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6-4

入国や登城審査と聞いて思い浮かべるのは、名前や出身地の聴取、所持品検査ぐらいです。


そしてこの国の審査も同じようなものだったのですが、やっぱりちょっとした騒動になりました。


付き添っていたケベルさんがこっそり私がエルフの王族かもしれないと、審査官に言っちゃったものだからそこでまず騒ぎが。


王族専用紋章官を呼んだ方がいいだの、宰相に連絡した方がいいだのともめていましたが、女王殿下を待たせて良いのか、という私の一声で次に進みました。


出身地に付いては話せる訳がないので拒否しましたら、またもめましたのでエルフは氏名や出身の森を言わない、という嘘ストーリーを話して回避。


これには問題があるかと思ったのですが、今まで訪れたエルフたちも拒否していたようで、取りあえず空欄です。


そして所持品検査ですが、やっぱり内容量に対して鞄が小さい、これは魔法鞄では?


と大騒ぎになりまして、爵位持ちの貴族などが集まって寄越せとか言い始めました。


やっぱりそうなるかぁ、と呆れながらも目の前で叫ぶ男性を見ていたのですが、どうやら時間が掛かり過ぎだったようでお迎えの人がやって来たのです。


「お前のようなエルフの小娘が持つような代物じゃない! 私こそが持ち主に相応しいのだ! だから」


「騒がしいですね、一体何事ですか?」


まるでブリザードが吹き込んだかのような冷たさを纏った声で、現れたのはメイド服ぽい服装の女性でした。


所作が綺麗で背筋もピンとしており、隙が少ない、相当の使い手、そんな雰囲気を持つ方です。


これってもしや戦闘メイド?と思って鑑定してみたら、やっぱり相当な女性でした。


==================


名前:フェンネル・ラクト(女/27歳) 名称:― 種族:人種人間(LV29) 状態:普通


所属:コンテラクト王国/王城従事隊/王族隠密部隊/第一王女専属 職業:バトルメイドLV7(経験職:王都民/戦士/ハウスメイド/メイド)


==================


この場にいる人間たちの中で一番強かったです。


そして何気に名前がラクトとなっていますが、もしかしたら王家と縁のある血族出身かもしれないですね。


「む、これは侍女長殿」


「なぜ武官であるあなたが此処に?」


「い、いや、そちらのエルフが」


「この女性は王女殿下の呼び寄せた方ですが、何か問題でも?」


「な、ない」


「であれば早々に持ち場へ戻られては?」


「う、うむ。失礼する」


お、おお。


何と偉そうな貴族を追い払っちゃいましたよ、やりますね侍女長さん。


その事には感謝しますが、隠しきれていない敵意に危険感知が反応していますよ?


「それで、審査は終わったのですか?」


「は、はい!」


「でしたらもう良いですね。それでは付いて来てください」


しかし侍女長なんて役職を与えられている人が迎えに来るとかどういう事なんでしょうね?


さておき、ケベルさんともお別れでしょうし、教えてもらった通り会釈だけして付いて行きました。




目の前を足音、衣服の擦れる音すらさせずに歩く侍女長さんの後を黙って付いて歩いていますと、やっぱり珍しいのか注目の的になってます。


城内だから安全なんてこれっぽっちも思えず、むしろ危険な気がしましたのでリモートセンスを発動して周囲を警戒して付いて行きました。


そうやって付いて行くと、兵士や貴族たちだけではなくメイド服ぽい衣装の女官たちまで立ち止まってこちらを見てきます。


見たりこそこそ話すだけなら問題ないのですが、やっぱり傲慢な雰囲気で近寄ろうとしてくる貴族がそれなりにいたりしました。


面倒なので風魔法ノイズで強制退去してもらいましたけどね。


何か言い出して近寄ろうと踏み出したら気絶して倒れる、そんな光景が其処彼処で発生しております。


「何時もこんなに騒がしいのですか?」


「まさか。今日はお客様がいらっしゃっているからでしょう」


「なるほど。回答ありがとうございました」


嫌味には嫌味で返すのがメイドの流儀です、みたいなやり取りをしちゃいましたが、これだけ騒ぎになってるのに我関せずで進む侍女長さんが怖くなっただけですきゅぃー!


あ、恐怖で震えて噛みました、すみません。


そんな調子で歩く事十数分、無駄に長い通路や階段が多いので、やたらと時間が掛かりました。


第一王女が居る王宮だから城と別棟にあるかと思ったのですが、どうやら城内に私室があるようですね。


城の作りって様々ですけど、1つの建屋内で全てが収まったタイプやそれぞれ独立した建屋を持つタイプと色々ありますからね。


この城は全てが収まるタイプで、しかも王宮、王族が住む区画が上層階にあるもののようです。


だって城が見た感じだと5階建ぐらいですけど、現在私たちは4階まで上がってきてますし。


この国って地震とかほとんど起きないからこういう作りにしているんだろうな、など考えてました。


そうでもしてないと会話がないから間が持たないんですもの。


あ、ちなみに王城内の調度品ですがかなり豪華で、アース世界のベルサイユ宮殿とかあんな感じを想像してもらえれば良いかと思います。


うん、贅沢好きの王族なんですね、コンテラクト王国は。


建国100年にしてはちょっと異常な気がしますが、まあ、これも1つの情報という事で。


「こちらに王女殿下がいらっしゃいます。ここは私室になっておりますからそれほど礼儀作法は慇懃でなくて構いません」


「それは助かります。エルフですから人間の礼儀作法は知りませんからね」


裏の意味は、どうせ作法を知らない田舎者だろ、人間の常識が世界の常識と思うな、というやり取りです。


はい、怖いですよねー、貴族たちのやり取りは。


まあ、私はオタク知識を活かしてやってるだけですが。


私とのやり取りで表情を全く変えなかった侍女長さんは扉にノックし、中の人とやり取りした後、中から扉が開きました。


そして目に飛び込んできたのはピンクの世界。


調度品から床、天井、壁、全てがピンク系統で染められた世界でした。


少女趣味全開ですね、ありがとうございました。


お前もピンク多いじゃん、という声は聞こえません、きゅぃー。




「まあ、そのお嬢さんがレドリックが言っていたエルフさん?」


ピンクの部屋の主、おそらくクルル姫と思われる可愛らしい少女がソファーから立ち上がって声を上げました。


気分が高揚しているのかキーは高いですが、優しい年齢通りの若い少女の声です。


見た目としてはお人形さんと形容されそうな可愛い服装と髪型で、まさにお姫様でした。


「はい。こちらがエルフのサクラ様です」


手の動きで入ってこい、と指示した侍女長さんに従い入室し、リモートビューイング越しに部屋の中を探索。


部屋の内部にいるのはクルル姫の他にメイド服の女性が2人と天井裏に何者かが2人ほど。


隣に続く扉があり、そちらまでは確認できませんでしたが、それほどおかしなところはありませんでした。


天井裏の人たちについてはありがちな隠れた護衛なんだろうなぁ、と思いつつも意識をそちらに集中し、確認しましたら口元を隠した男性たちでした。


あれ?


これって護衛じゃなく暗殺者じゃ?


そう思いましたので風魔法ノイズとサウンドを使い、音を立てずに気絶させておきました。


いやぁ、部屋を覗くための隙間ですから魔法の効果を届かせるのが面倒な事この上なかったです。


序なので鑑定をしてみたら、ある意味安心な所属でこの国の隠密部隊、第一王子専属、職業アサシンでした。


うん、黒ですよ黒、まっくろくろすけ、出てくるなー、です。


さて、これはどうしたものかな?と思案しておりましたら、侍女長さんが再度手を動かし、合図を送ってきました。


「良い匂いがしましたので少々気がそれていました。エルフのサクラと申します」


本当に良い匂い、これってトウカの花の香ですよね。


誰が炊いてるのか知りませんが、良いセンスしてますよ!


「まぁ、ありがとう。この香は私のお気に入りなの。さあ、こちらにいらして」


「それでは」


クルル姫と思われる、ってもう面倒だから鑑定使っちゃいましたがやっぱりクルル姫本人で、若干気になる状態異常をしておりました。


なのでこの部屋にいるメイドな2人にも鑑定をしましたが、こちらはハウスメイドな10代の少女たちで、侍女長さんみたいな特殊な経歴は見当たらず。


取り敢えず近々の危機はないと思って近寄りましたらソファーの前にローテーブルがありまして、茶会をイメージさせるようなお菓子類が乗っておりました。


なんとなーく、それらにも鑑定を使いましたらまたもや気になるものが。


こ、これってクルル姫がかなりやばい状況?


それに私が来たタイミングでだとしたら犯行を私に押し付けるつもりでは?


とか頭に過り、私は冷や汗をかきました。


い、いきなり面倒ごとのオンパレードですきゅぃー!?




「初めましてエルフのサクラ様、ようこそいらっしゃいました。私はクルルーシュ・エル・コンテラクトです」


向かいのソファーを勧められたので座りましたが、この位置、テーブルの真上がアサシンたちが居る場所です、ありがとうございました。


引き攣りそうになる頬をなんとか抑え込み、私は笑みを浮かべて会釈しておきました。


「さあ、よろしければどうぞ。このお菓子も私のお気に入りなの。とってもおいしいのよ?」


「そうですか」


毒入りのクッキーやケーキを食べたくないのですが、どうしたらよいでしょうか?


そう、このテーブルにあるお菓子たちには少々厄介、毒性の弱い、それも本当に弱い毒が盛られており、おそらく天井裏のアサシンたちが垂らしたものです。


一口食べただけでは全く解りませんが、食べ過ぎるとどんどん毒が溜まっていき、一定量を超えると昏睡状態に陥る毒なのです。


おそらく毒見とかもちゃんとしたと思いますが、一口程度でしょうから気が付かなったか、毒見後だったのでしょうね。


そしてクルル姫はそれなりに食べちゃったと。


さて、これは何とかしないと私が危ないです、毒じゃなくて犯罪者にされるって意味で。


「頂く前によろしいでしょうか?」


「ええ、どうぞ」


「何とお呼びすれば?」


「あら、そうね。私の事はクルルと呼んでもらいたいわ」


この発言に侍女長さん、いつの間にかクルル姫の真後ろに移動した彼女から視線で言うな、という指示が来ました。


「そうですか。ではクルル姫と」


「まあ!」


クルル姫は喜び、侍女長さんは殺気をあまり隠さなくなりました、きゅぃー。


「それでは頂きたいのですが」


そしてさり気なくメイドさんの1人が私に紅茶を差し出してくれまして、こちらを鑑定しましたら安全でしたので一口。


「こちらのお菓子をもっと美味しくする方法があると言いましたら、どうされますか?」


「まあ、どうやって?」


「私は料理の方も嗜んでおりまして、お菓子作りも少々自信があるのですよ。ですからエルフらしいお菓子を美味しくする魔法をお見せしようかと」


「是非見てみたい!」


とクルル姫は食いつきましたが、流石に侍女長さんがストップをかけてきました。


デスヨネー。


「姫様、得体のしれない魔法などいけません」


「ネル、エルフの魔法なのよ? 是非見てみたいわ」


「ですが・・・解りました。まずは私が試食してからです」


「ええ、それでも良いから! さあ、サクラさん、お願いできます?」


「それでは、きゅぃー」


さて、お菓子の上で手を翳し、使うは水魔法キュアとピュリファイ、風魔法ウィンドです。


キュアはもちろんクルル姫の解毒で、ピュリファイはお菓子の毒消去、ウィンドはそれで発生した水分を飛ばす作業です。


なお、演出は派手にして私とクルル姫がその範囲に入るようにしておきました。


そうじゃないと魔法が掛けられた事にびっくりしますものね、クルル姫が。


「なっ!? 無詠唱、しかも魔法名すら唱えないなんて、それに発動が早い」


魔法名はきゅぃーで言ってますよ、ちゃんと。


早さは、まあ、慣れですかね。


「ああ、無詠唱や代替発動も珍しい技術でしたね、人間たちには」


そして美味しくなる本当の魔法は妖精魔法で、甘い果実の成分を振りまいておきました。


しかもその果実は主様の果実だったりしますから、凄く美味しくなるんですよね。


孤児院の子供たちにも大人気でした。


「さあ、完成です。どうぞ」


「まぁ、本当に素晴らしいわ! 早く食べたいわ、ネル」


「お待ちください姫様。まず私が」


さて、鉄面皮メイドの侍女長さんの食べた反応は、といえば、それは言わなくても解りますよね?


甘いお菓子が嫌いな女子なんて存在しないきゅぃー!




長年一緒にいるクルル姫でも見た事がないほどの蕩けた表情を見せてしまった侍女長さん。


一瞬だけ顔を赤くしましたがすぐにデフォルトの鉄面皮に戻りました。


そしてその顔を見たから我慢できなくなったのか、クルル姫は淑女として問題ない程度に勢いよくお菓子を食べ始め、壁際に控えたメイドさんたちにも食べさせました。


私はその様子を眺めつつ紅茶だけをいただき、今回の事をどうしたものかと考えておりました。


まだ天井裏にはアサシンたちが気絶してますし、毒が盛られていた事もそうですし、何とかしないとなーと。


そう思っておりましたらクルル姫が突然立ち上がりました。


「そうだわ。このお菓子をミュゼにも食べさせてあげないと」


「姫様、突然立ち上がるのは」


「こうしていられないわ。ネル、サクラ様をお願いね。私は届けてくるから」


「そのような事は私たちの方で」


「私が直接届けたいの!」


「・・・仰せのままに。アンジェ、エレーナ付き添いなさい」


ミュゼなる人物に届けるとメイドさん2人を連れて、部屋を出ていきました。


ピンク色の世界に沈黙の妖精さんが踊り始めましたが、これは好都合ですね。


殺気が膨れ上がってますが、それはまあ、この際良いでしょう。


「そういえばお名前を伺っていませんね。何とお呼びすれば?」


「フェンネルと申します、お客様。お好きなようにどうぞ」


「そうですか。ではフェンネルさんと。ところでミュゼさんとは?」


「第一王子殿下の事でございます。クミルーゼ様が正式な御名です」


「そうですか、第一王子殿下と。その方が指示したのですかね、今回の事は」


「・・・意味が解りませんが?」


「おや、気が付いておりませんでしたか? あなたは戦闘系メイドでしょう? 気配を消すだけではなく察知も得意だと思ったのですが」


「何故それを・・・なっ!?」


うん、やっと気が付いたようですね、天井裏の人物たちに。


「ああ、気絶させておきましたから緊急性はないかと。それよりも、もう一つお伝えしておきたい事が」


「王女殿下を狙った賊ですよ?」


「その賊の所為だと思いますが、お菓子に毒が盛られていました」


「え!? こ、こうしては!」


「ああ、先ほどの魔法は解毒の魔法です。ですからクルル姫とお菓子はもう大丈夫ですよ」


「・・・あなたは何者ですか?」


「調べていなかったのですか? 私は魔法が得意なエルフ、レドリック卿の病を治療した者です。それなりに腕が立って当然じゃないですか」




私を問い詰めたい雰囲気で一杯だった侍女長さんでしたが、クルル姫に迫る危機を優先して部屋を飛び出しました。


その動きには無駄がなく、そして速かった。


魔法を使わなければ私とそれなりの勝負が出来そうだなぁ、と思いつつ紅茶を啜るのでした。


なお天井裏のアサシンたちですが、いつまでもそのままってのは面倒なので天井裏から回収して作り出した蔦で縛って転がしておきました。


その時に気絶から回復したりと騒がしくしてきましたので、闇魔法でSPなんかも根こそぎ消費させ、完全に行動不能な状態です。


縛り上げた暗殺者たちの置き場所に困っていたら、丁度侍女長さんと入れ替わりでメイドさんたちが戻って来たましたので引き取ってもらいました。


クルル姫ですが王子のところにお菓子を持っていき、現在も一緒に食べているようで特に襲われたりと行った事はないようです。


この部屋で起きていた事情は知っていたようですから後の事は任せ、私はこの後どうしたらよいんだろうなぁ、とぼーっとしてました。


そしてそのまま夜になり、食事さえ出されずの放置状態継続でした、きゅぃー!

お読みくださってありがとうございます。


最近忙しいので少しペースが落ちます。

多分週に2話ずつぐらいになるかと。

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