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8-5

「こりゃあ、確かに斥候役の蟻だな。ここから巣を探すって危険すぎるな」


匂いを嗅ぐように鼻を動かして周辺を確認している猟犬、もとい、犬獣人さん。


彼は冒険者ギルドが用意した冒険者で、索敵が得意な男性です。


名前はマスチさんといい、職業が探索者で経歴が冒険者と盗賊なランク5のベテランさん。


盗賊と聞くと犯罪者を連想しちゃいますが、ゲームなどと同じく罠や鍵などの扱いが得意な軽戦士みたいな職業です。


それだったら罠師とかそういう職業名の方が適切な気がするのですが、何故かそうなっているそうです。


逆に言うと犯罪者の盗賊という者が存在しておらず、アース世界での盗賊は盗人と呼ばれているみたいですね。


マチスさんにこっそり教えてもらいましたが、盗賊にもスリのような犯罪的な技を得意としている者が多く、幼少期にはそんな事をしていたそうです。


バレなきゃ名称にも乗らないので成人前に冒険者になってしまい、そのまま隠しているとか。


まあ、公然の秘密みたいなものらしく、冒険者ギルド側もダンジョンなどでは役に立つ技能なので黙認しているのが現状です。


「魔獣といってもあくまでも蟻。フェロモンでテリトリーを形成しているからですか?」


「そういうこった。この死骸の所為でこの辺りまでテリトリーとして認識してるだろうな」


「なるほど」


さて、そんな犬並みに鼻の利くマチスさんと私、そしてアルミラージュさんで蟻の巣を探す事になったのですが、かなり難しい。


何せ見渡す限り草原で、後方には城壁が見えますが、草原にはまばらに生えた背の低い木程度でそれ以外が見当たらない。


蟻塚のようなものがあれば良いのですがそんな目立つ物があるならもっと早くに蟻を発見されてただろうし、目印無しで探すしか手がない、そんな状況だったりします。


それなのに3人だけで探せとか、冒険者ギルドは甞めてるとしか思えないのですが。


さておき、現在私たちはワークアイアンアントと遭遇した地点までやってきて巣への手掛りを探しているところです。


「マチスさんの探索だとどれぐらいの範囲まで調べられます?」


「風下だったらかなりの距離までだが視力内だから300mってところか。待て、今の言い方だとお前も出来るのか?」


「ええ。私も同じぐらいの距離ですね」


「おお、そいつは凄いな。サクラと言ったよな? どこかのクランに」


「お二人とも雑談はそこまでですわ。見える範囲にはそれらしいものがないのですから足で探すのが当たり前でなくって?」


探索スキルを持ってないアルミラージュさんは私たちがどうしようか話し合っているのを見て拗ねたのか、割り込んできました。


と、思うととてもツンデレぽく見えて微笑ましくなりますので精神衛生上そうしております。


何せ冒険者ギルドで老マスターさんにやり込まれてからずっと機嫌が悪く、マチスさんにも噛付くぐらいですから。


大人なマチスさんは相手にしていませんが。


「まあ、そうですね。取り敢えず蟻たちが移動してきた方向に進みましょう」


「そうだな。蟻の足跡を追うのは難しいがフェロモンを辿れば問題ない」


「流石犬獣人ですね、頼りになります」


私とマチスさんはニコニコしてますが、アルミラージュさんは今にもがるると唸りそうな雰囲気。


どっちが犬か分かりませんね。




アイアンアントたちが進んできた方向、北東に進んで行くとフェロモンの匂いが強くなっていくようで、端ではあるけど完全にテリトリーと化しているそうです。


マチスさんは10年以上冒険者をしていてアイアンアント討伐にも参加した事があるらしく、巣に突入して生還した経験を持つ専門家みたいな人です。


「北東か。もしかしたら2年前に討伐した巣の生き残りが新たに巣を作ったのかもな」


その経験というのが北東にある他国で起きた緊急依頼だったそうで、当時別依頼で訪れていたマチスさんはそのまま討伐に参加したそうです。


その時に参加した冒険者の数は300人以上で、死傷者は8割以上にも上り、生き延びても怪我や恐怖で冒険者を引退した人が多数。


国の兵士も当然参加したけど巣を討伐した後の殲滅作戦も併せて壊滅的な被害を受け、未だにその影響もあって大変らしくリファール王国の支援を受けているらしい。


そのアイアンアントの巣は数万規模の巨大な巣だったらしく、壊滅までに小さな村だけでも数個、町レベルが1つ壊滅してしまったいうのですから他国の支援なしにはやっていけないですよね。


そんな被害を出す可能性があるからこその災害級魔獣で緊急依頼の対象なのですが、今回は街の近くで巣がありそうというのですからかなりまずい状況です。


それなのに初動の段階でこの対応って、どうなのしょう?


私だったら国軍も導入して巣の発見を優先するのですが、何か考えがあるのでしょうか?


とか考えていましたら危険感知に薄っすら反応があり、リモートビューイングで視界を飛ばせばこちらに近寄ってくる蟻と思われる道が十数本。


今回もワークアイアンアントのようで、雄蟻であるアイアンアントナイトは居ないようですね。


「蟻の接近を感知しました。やはり北東から来ますね」


「俺の探索スキルには、って、俺も捉えた」


マチスさんは短剣使いなのですが、ワークアイアンアントは小さいので向いておらず、急いで組み立て式の短槍を用意しだしました。


アルミラージュさんは前回の戦闘で木剣1本では厳しいと思ったのか両手にそれぞれ木剣を作って魔法剣の準備中。


そんな中、私ですが魔力弾を準備。


「くそ、あいつら小さいからって何だそれ!?」


「ええ!? 何ですのその数!?」


「え? 魔力弾なんて属性魔法だったらレベル1ですよ? これぐらいできると思いますが。あ、撃ち漏らしたのだけお願いします」


両手を頭上に掲げ、30個の魔力弾、300点のMPを消費して発射です、きゅぃー。


魔力弾はMP変換効率が属性魔法の半分と燃費の悪い攻撃魔法ですから、使い勝手は良くないんですよね。


何て愚痴を挟みつつ、相手は素早く動くし小さいので中て難いですが、ほぼ直進ですから中てるだけなら私でも簡単にできます。


リモートビューイングで見易くなっているからなんですけど。


全ての生物の弱点である頭部に向けてまずは1発ずつ放ち、追従する形で次を。


直撃した蟻はそのまま倒しましたが4匹だけで、11匹ほど避けたけどバランスを崩して2発目で更に追撃して合計10匹倒しました。


5匹ほど魔力弾の弾幕を抜けてこちらに駆けてきておりますので、さあ、後はよろしくお願いします。


「こ、これでランク9とか詐欺じゃねーか!」


「まさかあの時は手加減していたというの?」


「それよりも5体ほど接近中ですよ」


決闘騒ぎの時は手加減してましたが、別に今のも全力ではないですよ。


勿論、全力を出す気はないですが。


さてさて、マチスさんの戦闘なのですが流石ベテランだけあって卒のないというか、無駄のない動きで頭を打ち上げてひっくり返し、柔らかい胴部を突いて倒してます。


なるほど、外側は硬いけど内側が柔らかいのは魔獣でも昆虫と変わらないようですね。


そこをきっちり抑えて攻めるとは流石です。


しかも周りを良くみて立ち位置を確保しながらですからワークアイアンアントの倒し方を熟知しているのが解ります。


そしてアルミラージュさんなのですが、二刀流でもやっぱり苦戦しているようで3匹囲まれて大変そうです。


様子を見ているとマチスさんがもう1匹倒してアルミラージュさんの援護に入り、倒し方のレクチャーを始めました。


短槍を振り回して牽制し、アルミラージュさんが倒し易いように打ち上げたりとサポート役に徹してます。


マチスさんはそういう事も手馴れているのかアルミラージュさんは戦い易そうで、どんどん倒して行き、すぐに最後の蟻も仕留めました。


見事な連携で思わず拍手しそうになりましたが、やったら怒られそうな気がしますので我慢しておきます。


「お疲れ様でした」


「これぐらい大した事ないぞ」


「普段から誰かと組んで戦っているんですね、慣れているようでしたし」


「いや、そうでもねーよ」


「そうですか。アルミラージュさんも大丈夫ですか?」


「大丈夫ですわ。それよりもあなた、昨日は手加減を」


「それこそそれよりですよ。えっと、怪我がないなら探索を続けましょう」


「そうだな、行くぞ」


アルミラージュさんには悪いけど、その話は面倒そうなのでスルーです。


手加減してません、と言っても信じないでしょうし、してたと言ったらまた決闘とか言い出しそうですから。


マチスさんも何か言いたそうでしたが、それよりも蟻の巣探しの方が重要と判断したのか私の提案に乗ってきました。


こういうところもベテランぽくて良いですね、同じ探索者なのにどこかのジュリアナさんとは大違いです。


元気にしてるかなぁ。




その後数度ワークアイアンアントとの遭遇戦が発生し、その全てを蹴散らしたのですが巣はまだ見当たりません。


北東に進む毎に遭遇率がアップしてますので中々進めない、というのも原因だと思います。


そして戦ってばかりだし警戒しながらの移動、見つからない巣。


戦闘は私がほとんど倒しているので肉体的疲労はないですが、心的疲労は結構来ているようです、主にアルミラージュさんが。


先ほどからイライラしっぱなしですし、そろそろ限界なのかな?


「アルミラージュさん、まだ行けます?」


「大丈夫ですわ! さあ、どんどん進みますわよ!」


「根性あるなぁ。しかしそろそろ巣が発見出来ても良さそうなんだがな、これだけ襲われてたら」


「そうですね、遭遇する間隔が狭まってますし。まあ、一度止まって遠視してみますか」


「は?」


何言ってんのこいつ?と言いたげな雰囲気ですが、そろそろ発見したいのは私も同じですからちょっとがんばっちゃいましょうか、きゅぃー。


光魔法リモートビューイングを最大限にして視力を増大。


今だったらアース世界のサバンナに住む原住民並みの視力を発揮出来るはず、っとそれらしいものを見つけました。


ワークアイアンアントやおそらくアイアンアントナイトと思われる巨大な蟻、それらが大量にあふれ出る場所。


蟻塚のような塔ではありませんが地面が少し盛り上がり、巨大な穴が開いております。


ちょっと予想とは違いましたが蟻の巣で間違いなさそうです。


「発見しました。このまま北東に約1km先に巨大な穴から出入りするアイアンアントの群れが見えますね」


「ええ!? そんな遠くまで見えますの?」


「マジかよ。もっと早くやってくれてたら」


「光魔法で遠視しただけすから集中しないといけませんしね。お二人も見てみます?」


マチスさんとアルミラージュさんにもリモートビューイングを掛け見てもらいました。


私ほどはっきり見えた訳ではありませんが、マチスさん曰く間違いなくアイアンアントの巣だと。


流石にこの距離まで近寄らなくては発見出来ませんでしたし、街から約20kmで私たちが初遭遇したのが10kmなのでテリトリーは10km圏内。


一般の人で徒歩2時間強の距離ですし、今まで発見されなかった理由も納得できました。


「さて、さっさと戻って報告だ。今回の巣は草原にあるからまだやり易いかもな」


マチスさんの宣言で戻る事になりましたが、遮蔽物の一切ない場所での戦いは確かにやり易そうです。


でもかなりの人数がいないと難しい攻略は難しそうですね。


今から戻ってまた巣までとなると下手すると夜間戦闘に突入しそうなのですが、大丈夫でしょうか?


その前に人がちゃんと集まるのかそっちの方が問題です。


このままだと私も最前線に回されそうな気がしますが、ランク9な私がそんな事になったら面倒がまた降り掛かりそうです。


面倒ばっかりやってきて、本当に嫌になりますきゅぃー。

お読みくださってありがとうございました。


年末までに後1話ぐらいアップ出来ると思います。

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