5-3
投稿していたと思ったら出来ていなかった件。
ジュリアナさんの弟分であるレドリックさんの病気を治療する事で、私のクエストはクリアしたのですが、まだジュリアナさんの借金問題が残っています。
これを片付けないと後顧の憂いを断った事にはならないので、何とかしなくてはならないのです。
化石病のような奇病の治療という本来ならば治療不可能な案件ではなく、自身の力で解決するべき問題なのが借金。
でも、ジュリアナさんの性格から考えると1人では解決出来そうにない、ゆえに手伝う、そういう事にしました。
別にジュリアナさんを侮辱している訳ではありませんが、人には得手不得手がありますしね、私が手伝えるならやろう、そう思っただけだったりしますが。
なので改めてジュリアナさんに借金の話を聞くべく、彼女の部屋へやって来たのですが。
「ここが私の部屋だ。ちょっと散らかってるが」
「こ、ここ、これが、ちょっと?」
どこの30代独身女性のゴミ屋敷ですか、この部屋は!
脱ぎ散らかされた衣服、商売道具であろう装備は無造作に置かれ、テーブルには汚れた皿やコップ、ベッドのシーツはどれほど洗っていないのだろう、変色してます。
「そ」
「そ?」
「掃除、まずは掃除から始めまきゅぃー!」
私の魂に火を付けました。
「これ必要なんですか?」
「あー、今度使うかな」
「なら要りませんね、ゴミです」
「お、おい!」
「この本は・・・ああ、シミが酷い。しかもカビでくっ付いてますね、ゴミです」
「あ、それは! そんなところにあったの、っておい!」
「この服は洗えば大丈夫。これも大丈夫。これも、これも、これも。これは雑巾行きですね」
「そ、それは私のお気に入りの」
「あ、これは売れますね、絶対」
「ちょ、それは私の秘蔵の!」
「さあ、どんどん処理しますよ、ゴミリアナさん」
「ひでぇ!?」
家政婦モードになった私は容赦なくジュリアナさんの部屋の物を分別し、どんどん処理していきました。
ジュリアナさんには意見を聞くという名目で念の為いてもらいましたが、正直戦力外です。
それよりもその様子を部屋の外で見ていた子供たちの方が役に立ってくれましたね。
「捨ててきたよー掃除の妖精さん」
「ありがとう。これもお願い出来る?」
「うん、わかった!」
「えっと、この服をまとめて洗濯場に持って行ってくれる?」
「「「はーい」」」
この様にです。
そして何故か私は妖精さんと呼ばれるようになっており、今のところ掃除の、という文字が付いちゃってますね。
これ、料理をし始めたら料理の妖精さんとか言われちゃうのでしょうか。
一応エルフって事になっているのですが、子供って恐ろしいですね、本質を見抜いちゃうのですから。
「よし、分別終了。あとは掃除ですね」
「お、おい、サクラ」
「何ですか戦力外さん」
「さっきからひでぇな、おい。えっと、だな。その流石に悪いというか」
「悪いのは普段から片付けないあなたです、ジュリアナさん。この後あなたは片付けられないんじゃない、片付かないんだ、というでしょう」
「か、片付けられないんじゃない、片付か、って何で分かった!?」
だって、テンプレですからね、このやり取り。
「さて、魔法でやるのは簡単ですが、ここは普通の掃除のやり方で行きましょう」
「無視された!? えっと、魔法でやらないのか?」
「私が魔法でやると今後ジュリアナさんが掃除しないでしょう? 卒業したはずの人がいつまでも居座っている上に掃除もしないって、何様なんですか」
「う」
「この院を見て思いましたが、子供たちの方が働き者じゃないですか。もしかして普段は冒険者の仕事で忙しいからと言い訳してません?」
「だって冒険者ってハードだし」
「言うと思いました。子供の頃を思い出してください。この院で生活していた時もハードだったでしょう? 大人になったからってやらなくて良いわけじゃないんです」
「た、確かにそうだけど、でも私は稼ぎを持ってくるわけで」
「あなたはどこのダメ亭主ですか。使用人を雇えるほど稼いでいるならいざ知らず、そうでないなら家にいる時ぐらい家事をしなさい、家事を!」
「ハイ、スミマセンデシタ。コレカラハココロヲイレカエマス」
うん、良い感じに心が折れましたね。
今のうちに刷り込んでおきましょう、家事の素晴らしさを!
なお、この光景を見ていた子供たちは私に対して敬礼していました。
何故に?
ふぅ、とてもすっきりしました。
あれから二時間ほど掛けてジュリアナさんの部屋を掃除しまくり、今では完全に別の部屋のように綺麗になってます。
掃除をしたのはジュリアナさんで、私は手本を見せてあとは監督しながら適時指示を出すだけでした。
こっそりメイド長に転職しておきましたので、ジュリアナさんの掃除効率も良くなっていたはずです。
それはもう、何年分だ!と言わんばかりの汚れでしたから、綺麗になるまで大変だったでしょうね、ジュリアナさんも。
疲れて掃除できなくなってはいけませんから、さりげなくタフネスを使って疲れ知らずの掃除人にしておきました。
たぶん、ジュリアナさんに清掃スキルか家事スキルでも付いたんじゃないかと思います。
最後の方はそれなりにやってましたからね。
お陰で私のメイド長レベルは2に上がりましたので、しばらくこのままでいたいと思います。
だって指示出しした時の効率アップが魅力的でしたから。
「す、すげぇ。これを私がやったのか?」
「そうですよ。どうです? 綺麗になると気持ち良いでしょう?」
「あ、ああ、確かに。しかし、サクラ。途中から魔法使ってなかったか? あの足が速くなるとかいうやつ」
「正確には疲れ知らずになる魔法ですね。たぶんあと2,3時間ぐらい掃除し続けられますよ」
「い、いや、それはちょっと勘弁してほしい」
「まあ、掃除はこれで終わりですから次は洗濯ですね」
「うえ、まだあるのか」
「当たり前です。ちなみに子供たちにも手伝ってもらいますから安心してください」
「そ、そうか」
そうしてやって来た洗濯場なのですが、この孤児院の敷地が広いからか、それとも井戸があったからなのか敷地内にありました。
ハイファンタジーだと洗濯場って公共場所で井戸端会議の戦場だと思っていたのですが、どうやらそうではないらしいです。
一応ジュリアナさんに確認したところ、少し離れたところに街の人が使う公共の井戸があり、そっちでは確かに主婦が集まってるそうですね。
まあ、ここは小奇麗な孤児院ですから嫌われてはいないでしょうが、それでも孤児っていうのは嫌悪の対象ですからね、別の方が良いはずです。
こんな土地を確保したシスターさんってかなりの資産家なのですかね。
さておき、洗濯場にはすでに子供たち、その中でも年かさ、と言っても10~12歳の女の子たちが集まって洗濯を始めております。
洗濯方法は至ってシンプルで、桶に水を溜めて手で濯いだり、絞ったりだけのようです。
石鹸なんかは使用しておらず、天然石鹸であるムクロジっぽいものもないようですね。
この辺りでは生えていないのでしょうか?
「ねえ、何時も水だけで手洗いなの?」
「うん、そうだよ」
「ちゃんと濯げば結構とれるもん。冬は冷たくて厳しいけどね」
うん、とっても原始的な方法を取っているようですね。
これは仕方ありません、一肌脱ぎましょう。
「そう。じゃあ、手洗いよりももっと楽で出来るだけ水に触れないで済むようにしてあげますね」
「「「「ほ、本当!?」」」」
さて、ではでは、妖精さんの実力を見せるときがやってきましたね、ふふふ。
それでは早速、妖精魔法(樹)で樹を生やし、それを変形させて桶のようなものを作っていきます。
そしてそれらをちょいちょいっと妖精鍛冶師のスキルでとある道具へと変身させます。
最初は妖精鍛冶師も妖精鉱を加工してしか道具を作れなかったのですが、マスターしてからは自身で作った布や木などでも加工が可能になりました。
そうやって作ったのがツリーハウスの椅子や台所、それに照明魔法道具だったりします。
今回作ろうとしているのは科学技術で行う道具、魔力に頼らない機械を作っているのです。
作成時間はおよそ3分。
出来上がったのは手回し式の洗濯機です!
「じゃーん。これぞ手動式洗濯きゅぃー!」
「「「「す、すごーい!」」」」
「や、サクラ。魔法で道具を作った手腕は不思議だし、すごいんだが。これ何?」
「これはですね、水と洗濯物を入れてこの持ち手を回すと樽の中の水が回るんです。そうすると手で濯いでいるのと同じ、いえ、それ以上の揉み洗いも再現します」
「「「「す、すごーい! 流石妖精さん!」」」」
「そうでしょう、そうでしょう。そして洗い終わったらここの栓を抜けば、勝手に水が流れていきます。あとは取り出してこっちの絞り機に通して持ち手を回し、水気を絞ると」
「「「「すごいよ、妖精さん! 凄過ぎるよ、洗濯の妖精さん!」」」」
「まあ、絞り機ではあまり水気は取れませんから、ちゃんと手で絞らないとですよ」
「「「「はーい」」」」
うん、良い返事ですね。
やっぱり子供はこうじゃなくっちゃね。
「ま、魔法道具なのか、これ?」
「いえ、違いますよ。ですから誰でも使えますよ。さて、ジュリアナさんもやってみましょう、自分の服でね」
そのあと、ジュリアナさんは洗濯機のハンドル回し係として大いに役立ちましたとさ。
ジュリアナさんを酷使、いえ、そこまでの重労働ではありませんから全然疲れていないようですが、しばらく従事してもらいました。
私の指示の元、どんどん水を汲んでは洗濯物を入れてハンドルを回す、水を抜いて、入れ替えてハンドルを回す、の繰り返しをしてもらいました。
子供たちにはその後の最後の絞りと干すところをやってもらい、何時もの半分の時間で洗濯が終わったようです。
これには洗濯担当である子供たちも大喜びで、その笑顔を見て私も嬉しくなりました。
ジュリアナさんは苦笑してましたけどね。
さてさて、洗濯物が乾くまでかなり時間が掛かりますから、次なる家事を処理しようじゃありませんか。
と、私は胸の前で拳を握りしめたのですが、ジュリアナさんからストップが掛かりました。
「何をそんなにやる気になってるのかしらないが、私の部屋に来た理由は結局何だったんだ?」
「あ」
すっかり忘れていましたが、ジュリアナさんの借金の話でした。
ですがこの場には子供たちが居ますし、洗濯場の近くには庭があって小さな子供たちが遊んでます。
なのでここでする話でもないですから、一端脇に置くことにしました。
今、私は家政婦魂に目覚めているんですもの!
「それはまた後でお聞きします。部屋は一緒でしたよね?」
「ああ、空いている部屋もないし、そうなるな」
「じゃあ、それで。それではこの調子で、この孤児院の環境改善を進めましょう」
「うえっ!? いやいやいや。それは流石にシスターに相談しないと」
「あ、大丈夫です。事前にちゃんと許可もらってますよ、ある程度ですが」
「あ、そうなんだ。じゃあ、いいか」
どういう風に改善するかまでは話してませんし、洗濯機や絞り機みたいな機械を設置する事なんて一切言ってませんが。
「では、次に、と行きたいのですが、その前に。そういえば食料などはどのようにして手に入れているのですか?」
「子供たちが当番制で買い出しだな、食材だけは。ほぼ全部自炊だな」
「院で野菜などは育てていないのですか?」
「一部育ててるが、どっちかというと情操教育目的だな」
なるほど、畑を育てさせて心を育てる、ですか。
流石はシスターさん、と言ったところでしょうか。
「ではその食材を買うお金はどうしてるのですか?」
「一応国から補助金が出てるらしいな。詳しい話は聞いてないけど。あとは院を卒業したやつ、私とかから寄付が集まる」
その話が本当なら、シスターさんは神殿と縁を切っているようですね。
そういえばこの院の中で神に関する施設とかがないですしね、そう言う事なのでしょう。
「なるほど。では、次に着手するのは食材の自給自足率を上げる事ですね」
「いや、それは難しい・・・エルフのサクラが言うならいけそうな気がしてくるのが不思議な気分だな」
エルフって森の民みたいな印象ありますからね、自然食材を扱わせたら一品ですよ。
まあ、私の場合は樹妖精でもある羽妖精ですから、妖精パワーでなんとかしちゃうんですけどね!
お読みくださってありがとうございました。
次回は明日投稿予定です。




