7-5
本日2話目の投稿です。
7-4~7-5を投稿。
酒場を手伝った翌日の朝、私は夜が明ける前に目が覚め、いつも通りに身支度を整えました。
今日の装いはどうしようかな?
普段着として重宝している酒場の給仕スタイルですが、気分を変えたい時は町娘風が2種類しかありません。
こう考えると私の衣服バリエーションは乏しいなぁ、と思っちゃいますが、まさか町中で騎士服や和装ドレスなんて着れませんしね。
そもそも村人や街の人、所謂一般人はそれほど服を持ってない、着回しが普通のようですからね、私でも多いぐらいですよ。
でも現代日本の記憶を持つ私にはそれがちょっと耐えれない、おしゃれはやっぱりしたいじゃないですか、似合うかどうかは別にして。
なので新しい衣装を作る事にしました。
さあ、朝から張り切って参りましょう!
あ、挨拶が遅れましたが、私は妖精少女サクラです。
「おはようございます」
「おはようサクラ。あんたそんな服も持ってたんだね」
「はい、どうですか?」
新作衣装に身を包み、るんるん気分で1階に降りると女将さんが調理場で何かをしてましたので元気良く挨拶。
私を見た女将さんが早速新作に付いて聞いてきましたからその場でくるっとターンしてにっこり微笑みました。
「いや、昨日の服と同じような物ってのは解るけど、こっちじゃ見ない仕様だね。で、なんでエプロン?」
「機能性と可愛さの両立の為です。あとこれは袴というスカートで東方由来の仕様ですよ」
「ハカマねぇ」
はい、そうです。
私は大正喫茶などに行けば見れちゃう袴姿にエプロンドレスを身に纏った大正浪漫少女に変身しております。
髪型も衣装に合わせてサイドを後ろで纏め、大きなリボンで飾り付けてます。
流石にこのスタイルではローブは似合わないので、今日は羽織っておりません。
桜色の髪が目立つので、外出する時は使用しますけどね。
「ところで女将さん。今日も料理人の方はお休みなんですよね?」
「んー、そうだ。だから朝食は私が作るんだが、食べるかい?」
「あ、昨日買った果物があるので大丈夫です。それよりも昼の営業はどうするのですか?」
「一応、私が簡単な料理を出すって事にしようと思ってるけど」
「じゃあ、こういうのはどうでしょうか?」
昨夜の出来事もあったのでちょっと考えていたのですが、調理場を稼働させずに済む方法を。
聞くところによると普段ウエイトレスをしてくれる人はミラさんを含めて4人いて、そのうち1人は風邪を引いてダウンしてるとか。
ミラさんだけは住み込みで働いているベテランで、後の3人は通いの少女たちでまだ15~17歳の人たちだそうです。
そんな4人と女将さんで接客を担当していて、昼は女将さんを含めて3人、夜は女将さん4人で回してます。
単純に計算すると週に1度の休みと昼か夜を1度を休めるという計算になるのかな?
でも、それも女将さんが休みなく働いての事らしいですから、誰か1人でもダウンするとローテーションが崩れて大変な目に遭うと思います。
実際に今1人風邪でダウンしてるからローテーションが崩れていて、でもコンロの入れ替えと清掃期間で営業を抑えているから何とかなっている、というのが現状です。
いや、何とかなってると言っても営業に差し支えが出ていると私は思うんですけどね。
そこで私が提案したのは、思い切って昼の営業スタイルを変えてみてはどうか、という事です。
「確認したいのですが、昼間の営業で何人ぐらいお客さんが来て、料理をどれだけ頼むのですか?」
「あー、少ないな。そもそも昼にご飯を食べる習慣がないよ、裕福でもなきゃ。だからちょっと余裕がある人が偶に来てくれる程度だな」
「昼間の営業のメインは冒険者が飲みに来るぐらいですか?」
「そうだよ。ダンジョンから帰って来たやつらや、色々あったやつらだな」
昼間からお酒を飲むとか信じられないですが、ファンタジア世界ではこれが普通のようです。
コンテラクト王国の冒険者たちは昼間から酒盛りしてましたからね。
王都支部の場合はギルドの運営方針の所為でしょうけど。
「じゃあ、皆さん、冒険者じゃない方はお昼はどうしているのですか?」
「軽く摘む程度だよ。だからうちでも軽めの料理にして銭貨3枚で出してるね」
聞くとパン1つとスープのセットのみを販売しているそうです。
それって利益が出るんでしょうか?
多分材料費を引いた利益は銭貨1枚くらいじゃないかな?
そうすると人件費を考えると赤字になっちゃうと思います。
ダメです、赤字は!
あの悪魔は駆逐しないと、某黒いやつと同じぐらいに徹底的に!
「でしたら料理の提供はやめませんか? そして場所だけを提供する感じにして飲み物だけを販売するんです」
「え、どういう事だい?」
昨夜やった事と同じ要領なだけですが、料理の持ち込みはOKにして場所利用料として銭貨1枚だけもらい、水を無料提供する、という物を提案しました。
勿論このお店には冷やす魔法道具がありますから冷たいお水が飲めますし、座ってゆっくり軽食とはいえ食べれるのですから銭貨1枚ぐらいは払うと思いますよ。
人件費以外はタダでやれるのですから良いアイデアだと思います。
「なるほどね、昨夜と同じような事をしてしまうのか。それだったらうちの子たちも昼はゆっくりできるね。料理人たちも仕込みに専念できるし」
「はい。それでそれだけじゃあ勿体ないですから、広間の屋台の人たちからお金を頂きましょう」
「あいつらがお金出すかい?」
「人は食事をする時は出来るだけ安心して食べたい、楽な状態で食べたいものです」
「そうだね、私もゆっくり食べたいよ」
「屋台の場合はそれが提供できません。ですから屋台は人通りが多い場所より座れるベンチがある広場に集中しているはずですよ。勿論食材屋は別ですけど」
昨日ここに来るまで屋台を回ってみましたが、食材屋や雑貨屋などの屋台は人通りの多いところ、手軽に食べれる料理やお菓子を出す屋台などは公園や広場で出てました。
この辺りから幾ら簡単手軽に食べれる物でも安心して座って食べたい証拠だと思ったのです。
でもやっぱり安心という面では屋根がない所だと完全ではないし、食べた後のゴミをどうするかという手間があったりします。
そこで屋根がありゴミも捨てれる場所で食べれたら?
しかも冷たい水まで飲めたら?
そうなればお客さんもそっちを選ぼうとする人が出てくると思います。
「なるほどねぇ」
「屋台からお金をもらうのは今後考えるとしても、まずはここを案内しておまけを付けさせるで良いかもしれませんね」
「お金を払うのは嫌がるだろうけど、それぐらいなら売る側の裁量か。それで集客に繋がるならやるかもな」
私が提案したのはこのお店と目の前の広場を大きなフードコートと見据えた話です。
フードコートって面白い考えだと思ってましたし、ファンタジア世界ではまだないシステムのようですからね。
実際にはフードコートではないんですが、施設内の話じゃないので。
「よし、その案に乗った! って、このアイデアの料金ってどうする? 幾ら欲しいんだ、サクラ?」
「あ、料金は別に・・・でもそうですね、これをギルドに回してもらって指名依頼として出してもらえませんか?」
アイデア料って概念はちゃんとあったんですね、驚きです。
忙しそうにしてるし、女将さんやミラさんは良さそうな人だったからの提案だったからお金はもらうつもりはなかったです。
でも、これを依頼として処理してもらえれば達成ポイントが稼げますしね。
これでウィンウィンです。
「ああ、いいぜ。じゃあ、序だから昨日のウエイトレス代もギルドの指名依頼って事にしておくよ。どうだい、ウエイトレス続けてみるか?」
「はい、是非!」
こうして私は冒険者になったはずなのに、酒場で給仕さんをやる事になりました。
なお、冒険者ギルドでは今回の事で騒ぎになり、目立ちたくないのに目立ってしまいました。
こんなつもりではなかったですきゅぃー!
私がギルドから受けた事になった指名依頼、アイデア料と給仕のお仕事。
給仕の雑用依頼は昼1回で1ポイント、夜1回で1ポイントで、報酬はそれぞれ銭貨5枚と7枚になりました。
これは通いで働く給仕さんたちより若干安い価格で、女将さんが支払うお金でいえば同じになります。
冒険者ギルドの依頼者が払うお金は、冒険者が受け取る金額よりも多くなる、これ当たり前の事ですよね。
ギルドだって運営費を稼ぐ必要がありますし、こういうシステムになってるのが今回確認できました。
そんな事を冒険者にばらして良いのかといえば本来ダメなのでしょうが、担当になったニムさんが気付いておらずベラベラと。
その事でこの支部のギルドマスターに怒られてしまいましたが、それは私の所為ではありませんよ?
そしてアイデア料の方は通常の依頼5回分としてカウントされ、このアイデアを他にも提供する事になりました。
この街には広場や公園が結構な数存在しており、屋台や昼営業している酒場が同じように存在してます。
冒険者ギルドが主体になってそれらに売り込みを掛けて儲けたい、と。
これはこの話を聞いたギルドマスターさんが登場して話し合う事になったのですよ。
リファール王国支部のギルドマスターはドワーフの老人で、眼光鋭い人でした。
その横で涙目の狸さんはスルーしておきますね。
「ごほん。ワシがこの支部を預かる長をしておるドランだ。なんでも面白いアイデアがあるそうじゃな?」
「ドラン爺が出るほどじゃないだろ。私の所だけで終わらせるから商業ギルドには後で報告しておくよ」
「いやいや。冒険者ギルドを通すのじゃろ? だったらこっちも関係してくる」
あ、商業ギルドというのはこの街の商売人たちが相互補助する為に作っているギルドで、冒険者ギルドみたいに世界中にある共通組織ではないそうですよ。
商売人ですから利権が絡んで来たりとか色々面倒そうですから、提案した事をちょっと失敗したと後悔中です。
更にいえば冒険者ギルドまでも絡んでくるとか考えたくもないですきゅぃー!
えっと、すみません、取り敢えず噛んじゃいました。
「関係あるといってもサクラを指名した依頼にするってだけじゃないか。まさか冒険者ギルドが商売に口を挟むのかい?」
「そっちのエルフの小娘の提案だったのか。エルフの癖に生意気な」
老マスターさんがぼそっと呟きましたが、私は耳が良いので聞こえちゃいましたよ。
もしかしてファンタジア世界も古典テンプレのようにエルフとドワーフが犬猿の仲なのでしょうか?
「そっちの小むす、サクラという駆け出しが提案したならば冒険者ギルドのアイデアじゃろ。だから口を出して当然だ」
「何時からそんな規則が出たんだよ? あたしゃ聞いた事がないね!」
あ、女将さんの機嫌が悪くなりましたよ。
女将さんは普段一人称を私としてますが、機嫌が悪くなるとあたし、もしくはあたしゃになります、要注意です。
しかしそんな怒気を見せられても老マスターさんはけろっとしてます。
狸さん、ギルド職員のニムさんはガタガタ震え始めました。
うん、結構な魔力が漏れ始めてますからね、怖いですよね。
勿論私は森でなれていますから平気です。
「規則とかの問題じゃない。冒険者が出したって所が問題なんじゃ。商売人が出したと言うなら話は別じゃ」
「この耄碌爺が、言うじゃねえか」
「ふん、鉄拳姫は幾つになってもじゃじゃ馬じゃな。そんなんじゃから嫁の貰い手がいないんじゃよ」
「それは今関係ないだろうが!」
あ、鉄拳姫とは女将さんの名称ですから、二つ名を持つ凄腕だったという事です。
老マスターさんは岩窟斧という名称が付いてます、念の為。
取り敢えず話し合いは老マスターさんのペースで進んでいまして、年の功による差だと思いたいですが、性格の差が大きいですね。
女将さん、こういう交渉事が弱そうですし。
まあ、しばらく言い合いを続けてもらいましょう。
私は我関せずと妖精巾着から果物を取り出して齧りつきました、うん、美味しい!
「くそ、覚えてろよ、糞爺」
「ふん、出直して来い、行き遅れ」
「なんだと!?」
「えーっと、あんまりゆっくりしてられないと思いますけど、女将さん。昼の準備もありますし」
「くっ、そうだったね。じゃあ、そう言う事だ。依頼は出したから処理だけしておくれ」
「処理はしよう。だが先にこのアイデアについてだ」
「本当にしつこいな、ドラン爺は」
いい加減この状況にも飽きてきたので止めようとしましたが、止まってくれません。
しつこい老マスターを如何にかしないといけないようですね。
個人的にはこのまま帰っても良いのですが、女将さんに迷惑が掛かりますからね、ここは何とかしちゃいましょう。
自分の蒔いた種を刈り取るとも言いますが。
「支部長さん、よろしいですか?」
「なんじゃ?」
「アイデア料に幾ら出してくれるのですか?」
「はっ、出すわけないじゃろ。もう内容は聞いてるしの」
「その発言だけで大体解りました。では、そのままやってみてください。間違いなく失敗しますよ」
「どういう事じゃ?」
「ここからが本当の交渉です。成功する秘訣を幾らで買いますか?」
「内容を聞かずに決めれるものか。先に言え」
「そうですか。帰りましょう、女将さん。商業ギルドにも話をしに行かないといけませんし」
「ああ、そうだね」
「ま、待つのじゃ!」
ふふふ、まさかあの話だけで上手くいくと思ったのですかね、この人は。
確かに最初は儲けが出るでしょうが、すぐにダメになりますよ。
一番大きな広場にある女将さんのお店、ネルルの安らぎ亭が加わらないんですから。
それに商業ギルドが冒険者ギルドの言いなりになる訳ないですしね。
冒険者ギルドだから出来るネタがないと継続して儲かる事は出来ないんです。
少しでもお金を出すと言ったなら、そこまで思いついていると予想出来ましたけど、私が言った内容だけでいけると思ってたのでしょうね。
さて、どういう風に持っていきましょうか。
妖精少女サクラの腕の見せ所です。
その後、1時間ほどで話が纏まり、私の冒険者ランクは9になりました。
やっきゅぃー!
お読みくださってありがとうございました。
かなり順調にどんどん書けてます。
気が付けば40kbを突破。
まだまだ行けそうですが、腕が痛くなってきたので休憩中です。




