテラクト王国の恥になって戦争に発展しないかと。
「でも、クルル姫は会えば誰でも好きになるタイプの人ですから大丈夫だと思いますよ」
「サクラがそう言うならそうなんだろうけどよ」
「それよりも随行の文官や護衛の騎士たちの方が問題になりそうな気がしますね」
「どうしてだ?」
何せ近年、コンテラクト王国は鎖国とはいかなくてもそれに近いぐらいに他国との外交をしていませんでしたし、文官が上手く対応できるとは思えません。
外交ってお互いの力関係や情勢、情況でやり方が変わりますから外交慣れしていないと厳しいと思います。
私が初めて王城へ登城した時の対応を見る限り、大国という上から目線で交渉とかしちゃいそうです。
そして護衛の騎士が近衛騎士ですから同じようなものじゃないかなぁ、と思ってます。
「なるほどなぁ。私は外国に行った事がないから分からないが、ソーサリアンって実力主義なんだろ、たしか?」
「そう聞いてます」
「種族や生れに関係なく魔法や技術を持った者が上に立つ国と、人間で血筋だけが優遇されてきたうちじゃあ、厳しそうだ」
「クルル姫の人当たりの良さ、人誑しの能力に賭けるしかないと思いますよ」
「以前のリックだったら丁度良かったのかもな」
リックって誰でしたっけ?
ああ、あの主人公モドキからクズに転職した弟さんでしたね、確か。
どうもアレから荒れまくっていたようで、等々第三騎士団からも除隊処分となり、北の侯爵領軍に転属となったそうです。
それからどうなったか一切連絡がないし、情報が入ってこないから生死すら不明だとか。
まあ、あの人の事はどうでも良いですか、終わった事ですし。
「あ、そうだ。どうも周辺国家への街道で野盗が増えているらしいから気を付けた方が良いぞ」
「社会情勢がそれだけ悪化しているのですか?」
「んー、中央地域の幾つかの国で揉め事が起きてるらしい。この間サクラが居たリファールでも王族が兄妹で殺害未遂の大事件があったそうだしな」
あ、それ私が関わった王選での事件ですね。
リファール王国はあの後すぐに出ちゃってどうなったかは聞いてませんが、王子が奴隷となるようですし、確かに悪化していると言えるかな?
「それにこの国も宰相以下結構な数の貴族が処分される改革があったし、悪化してると言えばしてるのかな」
私が関わっている事が多過ぎな件について。
何だか私が不幸を呼び寄せているとか、まるでどこかの少年探偵くんみたいに行く場所全てで事件が起きるとか言いませんよね?
ちょっと心当たりがあり過ぎて、否定できないところが悲し過ぎますきゅぃー!
気が動転して噛みました、すみません。
「騎士団も大分人数が減ったって話だから国内の治安維持に無理があるんだろうな。冒険者ギルドに顔を出した時にシャーリーがぼやいてたぞ」
「受付嬢であるシャーリーさんがですか。もしかして護衛依頼や野盗討伐依頼が急増しているのですか?」
「そうみたいだな。でもこの間までリファールに冒険者たちが結構流れててまだ戻って来てないから人手が足りないんだと」
「どこも人手不足で大変ですね」
「そうなんだよ、この孤児院だって」
そこからはジュリアナさんによる孤児院が今どれだけ大変かという愚痴大会へと発展し、寝るのが遅くなっちゃいました。
孤児院を運営しているのがジュリアナさんとシスターさんの2人だけで、後は未成年者だけ。
しかもシスターさんは足腰が弱っているから無理はできない。
自分で連れて来てるとはいえ子供も増えたし、見てあげなきゃいけない子の数の割に世話係の人数がジュリアナさんだけだから足りない、と。
確かに大変かもしれません。
でも、大丈夫じゃないでしょうか。
孤児院の子供たちって皆良い子だし、賢いし、しっかりしてますからね。
だから無理しない程度に頑張ってくださいね、アナ先生。
お読みくださってありがとうございました。
な、何とか書いたぞー!
誤字脱字が心配ですが、見直す時間が・・・きゅぃー!?




