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本日の投稿は1話のみです。
孤児院の自給自足率を上げてようと決めましたので、ジュリアナさんを案内係に裏庭へやってきました。
家庭菜園レベルではなくちゃんとした菜園を、とまでは思ってませんが、その前にファンタジア世界の作物事情があまり分かっていない事に気が付きました。
その辺りをジュリアナさんに確認すると、色々と教えてくれたのですが、その事がとても不思議でした。
「いや、私だって自分で料理ぐらいできるさ。元々孤児院に居た時は料理当番だったんだし」
うん、何となくキャラクター的に料理も出来ない女性だと勝手に思い込んでました、ごめんなさいジュリアナさん。
さて、ちょっと気まずくなりましたが聞き出した内容です。
この国、というよりも大陸の中央地域ではパン食文化であり、小麦やライ麦が安く手に入る主生産作物でした。
その為かパスタ類の発展もそれなりにしており、アース世界のヨーロッパ文化そのものです。
だからテンプレはもうよいんですって。
おほん、兎も角中世ヨーロッパ文化の食生活は望める状況のようですね。
香辛料関連も塩は安いが胡椒は高め、唐辛子は高級といった感じです。
そしてハイファンタジーならではのファンタジー野菜や果実に付いてですが、これらは森の奥に自生しているぐらいで、栽培されていないそうです。
もし、その手のものを手に入れようと思ったら、冒険者ギルドに依頼するなどの特別な入手経路が必要となりますのでかなり高級品となるらしい。
「作物はそんな感じだな。乳製品とかは酪農が盛んな街があってこの国では安く手に入るぞ。ただし鮮度が重要なミルクとかは高級品だな」
「なるほど。だったらヤギとか飼育したらどうです?」
「自分たちが食べるのも満足じゃない状況で生き物を飼うのはなぁ。たぶんすぐに捌いて食べてしまうぞ」
デスヨネー。
兎も角、そんな食材事情のようです、この世界。
まあ、今の会話で案が固まりました。
私が用意する植物を育てれば、かなり食費が軽減されるでしょう。
そういう事でして裏庭に到着して畑を見てみたのですが、どうやらジャガイモを育てているようです。
「なるほど。簡単でかつ収穫量も多いジャガイモですか」
「まあ、子供でも出来るってなればな。確か土地が悪くてもそれなりに育つんだろ?」
「育てやすいのは確かですね。芽さえ避ければ料理の幅も増えますし、良い食材ですね。ただ、これは安く買えるのでは?」
「ああ、安いね。小麦より安い」
うん、やっぱりジャガイモはそういう扱いですか。
「でしたらこれはやめて違うのにしましょう。ちょっと問題があるのばかりですが」
「育てにくいのか?」
「いえ、簡単ですよ。それこそルールさえ守ればお猿さんにだって育てられます」
実際に育ててましたからね。
「ルール?」
「まあ、その事より問題は、とてもレアな食材たちなのですよ」
「おい、まさか!」
はい、そうです。
私がやろうとしているのはファンタジー食材の栽培です。
「「「「「「「「「すごーい!」」」」」」」」」
今回、私が用意した食材たちですが、根菜類が2種、果樹類が2種、合計4種類です。
根菜類はハツカダイコンによく似たもので、種を蒔いてから収穫までなんと1日で出来ちゃうトンデモ根菜です。
ただ種の収穫もしないといけませんから、2日目で花が、3日目に種が出来ますので、収穫は3日目に行ってもらいます。
もう1つはニンジンによく似たもので、こちらも同じように種収穫まで含めて3日で済むトンデモその2です。
それぞれ名称がファディッシュとキャカットといいまして、原産は幻惑の森という高レベル鑑定者には見せられない一品です!
ファディッシュは根は甘みがあり生でも熱を加えても美味しく、葉は苦みがあり熱を加えれば苦みが消えて食べやすくなります。
キャカットは根は生だと果実のように甘くて熱を加えると甘みが消えて味が染み込みやすくなり、葉は煮ても苦いので食用に向きませんが乾燥させると良い肥料になります。
これらの根菜2種を3面ずつ用意して、毎日収穫出来るようにしました。
そして果樹類ですが、名称はアートスとトウカです。
アートスは所謂パンノキであり、月1度のペースで実が30個ほどなり、乾燥させれば長期保存が可能です。
最大の特徴は乾燥させた果実を砕いて水に混ぜ捏ねて焼くと固めのパンと似たようなものになる事です。
勿論、パスタにも流用が出来ますから小麦粉を買う必要がなくなります。
あ、ケーキやクッキーを作るのにも流用できますよ、このアートス。
そしてトウカですが、年に1度だけ花を咲かせ、実は10℃以下でなければ10日で実ります。
大体1本で20個ほど収穫できますが、全てを収穫してしまうと木が枯れてしまう性質を持っています。
実についてですが、はっきり言って桃です、桃。
この木を見つけた時は主様との類似性の多さに、トレントになる前の木なのではと疑い、現在も検証中です。
そんなちょっと問題のある木たちですが、とっても有用なので、植えちゃいました。
収穫や栽培のルールが特殊なので、孤児院の子供全員集めて実践してみせたら、感動の渦が発生し、またもや大騒ぎとなりました。
そりゃあ、妖精魔法(樹)で急成長させたりしたら驚くよね。
「いや、驚くとかの問題じゃないだろう、これ。こんなの外にばれたら大変じゃないか」
「持ち出し厳禁で、情報開示もしない、でお願いします」
「まあ、その通りにするけどさ。それにしてもトウカなぁ」
「おや、有名でした?」
「ああ。特にこの国じゃあな。何せ妖精女王ゆかりの木と花だ。王宮には妖精女王が植えたトウカが未だにあるらしいぞ」
「そ、そうでしたか。ちょっとまずいですか、それだったら」
「まあ、大丈夫かな。変なやつにばれなきゃ」
その辺りは頑張ってくださいね、ジュリアナさん。
もし邪魔だというならすぐに枯らしますからね。
こうして、食料事情も大幅に改善され、ちょっとはこの孤児院の運営もやりやすくなったんじゃないかなー、なんて思っていたりします。
あ、そうそう。
ハーブも植えちゃいました、洗濯場の近くですけど。
あの子たちは繁殖力が半端ないですから、他の作物と一緒に育てられないのですよね。
ハーブたちの扱いは洗濯係の子供たちの仕事として振っておきました。
時間が短くなった分、としてね。
流石に働き過ぎかなーと思い、そろそろシスターさんに報告しようという意見もジュリアナさんからでましたので、休憩がてらシスターさんの元に。
洗濯場やファンタジー食材の事を報告したら、流石にびっくりしてました。
そりゃあ、機械とか珍しい、いえ、反応からするとまだファンタジア世界には存在していなさそうですし、ファンタジー食材はレアだと知っていたからですね。
驚くだけじゃなく有用性と危険性は十分理解されているようでした、流石です。
「ありがとう、サクラさん。これであの子たちにちょっとは贅沢させてあげられるわ」
「いえ。余計なトラブルを呼び込むかもしれませんし、必要なければいつでも言ってください。すぐ撤去しますので」
「大丈夫よ。もし貴族や商人が嗅ぎ付けて来ても何とでもなるから」
むぅ、どうやらシスターさんはそれなりに強いコネを持っているようですね。
それはそれでちょっと怖かったりするのですが。
「ところでシスター。今日はずっと起きてるけど体調は問題ないのか?」
「それがね、どうも体が軽く感じるのよ。まるで若返ったみたいだわ」
若返ったかは別として、昼間に差し入れた果物の所為だと思いますよ。
流石、桃(仮)でした。
「そういえばシスターさん。普段は杖で移動しているのですか?」
安楽椅子に添えつけられている棒、おそらく杖と思われるものを見つつ、何となく質問してみました。
杖なしでは歩けないとかだと、相当辛いはずなんですよね、杖があっても。
「ええ、もう腰に力が入らなくってね。故事にある朝は4つ、昼に2、夜は3つの状態だわ」
えっと、確か人間を意味するなぞなぞでしたね、それ。
だからテンプレはもういいですきゅぃー。
あ、思わず噛みました、すみません。
「サクラなら何か良い知恵はないか? こう、杖を使って移動って大変だからさ」
私はどこかのネコロボットですか。
妖精さんだからってそんなに都合よく・・・いや、アイデアはありますね。
「車椅子というものはご存知ですか?」
うん、作っちゃいましたよ車椅子。
似たようなのは東方地域にあるようですが、中央地域ではまだ開発されていなかったようですね。
本当は魔力で動くタイプのを作りたかったのですが、流石に魔法道具を作成するのはちょっと、ね。
風か水を使った滑車式とか出来ちゃうんですよね、どうしましょう?
取りあえず、歩行器タイプも作っておきました。
これはシスターさん専用というわけではなく、弟さんのリハビリにも使える介護車として利用してもらう事にしましょう。
壊れた場合のメンテナンスがちょっと問題ですけど、木製だから大工さんとかに頼めば直せると思います。
要するに仕組みだけ解れば良いんですから。
あ、ジュリアナさんがそういうの得意ですか、だったら問題ないですね。
何気にジュリアナさんは器用で作業系に適性がある事が解った出来事でした。
さて、次は何に取り掛かろうと思っていましたら、子供たちの歓声が聞こえてきました。
何かを喜ぶ声が響いてますので、良い事でも起きたのでしょう。
私はジュリアナさんと顔を合わせ、様子を見に行くことにしたのですが、シスターさんも車椅子を使って一緒に行く事になりました。
折角なので試運転を兼ねるという事で、介助はジュリアナさんが行い、声のする方、庭へ向かいました。
そこには子供たちに群がられる一人の男性。
茶色の髪に若干こけた頬、中々に上背のある、青年でした。
「まあ、リック。もう歩けるのね」
引っ張る必要もなく弟さんです。
「シスター! それにアナ姉さんも!」
病気が治った喜びを分かち合うように孤児院の人たちが集まり、全員笑顔です。
その光景をちょっと離れた場所から私は見ていたのですが、やっぱり皆が笑顔で過ごせるって良い事ですよね。
その笑顔の手助けが出来たのは、素直に喜ばしい事でした。
何だかドラマのワンシーン、最終回でも見ている気分ですけどね。
「心配かけてすみませんでした、シスター」
「いえ、あなたが元気になって良かったわ」
「私には礼はないのかよ、リック」
「ちゃんとアナ姉さんにも感謝してるよ」
「冗談だよ。本当に治ってよかったぞ、リック。これでまだ騎士が続けられるな」
「ああ。ところでシスターが乗ってる台車は何だい? そんなのあったかな?」
「これはね、サクラさんが作ってくれたのよ。足腰の弱った私でも動きやすいようにってね。あなたのリハビリに使えそうなのも作ってくれたのよ」
「作ってくれた? サクラ、さん?」
「ああ、あっちにいる子がサクラだ」
ドラマをアリーナで見ている気分で蚊帳の外だったのですが、全員の視線が私に集まりました。
私に構わず感動のシーンを続けてくれててよかったのですけどね。
やっぱりまだまだ私にはレベルが高い雰囲気ですから。
ボッチは中々改善されないのです。
いえ、ボッチ違うきゅぃー!
などと若干混乱していましたら、ゆっくりと弟さんが近寄ってきました。
「あなたがサクラさんですか?」
「ええ、そうです」
「シスターの為にありがとうございます。何かお礼をさせてもらえませんか? あ、でも数日後にしてもらえると助かりますが、病み上がりだし」
何だかどこぞやの好青年さんだか主人公さんみたいな笑顔とセリフ回しですね。
これがラノベだったら私が惚れなくちゃいけないシーンですよ、絶対。
まあ、ここは現実ですし、そうでなくても私にはニコポなチートは効きませんけど、嫌いですからああいうの。
オタク少女だからとちょろくはないんですきゅぃー!
「あ、別に結構です。必要ないですから」
「そ、そうですか」
「うわぁ、お兄ちゃんが振られるとこ初めて見た」
「本当だねぇ、珍しい」
やっぱりニコポなチートをお持ちの主人公属性さんでしたか、この弟さん。
ですからテンプレはもう間に合ってますよ!
「病気を治してくれた人なのよ、サクラさんは。ちゃんとお礼を言いなさい、リック」
あ、シスターに言うの忘れてました、黙っていてもらう事。
冷や汗をかきつつ、私とジュリアナさんは引き攣った顔を見合わせるのでした。
う、うっかりしてたきゅぃー!?
お読みくださってありがとうございました。




