1-5
ある程度書けたので投稿します。
本日は2話分、1-5~1-6です。
おはようございます、魔法幼女ならぬ魔法幼生体サクラです。
光魔法に続いて風魔法も使えるようになったのでちょっと調子に乗ってみました。
昨日と違い爽やかな朝日で目覚めた私は、早速風魔法の検証に取り掛かりました、むしゃむしゃ。
レベル1で使えたのは微風を発生させるウィンドでしたが、レベル2で覚えたのはコントロールとサウンドです。
コントロールは風量や風向を調節する魔法で、サウンドは音を鳴らしたり集めたりする魔法でした。
コントロールはコンセントレーションと同じように補助的な魔法で、サウンドは応用力が必要な魔法です。
普通に使うと至近で突然パァン!と発砲音みたいな音なってびくっとしましたし、音を集めたら周りの音が大きくなりすぎてびくっとしてびっくりしまくりでした。
なお、コントロールでサウンド、つまり音量や発生場所、響かせる方向も操作可能でした。
そしてですね、リモートビューイングとサウンド、ウィンドを合わせるとあら不思議、離れた場所の景色、音、匂いといった情報が手に入る素敵な事になったのです。
もちろん、コンセントレーションとコントロールも同時に使っているわけで、都合5つの魔法を同時使用という超難易度の行使をしちゃいましたからいきなりMP枯渇して気絶という結果。
むしゃむしゃむしゃ、と気が付いたらまず桃(仮)を食べてMPを回復し、何度とトライアンドエラーを繰り返して昼過ぎに新たなスキルを習得した辺りで可能となりました。
離れた場所、といっても実質5mほど先、体感でだいたい100m先の風景を観察しただけでしたが、元気にむしゃむしゃしている十数匹の兄姉が生存しているのを確認できて安堵しました。
心がほっこりした私はステータスを確認する前に遠距離でも鑑定が可能か確認して、可能な事が判明したので浮き浮き気分なステータスチェックです。
あ、一応昨日の段階で試してみて失敗しましたが、今回は鑑定が成功しましたので鑑定って実は見ただけではダメだという事実を初めて知りました。
まあ、スキルがない前世、アース世界だと視覚だけではなく触覚や味覚、臭覚などの複数の感覚を使って行っていたようなので当然といえば当然ですね。
私も賞味期限切れの食材を確認する時には見た目や匂い、味で判断してましたし。
さておき、新しく得たスキルは融合魔法、並列同期という二つのスキルでした。
融合魔法とかなんて素敵な響きなのでしょう、と失ったはず、いや実はまだまだ現役だった心の滾りを活性化させた名称を確認しましたら、2つ以上の魔法を融合させて発動出来るようになるスキルです。
通常、コンセントレーションのような補助魔法以外の2つ以上の魔法を同時に使っても効果が混ざり合う事はないようで、実際にはどちらかしか発動しないようです、別々の場所や対象に使うならば可能のようですが。
そして今回使った離れた場所の複数の感覚情報を得る魔法、ファンタジア世界で新しく開発された魔法だったらしく魔法名が存在しないのです。
このような場合、新魔法は最初の使用者が魔法名を決めるようで、リモートセンスと名付けておきました。
これでアース世界に続いて2つ目の名付けです。
もう1つのスキル、並列同期ですが同時に複数のスキルを使えるようになるスキルでした。
何となく既にやっていた行為ですが、実際には多少時差があったらしく効率が悪かったようです。
この並列同期を習得してからはそれが無くなり時差無く、本当の意味で同時使用が可能になり、複数の属性魔力が付与された糸とか生成できるようになりました。
あ、それで出来た風光の妖精糸を鑑定したらレベルが2になり、解説の内容がちょっとだけ詳しくなりました。
あまり変わった気がしません。
更にさておき、並列同期ですがどれほど同時に使用できるかは使用者の感性、能力値的に感知が関わってくるらしく、私の場合は5つほど可能のようです。
まだやれる事は少ないですが、もっとスキルが増えてやれる事が増えたらもっと応用の効いた行動が可能になりそうですね、楽しみです。
こんな私はやっぱり魔法幼生体サクラと名乗って良いのではないでしょうか?
などと調子に乗りまくっていたのがフラグだったのでしょうね、恐れていたアレが始まったのです。
その日はそれからむしゃむしゃと桃(仮)を食べて訓練を繰り返す事数時間、日も落ちましたからぐっすり眠りました。
ちなみに種族レベルとニートレベルが1つずつ上がって、HPとMPが増えて更に成長です。
よほど昨日の暴風対策は経験になったのでしょうね、かなりレベルアップが早いです。
なお、レベルアップに必要な経験点はレベルが上がるほどに増えていく、というシステムはゲームによくある事なので割愛しておきます、今更ですが。
そして本日、朝日と共に目が覚めた私は早速むしゃむしゃ食べ、訓練を始めたのですがそこで見慣れないものを見てしまったのです。
それは桃色空間であるこの場所にぽつんと現れた茶色の何か。
光魔法が使えるようになってから何となく見た覚えのあるもの、いや顔と言った方が正しいかもしれません。
私自身、生前桃を食した回数が少ないので当たった事はないのですが、多分体験した人は居るのではないでしょうか。
そう、桃の果肉の中に潜むアレ。
今の私と似た存在、昆虫の幼生体イモムシがこんにちは、していたのです。
ファンタジア世界に転生した時は私がイモムシになった事で実は一度気絶してしまいましたが、いきなり目の前に現れた巨大なイモムシフェイスを見て驚きはしても気絶する事はありませんでした。
では、まず何をしたかと言えば鑑定を使用して敵に成りえるかの確認でした。
鑑定結果から言えばシンクイと呼ばれる昆虫の幼生体で草食昆虫の一種のようです。
そして取りあえず会話を試みたのですが、きゅぃーとしか喋れない私、特に喋らないシンクイ。
会話が成立する余地はありませんでした。
神様の恩恵であるギフト、全言語解読も何かしらの意味を持つ音がない限り会話にならない、という事が今回判明しました。
会話ができない以上、シンクイとこの桃(仮)でシェアハウスするか否かに掛かっている、というか、私がどうしたいかに彼の運命は決まりそうです。
後、彼だけがここに居るのかお仲間さんが既に居るのかが問題ですので、この桃(仮)をしっかり見ておく必要があるようです。
突然出てしまった空洞に落ちたシンクイはスルーしておきまして、早速光魔法で桃(仮)の全体像を映してみましたが、どうやら彼だけのようですね。
他に卵の残骸や皮が変色した形跡、傷などはありませんでしたから、親の成体は彼しか産み付けなかったようですね、場所が私が空けた穴付近というのが気になりますが。
うーん、この場合、特に敵と成りえない存在であり、この桃(仮)も私の所有物って事もない、それにおそらく私の方が先に成体になると思われますからここはお姉さんの余裕を見せるべきでしょうか。
そうですね、それが良いです。
そういう事でして、私とシンクイの彼はシェアハウスする事になりました。
こ、これで私もボッチ卒業ですね、やりました!
と、浮き浮きしていたのが悪かったのでしょう、警戒を全くしていなかった私は突然の来訪者に遭遇するのでした。
バリバリ、と音がしたと思ったら目の前でうにょうにょしていたシンクイが突然消えたのです。
いえ、違います。
シンクイだったもの、に成り代わって体液をまき散らしながら真っ二つになって転がっているのです。
そして目の前には私が恐れていたはずの敵、私にとっては最悪の外敵が目の前に現れたのです。
そいつは鑑定するまでもなく解ってしまう相手、イモムシの天敵である蜂でした。
流石に巨大な蜂のドアップには驚きよりも恐怖の方が大きかったようで、ステータスを確認したら恐らく私は恐慌状態に陥っているはずです。
無意識に鳴る私の口の音が耳に響き、シンクイの死体を足と口で器用に掴んで後退していく蜂を凝視しておりました。
一体どれだけ時間が経ったのか、気が付けば蜂の姿はなく、外の様子が良く見える穴が開いていました。
は、蜂ってやっぱり怖いです、お父さん。
むしゃむしゃむしゃ、蜂が去ってから数時間。
私は呆然として居ましたが、流石生後数日の幼生体ですね、お腹が空いてきましたので食事に取り掛かり、気が付けば夕方になっておりました。
そう、いつも通りに食べて訓練して食べてを繰り返していたのです。
そして夕方になって我に返ったのですが、あの蜂ってまたやってくるのでは?と思い至ったからです。
もしそうなったら現在の私に対抗出来るのでしょうか?
妖精種といっても現在はあくまでもイモムシモードなので機敏な動きは出来ません。
では発見されないように身を隠す、といった方法も取れそうにありません、何せ蓋がそれこそ紙装甲の糸ですから。
実際に今朝蜂に突破された防壁の残骸を見つつ、取りあえず蓋を修繕しなきゃと糸を生成しておきました。
このままだとあの蜂以外の外敵に発見される恐れがありますからね、鳥とかハエとか。
それら外敵から逃れる方法が今のところない訳でして、そうなると撃退するしかありません。
では、その方法があるかと言えば、答えはノーな気が・・・
だって相手を攻撃する手段がないのですよ、どうすればよいのかと小一時間誰かに愚痴を言いたくなります。
ですが愚痴を言う相手もいませんし、自分でどうにかしないと折角神様が転生してくださった妖精さんライフを終わらせたくありません。
まだ妖精というよりも幼生でイモムシなのですが。
そういう事でして、手持ちのスキルでなんとかする必要があります、何せ道具類を持ってませんし、有ってもどうせ使えませんから。
妖精種幼生体サクラの現在のスペックですが、身体能力系統は最下層、蜂に勝てる要素はありません。
実際に目の前で蜂のスペックを見た限り、勝ち目はまずないでしょうね、なので身体強化スキルは意味がない。
続いて魔法ですが、光源を作り出すか風を放つしかできません。
遠視と音の魔法は自他共の警戒には使えそうですが、目の前に現れた外敵に使い道がいまいち思いつきません。
ああ、音に関しては大きな音を出せば三半規管、虫にそんなものがあるかは解りませんが、大きな音で虫が逃げる事があるので意味はありますか。
ただし、こんな狭い場所で大きな音を出せば自身もダメージを受けそうですから、完全に最終手段の自爆技ですね。
いや、ちょっと待ってください。
コントロールがあるのですから相手にだけ大きな音を聞かせる事は可能なのではないでしょうか?
それで行けばウィンドで一方的に風を送り続けるなんて嫌がらせも可能ですね、MPが続く限り。
コンセントレーションでサーチライトのように光を一方的に浴びせて、は余計に寄ってくるだけになりそうですからダメですね。
兎も角、これは何とかなりそうな気がしてきました。
流石、魔法ですね!
と、いう事でして、早速一方通行に爆音を響かせる魔法と風を放つ魔法を試してみました。
ウィンドについては予想通り、大した風量にはならず、魔力操作も駆使して全力でやったとしても吹き飛ばすほどの風量はありませんでした。
そして爆音ですが、これどうやら新魔法だったらしく私が名付けをする事になりました。
一方方向に爆音を響かせる魔法、その名はアクセラレータロアーとしました。
うん、一方通行を英語ではアクセラレータなんて言いませんけどね、やはりオタク少女としては尊敬を込めてこう呼ばないと!
なお、サウンドの魔法で音をただ発生させるより、きゅぃーと鳴く方が大きな音になりました。
そう、音を鳴らすといっても風が吹く音や風と風がぶつかる音、要するに何かが動く時に出る音、空気が動く音、音波な訳ですから、元が大きな音ほど爆音になるようですね。
魔法で音を震わして増幅するより、私自身が震わせて増幅だけ魔法でする方が、魔法としては簡単で魔力をより増幅に振り分けられるから、がシステム的な回答のようです。
なので、この魔法はロアーなのです。
ちなみに、対象に直接音を飛ばすなんて事も出来るようですが、相手が生物の場合、能力値の精神で抵抗するようですね。
これ、蜂とか昆虫だったら抵抗出来ないのではないでしょうか?
うん、新魔法アクセラレータロアーさん、作ったは良いですがお蔵入りかもしれません。
だって脳へダイレクトに爆音、と言いますか、音波を震わせた方が効きますよね、絶対。
そして実際に翌日。
蜂が来襲した時に頭に直接音の魔法を使って気絶させ、穴から押し出しました。
うん、身体強化スキルが役に立ちましたよ!
なお、魔法名はノイズと名付けておきました、新魔法でしたので。