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6-7

謁見の間、正式には何と名付けられているかは知りませんが、そうとしか思えないような大広間へと私は入りました。


天井は高さ10mぐらいで、トウカと思われる大樹が根付く大地、ファンタジア世界の地図と思われるものが描かれている。


正面に目を向けると壁にはタペストリーが掛けられおり、コンテラクト王国の紋章が豪華な金糸で表されていた。


そして王が王である証、玉座が数段高い位置にあり、現在その主は見当たりません。


両壁際にもいくつか紋章入りのタペストリーが飾られており、立ち寄った城塞都市の紋章もありますからこれは各都市を表すものなのでしょう。


そしてずらりと並ぶ貴族や騎士たち、柱の陰になって見え辛いが召使いと思われる文官も控えているようです。


私が入室すると一斉に彼らの視線が集まり、口々に何かを話し始め、ほとんどの人がマイナスの感情を宿した目で見ています。


まあ、リモートセンスを使ってますから小声だろうと全部聞こえちゃうのですけどね。


一応内容をチェックしつつ進むと、私が入るために開いていた扉が閉まり、扉の前に鎧姿の近衛兵が陣取りました。


窓なし扉も見張りあり、と誰も外に出す気はありませんよ、と言いますか、私を逃がさないよ、という布陣です、ありがとうございました。


あ、でも王や宰相たちが入室してくる別の扉、そして文官が出入りする扉は柱の陰で見え辛いですが存在していますので、完全な密室ではないですね。


まあ、そちらから私が退出する事はないでしょうけど。


私は誰も止めないからそのままゆっくりフカフカのカーペットを進んでいます。


だって連れて来た武官の人は謁見の間での作法を教えてくれませんでしたし、私からも聞いてませんが。


なのでオタク知識と映画のワンシーンを思い出しつつ、自分なりに距離感を考えながらの進行です。


そういえば定位置に付いたら膝を折って片膝立ちか両膝立ちで頭を垂れておくのですよね、こういう場合。


それとも土下座に近い形だったかな、どうだろう?


でも、それって男性だけで女性ってしてました?


うーん、頭の中に浮かぶのは男性かもしくはパンツスタイルの女性だけなのです。


スカート姿の女性が謁見の間で王様と話すシーンって、ほとんどが王様が先に居てカーテシーな会釈だけだった気が、はっきり覚えていませんね。


これってまずい?


と、思いましたが、よく考えたら私はこの国の民でも無いわけですから王に頭を下げる必要はないのでは?


疑問ばかりが浮かんで考えがまとまりませんので、このまま立って待つ事にしましょう。


どうせ口煩い人が注意してくるでしょう、言う事を聞くかは別として。


そう思って歩いていましたら、定位置を超えたようで口煩い人が声を掛けてきました。


「おい、エルフ。何故止まらぬ」


あ、登城審査のときに絡んできた傲慢武官の中年男性ではないですか。


「ここで良いのですか?」


「はん、やはり蛮族だな。礼儀作法を知らぬと見える」


公衆の面前で女性を罵倒するのは礼儀に反しないようですね、凄い国です、ここは。


さて、一応サポートが入ったと好意的解釈をしておいて止まる事にしましたが、周りをじっくり見てみると、見た事のある顔がちらほらと。


私に言い掛かりをつけようとした貴族たちはもちろん、弟さんも居たりしますね。


彼は上級騎士のようですからこの場に招かれたのかな?


平民出身なのに謁見の間に招かれているって凄い事な気がします。


さて、彼は私を見ながら唯一ニコニコと善意100%の笑みを浮かべていますが、良くそんな表情が出来るものだなぁ、と思っていたら先ほどの傲慢武官が再度声を掛けてきました。


「おい、膝を折らぬか小娘!」


あ、やっぱり女性でも膝を付いて待機なのですね。


でもなんだか癪ですし、このまま待つ事にしましょう。


「それが人間の礼儀作法ですか? ずいぶん野蛮ですね」


「「「「「「「「「「「「「「「「何だとっ!?」」」」」」」」」」」」」」」」


きゅぃー!?


謁見の間中の人たちから唱和なリアクションが入り、あまりの音量にびっくりしちゃいました。


しかも口々に私を罵倒し始め、ってそれは元々ですが、声を大きくしての罵倒大会です。


一部抜粋すると、エルフの癖に、小娘が調子に乗るな、尊いトウカの色を纏うとは何たる非礼、などなど。


まあ、しばらく続きそうですから、うるさくない程度に風魔法ボイスで音量をカットしてしれっと前を向いて聞いておきましょう。


リモートセンスで360度全部見えてますしね。


「おい、エルフ。先ほどの発言はどういう事だ?」


今度は文官と思われる中年男性が声を直接掛けてきましたが、この人も傲慢そうです。


序でに言うと弟さんは私に座るようにという合図ぽいジェスチャーをしてますが、無視です無視。


取り敢えず聞かれたので返答だけしておきましょうか。


「膝を付いて頭を垂れて待つ、が作法と言いたいのですよね?」


「そうだ。解っているならさっさとせぬか」


「それが野蛮だと言っているのです」


「何故それが野蛮なのだ!」


また外野がやんややんや言ってますが、無視しまして続けます。


「それは人間たちのルールなのでは? それと王が他国の王族と謁見する場合にそのような作法を求めるのですか?」


「な、何だと?」


うん、流石にこの発言にはがやがやに変わりましたね、外野も。


私は公言、ってジュリアナさんには嘘付いちゃいましたが、他の人には私が王族だなんて一言も言ってないです。


でも、そうと勘違いしていた人は何人かいましたので、こういう発言をすると勘違いするかな、と思って言いましたが効果は抜群だったようです。


罵倒が減り、他国の王族かも知れない相手に何と言っていたのかを考えて顔を青ざめる人が出てきました。


あ、弟さんは目を見開いて言いますが、やっぱりどうでも良い事です。


「まさか、お前が王族・・・いや、そもそもエルフなど蛮族、関係ない! いいから跪け!」


「理解力の足りない方ですね。あなたたち人間からするとエルフは礼儀を知らない蛮族なのでしょう? だったら人間のルールに従うと勘違いする事を改めてはどうですか?」


「な、な、な」


「そもそもこの国の王族を守った者に対して先ほどからの言動、どちらが蛮族なのか解らないですね」


そう、私が言う事を聞く気がないのは、これに付きます。


何故助けた私が下手に出る必要、お伺いを立てるような真似をしないといけないのでしょうか?


それが社会だ、とは解りますが、私はエルフに擬態してますが妖精さんですし、自由にさせてもらいますよ。


赤眼様も自由にしてよいって言ってくれましたからね。


もちろん、赤眼様を始め、主様やアース世界の神様には礼儀を尽くしますよ。


心から尊敬してますので。


「もうよい。時間の無駄だ」


私の人間蛮族発言で怒り心頭なためかシーンとなっていた謁見の間に、低く響く声が広がりました。


力強いその声を発したのはどこの法王様ですか、と言わんばかりの恰好をした初老の男性で、玉座に向かって歩いております。


いえ、その前を歩く男性、略式王冠を被っていますからランドルフ王だと思われる人の後ろを歩いていますね。


正直、王様よりも法王様ぽい男性の方が存在感があります。


鑑定してみると、やはりランドルフ王と法王様ぽい人は噂の宰相でした。


うん、宰相さんは交渉人とか外交官などの対人関係職のスペシャリストのようで、現在は文官の最上級職である宰相という職業に就いておりました。


もう、この人は宰相さんでいいです、名前とか興味ないですし。


そしてランドルフ王が玉座まで辿り着くと、宰相は1段下に降り、手を前に突き出しました。


「これより謁見を執り行う」


その一声で謁見の間中の人たちが一斉に会釈し、ランドルフ王は座りました。


やっと謁見の始まりです。


待たせすぎですよ、もう!




「では始めてくれ。宰相」


「はっ。そなたがエルフのサクラか?」


「はい、私がエルフのサクラです」


まるで生気を感じさせない声、ランドルフ王の声明で謁見が開始されました。


やはり王と他が直接会話する事はないようで、宰相が全て取り仕切り、会話もするようです。


ランドルフ王は死んだ魚のような瞳で私を見ているだけで、何故ここに居るのか不思議でした。


多分興味がないのだろうな、と思いながら宰相とのやり取りを続けます。


「お主は先だって王族であられるエリーゼ様、クルルーシュ王女殿下、クミルーゼ王子殿下を賊の凶刃から守った功績がある。これはその功績に対する謁見である」


なるほど、呼び出したのが謁見の間だから何かな、と思ってましたがそれですか。


それだったらますます先ほどのここでのやり取りはおかしいですよね。


そんな功労者に対して罵倒とかやって良いのかな?


まあ、宰相の発言にここに居るほとんどの人が目を見開いて驚いていますし、私が賊を倒したとか知らなかったのでしょうね、静かながらも騒がしくなりましたし。


なお、一部の人たちは知っていたようで、私が入室してきた時から敵意むき出しでこそこそしゃべってましたけどね、あいつの所為で、みたいな事を。


ちゃんとその人たちは鑑定をして誰というのはチェック済みです。


「この国の者であれば爵位と褒章、そして品を褒美として授けるのだが、お主は違う。ゆえに品のみ授けよう」


すると文官が私に近寄ってきて、トレーに乗った豪華な意匠を施された袋を差し出してきました。


おそらく金品が入った袋なのでしょうが、袋だけでも相当な額だと思います。


受け取りはしませんが。


「褒美は無用です」


私の発言に再び騒めきの声が強くなりました、何様だ、みたいな声ですね。


「ほう。金貨10枚と宝石を用意したのだが足りぬと申すのか?」


10年分と宝石とか結構な額だと思いますが、王族を助けた褒美としては妥当なのかな?


金額の問題ではないから別に良いのですが、その辺りでこの国の程度が知れちゃうと思います。


「私は褒美は無用と言ったのですよ」


「どういう事かな?」


「私はただ降りかかった火の粉を払ったのみ。クルルーシュ王女殿下からの召喚を受けてこの城に滞在し、襲われたがゆえに撃退したまでです。その行為に褒められる謂れはありません」


「ふむ、要らぬと申すか」


「ええ、そのように申しておりますが」


確かにクルル姫、序に側妃さんとミュゼ王子は助けましたがそれはその気があっての事じゃありません。


本当に火の粉を振り払っただけだし、助けようと思ったのはクルル姫だけなんですよね。


だから貰うのもなんだかな、と思ってます。


後、上から目線ってのも気に入りません。


こんな事を考えているぐらいだから、お前は何様だ、と思われても仕方がないですね。


宰相はエルフだから蔑んでいたようですが、私のこの発言に対して怒りを覚えたらしく、目付きが鋭くなり、危険感知に反応するようになりました。


もちろんランドルフ王と弟さん以外からは大なり小なり敵意を向けられてますよ。


そして宰相はよほど我慢ならなかったのか目に魔力を集め始めました。


「お主一体何者なっ、なぜ鑑定が弾かれるのだ!?」


どうやら鑑定スキルを使うときには瞳に魔力が集まるようですね。


でも視覚だけでは発動しないから他の感覚にも魔力は行き渡っているでしょうね、特に鼻と耳には。


視覚が重要視されるから目に集まったように見えたのかも知れません。


しかし鑑定を使うのは良いですが、使った事をばらしちゃダメだと思います。


鑑定を使った事実とそれが弾かれた事実で謁見の間が騒然としてますよ、収拾がつかないほどに。


「ええい、怪しいやつめ。近衛、このエルフを捕らえよ!」


完全に切れちゃった宰相が捕縛命令を出したものだから、待ってましたとばかりに近衛兵、騎士服姿や鎧姿問わず近寄ってきました。


うーん、動きを見る限り、攻撃魔法を連打すれば全員倒せますね。


しかし現在攻撃魔法を使わない戦い方の修行の身、ここは職業を魔法戦士に戻して白兵戦で抗いますか。


そんな戦う気満々な私たちでしたが、そこに割って入る青年が現れました。


その光景に皆の動きが止まるとか、まるで勇者みたいな登場の仕方ですね、流石ニコポなチート持ちです。


「おやめください! この方は救国の徒なのですよ。それを」


「あ、邪魔なのでどっか行ってもらえます?」


「え? サクラさん、何を言って」


「こんな状況になっているのはあなたのせいですよ、レドリックさん」


「な、何を、サクラさん?」


「人間のルールに従わない私にも落ち度はありますが、あなたが悪いのですよ?」


「そう思うならサクラさんが従ってくれれば、って何故僕の所為なのですか?」


「あなたが私の事を話したからここに居る破目に遭っているのですよ。騎士の癖に約束を守れない、命の恩人からの願いを破る者。それがあなたです」


「う、そ、それは、クルル姫が」


「ほら、そうやって他人の、しかも仕えるべき王族の所為にする。どこまで卑怯なのですか、あなたは」


「そ、そんなつもりは」


ええ、本当に失望しているんですよ、あなたには。


確かに騎士だから国、王族から頼まれたら断れないでしょう。


でも、あなたを助けてほしいと願ったのは国や王族ではなく、ジュリアナさんです。


「私はジュリアナさんに請われあなたを助けました。私との約束を守らなかったという事は、ジュリアナさんとの約束も守らなかったという事です。増々失望しました。目の前から消えてください」


目の前で跪いて私を呆然と見る彼を無造作に掴み、あまり人がいないところへ投げ捨てました。


正直今から行う戦闘には邪魔でしたので退けましたが、あんな人でもジュリアナさんの弟分ですからね、巻き添えで死んだら彼女が悲しみます。


だから乱暴でも排除しておきました。


「さて、邪魔な者が居なくなりましたね」


汚れてないのに両手を叩くと右手の平を突き上げ、妖精魔法を使って桜吹雪を発生させて私の姿を隠す。


「人間たちよ」


桜吹雪が止み現れたのは東方様式のトウカを思わせるドレスから、掲げた右手に刺突剣を持つ騎士服の少女。


「これがあなたたちの礼儀作法というのなら、受けて立ちましょう」


突然の桜吹雪と衣装が変わった私に唖然としていた謁見の間の人々。


そして私の宣言を聞い近衛兵たちは口々に罵詈雑言を言い、再び敵意を滾らせた。


さあ、始めましょう、謁見の間で行う舞踏会を。


エスコート役は多いですが、私は中々の踊り手ですよ?


鞘に納めたままのレイピアをランドルフ王に向け、笑みを浮かべて宣言した。


「どちらが野蛮なのかハッキリさせましょう。さあ、掛かってきなさい!」









折角の謁見の間での大乱闘なのですから演出は大事ですよね。


私は空魔法ストレージを使っての早着替え、直接着用物を出し入れするこの変身シーンの再現に力を入れて練習し、こんな時を待っていたのです。


舐めてるのか、と言われそうですが、折角やるからには見栄えのする戦いをしたいです、だって私はオタク少女ですから。


さあ、やっちゃるですきゅぃー!

お読みくださってありがとうございました。


お蔭様で総合評価が400pt超えました、ありがとうございます。


これからもよろしくお願いします。

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