表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

61/80

8-1

やっと冒険者らしいお話になります。


今までのはどう考えても酒場経営物語でしたから(

リファール王国にやってきて冒険者になった私は冒険をせずに酒場の給仕や警備の仕事しかしていません。


一応冒険者としてのポイントはそれでも入るのですが昼と夜で1ポイントずつ、日に2ポイントです。


ランク9からダンジョンアタックが解禁される8に上がるには200ポイントを稼ぐ必要があります。


このままだとだいたい4ヵ月ぐらい掛かる計算です。


流石にそこまで掛けたくないのでほぼ毎日のように薬草の納品も行っているのですが、毎回10束程度で2ポイントが加算されてます。


これでも2ヵ月ぐらい掛かりますから何かしらの追加が必要なのです。


あ、薬草はその気になれば100束でも200束でも納品できるのですが、あまりにも常識はずれですし、そこまですると目を付けられますから自重してます。


すでに目立ってるという声は聞こえなきゅぃー。


ごほん、そういう訳で私は追加の仕事がしたいのです。


そもそもですね、私は冒険者になりにこの国来ましたがそれはあくまでも手段であってソーサリアン魔法国に入国する資格を得たいが為です。


それがですよ?


冒険者の国と言いながらも冒険できない仕組みになってるとかあり得ません。


何で酒場でウエイトレスをやったり広場で誘導警備をしないといけないのですか。


訳が分かりません。


分からないといえば」


「えっと、サクラちゃん? 分かったからもう落ち着こうね?」


はっ、あまりにもストレスが溜まっていて独り言を漏らしてしまっていたようですね、うっかりきゅぃー。


「うーん、サクラちゃんは実力がある事は証明されてるのだけど、規則だからダンジョンに入れないのよね」


「別にダンジョンアタックに拘ってませんよ? 討伐依頼だとかでも構いません。あ、でも昼と夜の時間はダメですけど」


「そうね、そっちは指名依頼が入っているから難しいわよね」


ええ、そうなんですよ。


女将さんからの指名依頼、酒場の給仕か広場の警備どちらかを受けるように指名されちゃってるんです。


あの夜の私の華麗なる体裁きを見た女将さんに実力がばれてますし、MPが豊富というのも魔法道具の扱いで知ってますからね。


もうあなたを離さない、といった感じでぐいぐい来られてます。


部屋も住み込み用を勧めてくるし、永久就職させる気満々なんですよ。


でも、私の棲み処はあくまでも幻惑の森の主様の根元ですからずっとこの街にいるつもりはないんですけどね。


「掃除の依頼とか倉庫整理とかそういう雑用系はないんですか?」


「この時期になるとみんな張り切っちゃってね。ほら、もうすぐ王選だからポイントを集めてランク8になろうと」


「考える事は皆同じ。それでそういう依頼は全部受けちゃっていると。では討伐依頼はどうなのですか?」


「それも流れてきている冒険者が結構受けちゃってるから、ゴブリンのような事後承諾のものしか」


「そうですか。でもそれもゴブリンのいるような森とかこの辺にないから」


「そうなのよ、だから厳しいかなぁ」


厳しいとしか言わない受付嬢であるニムさんは、完全に私を諦めさせようとしか思ってませんね。


これはもう強行手段に出るしかないかなぁ、と私はギルドを後にするのでした。




あ、挨拶がまだでしたね、こんにちは。


私は妖精少女サクラです。


10日ほど前に冒険者になったのですが、雑用系依頼しか受けていない冒険しない冒険者です。


私がこの街にやってきたタイミングが悪かったのか、ランクアップする為に効率良く依頼を受けるのが難しく、時間が相当掛かりそうな雰囲気です。


本来であればこうやってゆっくり育っていくものなのでしょうが、レベルやスキルといったデータ的な見地でいけばすでに私はこの街一番の冒険者だったりします。


先日ギルドでランク4の冒険者が在籍しているクランメンバーを見かけたのですが、一番強い人でもコンテラクト王国の騎士団長さんより下でした。


レベルやスキルといったステータスは鑑定スキルがレアな為に比較対象になり辛く、冒険者ランクで強さの比較をするのが一般的です。


ですからランク9から討伐依頼が受けれて、ランク7から護衛依頼が受けられるようになっています。


商業ギルドの顔役さんが所持していたような鑑定眼鏡みたいなのが増えたら変わるのでしょうが、魔法道具は高価ですし普及はしないでしょうね。


なので冒険者の間では冒険者ランクが指針となっている訳です。


だから一番強くてもランク9な私は選択肢が少ない、という状況に陥っていて困っているのですよね。


あ、私が強いと言ってもあくまでもこの国の冒険者限定で、城にいる騎士や元冒険者の王や貴族なんかはもっと強いかも知れません。


ただ、コンテラクト王国の事を考えたらやっぱり私よりも弱いかも。


だからといって、私が最強!と調子に乗るのは間違ってます。


何せ私よりも強い人が身近に数人いますからね、天狗になってなってられません。


差が圧倒的過ぎて嫉妬心とかも一切湧かないレベルですから!


どう攻めたら良いのか見当もつかない人たち相手にどうしようもないですきゅぃー!


すみません、興奮して噛みました。


さて、そういう訳でして自重せずにやっちゃおうかなぁ、なんて考えながら夜の酒場で給仕をしておりました。


なお、服装は袴姿のウエイトレスさんです。


と、言う事でここ10日ほど酒場のウエイトレスさんをしておりましたらメイド長のレベルが2上がり、クラススキルを習得しました。


覚えたのは家事補正(中)とメイドのアップデートスキルで、ちょっとだけ掃除などの家事が上手になり、気が付けば宿泊区域の掃除担当になってしまいました。


綺麗好きですから不満はありませんが、女将さんに良いように使われている気がするのは気のせいでしょうか?


気のせいではないと思いますがお給金とギルドのポイントが稼げますから良しとしましょう。


後は宿泊客からチップを貰ったりしてますから更に良しという事で。


そんな私ですが現在ネルルの安らぎ亭の看板娘ぽい扱いを受けておりまして、給仕をすれば指名が入りますし、広場の屋台のおじさんたちからお菓子を貰ったりするようになりました。


可愛い美少女に貢いでいるというよりも可愛い娘にお小遣いをあげている感じなのでしょうね、嬉しいですがあまり嬉しくありません。


あ、そうそう、私が来た当初に風邪でお休みしていた通いの従業員さんですが、無事に復帰しております。


彼女の名前はミントさんといいまして、背に翼を持つ翼人という種族の少女です。


獣人と違って人間の背中に鳥の翼が生えた羽妖精みたいな感じの種族で、鳥のように飛ぶ事が出来る種族です。


正式な種族名は人種翼人族で、地域によっては神の使いである天使扱いだそうです。


本来であれば高い山の上などの高地で生活している種族なのですが、ミントさんの家族は訳有りらしく人里で暮らしていて慣れない生活の為に病弱なのですって。


見た目は可愛い系で病弱という薄幸属性が付いてますからもちろんお客さんから人気があったりします。


女将さんって絶対にそういうのを狙って従業員を集めていると思わせる人物紹介でした!


「いらっしゃ」


「あなた、なんて格好をしてますの!」


「いませー?」


そんな看板娘ウエイトレスさんな私に仁王立ちで指さす少女、何でしょう、これは?


その少女は黄金に輝く長い髪を背に流し、細い肢体を纏う衣は新緑、見せる肌は白くて美しい。


おそらく剣士なのだろう、腰には凝った意匠が施された鞘の剣を帯て所々に革製の鎧を身に纏った井出達。


瞳は青く、耳は尖った、そう彼女はエルフの少女でした。


ちなみに綺麗系の美少女です。


「あなた、どこの森の出身なのですか? そんな人間みたいな事をして、恥ずかしくないの?」


エルフさんは私を見下した感じで上から目線でそんな事を言いました。


身長は私よりも高く、おそらく170cm近くはありそうな羨ましい人です。


ただ胸に関しては将来性を期待したいところですね。


傲慢で痩身、テンプレなエルフさんです。


始めて見るエルフさんですから興味は尽きませんが、まずはお仕事をしましょうか。


「お客様、本日はお食事ですか? それともお泊りですか?」


「そうね、宿も取りた、って違いますわよ! あなた、私を侮辱してますの?」


「侮辱なんてそんな。お部屋の方は雑魚寝の大部屋か個室ですと現在4人部屋しか空いておらず、相部屋でも宜しければ2人部屋もございますよ?」


「雑魚寝!? そんな部屋になんて泊まれる訳ないでしょう!」


「やはりそうですか。女性の身であれば当然です。4人部屋は1泊銅貨12枚で料理は1食付いておりますが、お一人様でしたら本日の夕食と明日の朝食が付きます」


「なっ、高いわ。ギルドがここが一番安くて安全と聞いてきたのに」


なるほど、冒険者ギルドに紹介されてやってきたわけですか。


と、いう事は冒険者ランクは高くないのかな?


なお、女将さんを始め他の従業員は一瞥しただけで自分たちの仕事をしてます。


私が1人で対応できると判断しちゃっているようですね、まだ働いて10日なのに。


「ええ、一番安くて安全ですよ。他の宿でしたら1人部屋の個室がなく2人部屋で1泊1食付きで銅貨10枚ですし」


「そう考えるとすごく安いわね。でもこの宿の2人部屋は空いてないのでしょう?」


「はい。相部屋で宜しければ銅貨3枚と銭貨5枚で1食付きで宿泊できますよ?」


「誰とも分からない人となんて泊まれないわ。相手も了承しないでしょうし」


後半部分は心の声が漏れ出ただけのようですね、小声でしたし。


なるほど、この人は傲慢というよりも人付き合いが苦手なだけのようですね。


私と一緒です。


そこ、お前は違うとか言っちゃダメですきゅぃー!


「あ、相手は女性ならば相部屋を了承している人ですから大丈夫ですよ」


「そうなの? それだったらお願いしようかし、って違うわよ!」


「それではお泊りという事でお名前を伺いしても? 冒険者の方でしたらタグの提示もお願いします」


「私の名は、ってそうじゃなくて」


「ランク8までの冒険者の場合、割引サービスの対象となりますからお得ですよ」


「そうなの? ちょっと路銀が心許なく、って私の話を聞きなさい!」


そろそろやめておきましょうか。


このエルフさん揶揄うと面白い反応するからちょっと意地悪しちゃいました。


美少女はぷんぷん激おこで可愛く見えるから反則です。


「私の祖に誓ってあなたに勝負を挑みますわ!」


「え? それ受けたくないのですけど」


「自らの祖に誓った行為を無碍にしますの!? あなた、エルフでしょう! あり得ませんわ!?」


あ、エルフの仕来りですかー。


私はエルフに擬態しているだけの妖精さんですからそういうの知らないのですよね。


さて、どうしたものかな?




「じゃあ、今からエルフの矜持に沿って勝負を行うよ」


「ええ、宜しくってよ」


「あ、はい」


はい、現在私はネルルの安らぎ亭の前で美少女エルフさんと対峙しております。


エルフの勝負というのは相手を認めさせるものであれば何でもよいそうで、ほとんどの場合妖精魔法の腕で競い合うそうです。


これについては女将さんが知っていたようで間に入ってくれたのですが、美少女エルフさんから戦闘での決着を指定されました。


立ち振る舞いがしっかりしていますからかなりの腕前だと思いますし、ちょっと鑑定してみましょう、えい。


========================


名前:アルミラージュ・エスカリア・スィーリル(女/16歳)


名称:-


種族:人種エルフ(LV23)


状態:普通


所属:エスカリアの森/冒険者ギルドリファール王国支部


職業:妖精戦士レベル15(経験職:妖精術師/踊り子/戦士)


========================


年齢は16歳と若いのに3つも職業をマスターしているなんてかなり素質があるのかな?


あ、私は色々転職を繰り返していますが、ファンタジア世界の住人は基本的にマスターしてから転職するのが当たり前のようです。


さておき、美少女エルフさんの場合は妖精術師の次に踊り子、そして戦士と経歴を重ねている所から魔法関係は苦手なのかもしれませんね。


本来エルフは魔法が得意な種族ですからかなり異色ですし、種族レベルから考えても戦闘経験もそれなりにありそうです。


それよりも気になるのが名前で、アルミラージュ・エスカリア・スィーリルとセカンドネーム持ち、うん、エルフの王女さまぽい気配がビンビンしちゃいますね!


「私、アルミラージュ・エスカリア・スィーリルは始祖スィーリルに誓い、あなたを下します」


美少女エルフさんは私に向かってそう宣言しましたが、これってやっぱり私もしないとダメなのでしょうか?


「えー、はい。私、サクラは始祖に誓い、あなたを下します」


「あー、両者始祖に誓ったのだから」


「ちょ、ちょっと待ってくださいな」


「なんだい?」


「あなた、なぜ始祖の名を口にしませんの? あと氏名もどうしたのですか!」


「え? だってここには他種族の方がいるのですよ? そんな場所で氏名や始祖の名を出すなんて」


「あ!?」


私たちの勝負を見ようと酒場だけじゃなく、周りの通行人も野次馬になってます。


そんな場所で自身の森の居場所を特定させる可能性のある氏名とか、自分の能力をばらす恐れのある始祖名は言わないと思うのですが。


そう思って名前だけ言うように留めましたが美少女エルフさんの反応からすると、この判断は正解だったようです。


うん、この人も結構うっかりさんなのでしょうか?


それともやっぱり王族でその辺りが欠けているのかな?


まあ、ともあれ勝負です。


何故かどっちが勝つかの賭けも行われているようですから、負けてられないのです。


ミラさんたち従業員メンバーからの期待の眼差しが怖いですし。


「うぐぐぐぐぐ、ええい、始めますわよ! 私の力を思い知りなさい!」


彼女は右手を突き出すと魔力を集め、妖精魔法を使うようです。


まだそんなに危険感知が反応していませんから戦闘準備なのでしょう、邪魔をしたら悪いですね。


私は半身になっていつでも動けるようにだけしました。


あ、服装はそのまま袴姿で武器を所持していない無手スタイルです。


魔力を集め始めてから数秒ほどで美少女エルフさんの右手には枝が現れ、それが伸びて剣のような形に。


なるほど、純粋な妖精魔法ではなく妖精戦士の精霊武器化を応用して木剣を作った訳ですか。


これにはギャラリーたちもおーっと歓声を上げました、凄いですものね。


「さて、お待たせしましたわ」


びゅんと木剣を一振りしてこちらに向け、ちょっとドヤ顔でそう言いました。


うん、周りの歓声を聞いて得意げになっちゃったのでしょう。


それとも自信がそれだけあるって事かな?


でも精霊武器化にしては時間が掛かりすぎですし、やはり魔力の扱い、魔法が苦手だという私の予想は正解だったようですね。


「そうですか。私はこのままで結構ですから始めましょう」


「まさかあなた武器も無しで戦いますの?」


「私は魔術師ですし、それに体術も得意ですから」


勿論剣も扱いますが、まずは体術のみで挑みます。


相手はそれなりに戦える剣士のようですし、どれだけ私の体術が通用するか試してみたくなったのです。


さあ、エルフの剣士の実力を見せてもらいますきゅぃー!

お読みくださってありがとうございました。


ちょっとずつ仕事が落ち着いてきたので、更新速度がちょっと上がるかも?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ