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「ようこそ、冒険者ギルドリファール支部へ。ご用件をお伺い致します」
「冒険者登録をしたいのですが」
「え?」
冒険者の街リファール王国の冒険者ギルドに到着した私は、早速冒険者登録をしようと比較的空いていた受付に並び、その旨を伝えましたが何故か驚かれました。
この驚いた方は獣人と呼ばれる獣のような外見を持つ人種であり、見た目だけで言えば二足歩行の動物です。
最近の二次元では人間ベースに耳や尻尾などの部位だけが動物なのが主流ですが、ファンタジア世界の獣人は若干デフォルメされてますが獣がそのまま二足歩行タイプです。
最初獣人さんたちを見た時はそりゃあもうびっくりしました。
私は元日本人オタク少女ですし、擬人化動物を想像してましたよ。
それがまさかの二足歩行の動物で、流暢に日本語を話して器用に物を持つ姿を見た時は、思わずきゅぃーと言っちゃいました。
ちなみにファーストコンタクトはこの国に来る途中で寄った村で、そこは犬系獣人さんたちの集落でした。
ここまで話しましたし、獣人さんたちの事をもう少し詳しく解説しておきます。
まず、種族としては人種となりまして、種族名は人種獣人●族となりまして、●の部分に動物の名前が入り、犬系の獣人さんだと人種獣人犬族となります。
言語は人種ですから日本語を使い、手足の指の数は5本で太く、手の平に肉球、足の踵が肉球、という構造になっています。
全身が獣毛で覆われており、人間たちと同じように衣服を着用し靴を履く習慣があります。
獣人さんたち全体としてどの動物系も身体能力が高く、魔力が低めというのが特徴となってます。
デフォルメされていると言いましたが、ちょっとリアルな動物の着ぐるみ、とイメージしていただけば解りやすいかもしれないですね。
だって最初の出会いで驚きはしましたが、どこのテーマパーク?と思っちゃいましたしね!
そして現在私の目の前で驚いているのは人種獣人狸族の女性で、眼鏡を掛けているのにとっても優しそうな雰囲気のある人でした。
眼鏡の女性って知的でクールなイメージなのは私だけではないですよね?
あ、眼鏡っ娘としたらまた違いますか。
「失礼しました。登録希望者でよろしかったでしょうか?」
「はい。エルフのサクラと申します。エルフでも冒険者には成れますよね?」
「重犯罪履歴が無い、または犯罪者奴隷以外の12歳以上であれば登録は可能ですよ。年齢は大丈夫ですか?」
身長から換算すればぎりぎりと思われた。
ち、小さくて悪かったですきゅぃー!
はっ、すみません、噛みました。
しかし、私の実年齢はまだ1歳なのですが、これって妖精種とかは冒険者になったりしないからの問題なのでしょうか?
確かにこの国に来るまでも人里で妖精種は一切見掛けませんでしたから、あり得るかも。
まさか実年齢をいう訳にはいかないので、ここは13歳としておきましょうか。
でも、人種だと成人って何歳からなのでしょうか?
「私は13歳です」
「では登録は可能ですね。ですが成人年齢に達していませんので、依頼を受ける場合に制限が発生しますのでご了承くださいね」
おおう、やっぱり13歳だと子供扱いでした。
まあ、下手に16歳とか言っちゃうと信じてもらえずにもめそうでしたからこれで良かった、と思っておきましょう。
前世で女子高生やってる時も、それで色々面倒でしたよ、ええ。
「解りました。登録お願いします」
ちょっと問題がありますが、冒険者登録はすんなりと済みました。
ラノベなどでよくある何かの機械の登録にステータスを開示する、みたいな物は特になく、自己申告でデータを打ち込みタグを作るようです。
ただ、犯罪者や奴隷だけはしっかり調べるようで、水晶見たいな球体型の魔法道具で名称を調べるようです。
実は犯罪者や奴隷となった者は名称にそれが記載されるそうなのです。
犯罪者の場合は国などがこの人物は犯罪者だと認知した場合のみですから、どこかで殺人をしてもバレていなければ名称には記載されないようですね。
要するに広く認知されるという称号や二つ名とかと同じシステムのようで、この水晶球で犯罪者かどうかだけを判別出来るそうです。
奴隷の場合は奴隷の首輪や烙印が刻まれて隠す事が出来ないので、見ただけで解るのですぐに認知されて名称に記載されるみたいですね。
「はい、これで登録は完了です。これでサクラちゃんも今日から冒険者ですよ」
「ありがとうございます」
この受付嬢さんは私が13歳と解った途端に子供扱い、敬称がさんからちゃんに変わりました、あと言葉使いも。
そして子供と思っているからなのでしょうか、冒険者ギルドの仕組みなどの説明も求めていないのに事細かく聞かせてくれました。
それによるとこの冒険者ギルドが発行するタグには名前、名称、冒険者ランクが記載されている。
冒険者ランクは1~10の10段階で、まずはランク10から始まり依頼を達成した回数、依頼達成難易度によってランクが上昇。
ランク10では人里内の雑用系や採取系しか受けれない、ランク9で討伐系が解禁、ランク8で遺跡調査系やダンジョン攻略系が解禁、ランク7以上で護衛系が解禁される。
ただし年齢14歳以下の未成年者の場合、ランク8までしかなれず、しかもダンジョン攻略系は成人の同行者が必要となる。
冒険者になると月会費代わりに税金納付が義務付けられており、1月辺りランク毎に5銭貨を1年に分割か一括で払う。
冒険者ランクは基本的に下がりはしないが、犯罪者になるか依頼失敗が続くなどで強制退会される事もある。
冒険者得点として、冒険者タグは身分証明書代わりになり、ギルド直営の施設店で割引サービスがある。
最大の得点は、ランク3以上の冒険者は各国で種族に関わらず貴族扱いを受ける。
「だからみんな頑張ってランクを上げてるのよ。平民が貴族になる数少ない手段だからね」
「は、はぁ」
うん、説明を聞いて取り敢えず一言。
テンプレはもう満腹きゅぃー!
「それでサクラちゃん、早速依頼を受けてみる?」
「あ、それでしたら採取した薬草などがあるのですが」
「そうなの? あ、説明し忘れていたわね。本来は依頼板に貼ってある依頼表を持ってきてもらうのよ。でも雑用系だけは貼り出していないから受付でね」
「それでしたら依頼表を取ってきて、納品所へ持っていけば良いですか?」
「今日だけはここでいいわよ。私、こう見えても鑑定が使えちゃうから」
おお、鑑定スキル持ちでしたか。
そういえば受付嬢さんに鑑定を使ってませんでしたね、えい。
お名前はニムさんで年齢は19歳、特に変わった経歴はない、普通の狸獣人さんのようです。
「そうですか。では、こちらをお願いします」
ここに来るまでに用意しておいた薬草の束を20ほど妖精布製の鞄、妖精鞄としておきますが、取り出してカウンターに置きました。
流石にこの量が出てくるとは思ってなかったのかちょっと顔が引き攣ってましたが、鑑定していくとどんどん笑顔になっていきました。
「凄いわ、サクラちゃん。全部鮮度や品質が最上ね。これだったら全部で銅貨20枚になるわよ」
「では全て納品します。あ、そういえばお金を貯金出来るのですよね?」
「ええ、出来るわよ。幾らか入れるの?」
「いえ、聞いただけです。あ、序に何か雑用系、そうですね掃除とかその手の依頼はないでしょうか?」
銅貨20枚を受け取って妖精鞄に入れ、まだまだ日暮れまで時間があるので依頼がないか聞いてみました。
「そうねぇ。あ、宿屋とか決まってる? もし決まっていないなら報酬が1回の宿泊と食事が無料っていうのがあるんだけど」
「酒場を兼ねた宿屋ですか?」
「ええ、料理が美味しいと人気の店なのよ。どう?」
「ではそちらにします」
こうして、冒険者となって初めての依頼を受けたのでした。
なお、受付嬢さんにはちゃんと自己紹介をしてもらいましたよ、最後にですけどね。
冒険者の街リファール王国は巨大な都市国家で、街の中心には小さいながらも王城が存在し、王国というぐらいだから王族が住んでいます。
この国の種族比率は人間種が半分ほどで、あとはエルフや獣人、ドワーフに小人など様々な人種が生活しています。
他国と同じような施設はもちろんの事、特に冒険者を相手にした施設が充実しており、この国にいる人のうち半分は冒険者ギルド関連の者と言われているそうです。
そして初めて訪れた国、コンテラクト王国とは違い奴隷制度が表にはっきりと表れた国でもあります。
コンテラクト王国は奴隷となった者を外に出すような事をしない風潮でしたが、リファール王国では奴隷は安い労働力という位置付けゆえによく見かけます。
先ほどまで居た冒険者ギルド内でも数名の奴隷たちが居ましたし、露店の販売員なども奴隷がいました。
この国では人権は無いけど、普通の人と同じ扱いをするみたいですね、ただし犯罪奴隷は除くようですが。
なお、借金奴隷や軽犯罪奴隷である年数奴隷には首輪、重犯罪奴隷である永久奴隷には顔のどこかに刻印が刻まれており、これらを隠すと死罪になるそうです。
「すみません、これ1つもらえますか?」
「あいよ、銭貨1枚だ」
「はい、どうぞ」
「まいどあり」
ギルド前の広場で出ていた果物売りの露店からリンゴを1つ購入し、一齧り。
うん、中々瑞々しくて美味しい。
「ちょっとお聞きしたいのですが」
「ああ、いいよ。何だい?」
さて、冒険者ギルドでは聞き辛かった事を聞いちゃいます。
住民からの情報収集は基本ですからね、何となく恰好付けたくて買い物をしちゃいました。
「あー、ギルドか。まあ、この国というか街が出来たのは冒険者が集まったからだし、誰も否定はしないんじゃないか?」
「それは王族や貴族よりも力があってもですか?」
「やっぱりお嬢ちゃんは外から来た子か。そもそもこの国の国王選定が特殊でな、冒険者がすげえ関わってるさ」
「どのようにでしょう?」
冒険者やギルドの評判を聞きたかったのですが、それよりも興味深い事が聞けました。
冒険者の街リファール王国では王は世襲制ではなく、王が崩御するか4年毎に貴族の中から選出し直すという制度を取っているそうです。
その選出方法とは各貴族が指名した冒険者たちと共にこの街の地下に広がるダンジョンに潜り、定められた条件をクリアすると貴族が王となる。
ゆえにこの国では冒険者は切って離せない存在と言われているそうですよ。
そもそもこの国の貴族は元冒険者だったりその子孫なので、冒険者を蔑ろにする事は絶対にないらしい。
「だからだな、冒険者たちは王選に参加して貴族になり、そして王を目指すってのがこの国だな。今の王様も元冒険者なんだぞ」
「それはすごいですね」
本当にすごいと思います。
そんな制度でよく国が成り立ってるな、という意味ですが。
もしかしたら文官は官僚制を採用していて貴族たちに運営をさせていないのかも知れないですね。
冒険者ギルドと冒険者の関係を、ギルドが文官、冒険者が王や貴族と置き換えたもの、と言えるかもです。
「だからお嬢ちゃんも頑張れば貴族になって王になれるかもだぞ?」
「ふふ、それは狙ってみたくなりますね」
「おう。もし貴族や王になったら御贔屓にして店でも持たせてくれや」
「そうですね、そうなったら」
お互いにあり得ないと思いつつも笑顔でその場を去りました。
「ここが依頼先の宿屋ですか」
その後色々な露店を冷やかしつつ、依頼先である宿屋に到着しました。
ここは冒険者ギルド直営ではなく、人間の女性が経営する美味しい料理を出す酒場を兼ねた宿屋で、店名もその女性から取っているそうです。
「ん、なんだ、お嬢ちゃん? 今日家は休みだぞ」
「ああ、ここはネルルの安らぎ亭で合ってますか?」
「そうだが。なんだ、泊り客に親でも居るのかい?」
「いえ、ギルドで依頼を受けた冒険者です」
私はずっと被っていたフードを外し、首から下げていた冒険者タグを見せました。
「エルフのサクラと申します。本日はよろしくお願いしますね」
「え、お嬢ちゃん冒険者だったのかい?」
鑑定結果からこの人がこの店のオーナーであるネルルさんで、とっても美人な元冒険者さんでした。
お読みくださってありがとうございました。




