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本日の投稿は1話のみです。


やっと王都に突入です。

「ここが王都ですか」


生まれ育った幻惑の森から旅立ちやって来た人たちの都、コンテラクト王国の王都は遠くからでも城壁が見える大きな都市でした。


私をここまで導いてきたジュリアナさんの話では嘗ては1つの都市国家だったこの国も、ここ数十年で近郊の都市国家を吸収し、大国へと至ったそうです。


途中で立ち寄った城塞都市も吸収された元都市国家だったらしく、5つの都市を持つ都市国家連合のような国だそうです。


王を頂点に王族が王都を支配しており、4侯爵1伯爵が各都市を治めている治政制度を取っています。


幻惑の森に一番近い城塞都市が伯爵の治める都市だというのは、やっぱり一番危険度が高いからなのでしょうね。


詳しい事は元孤児であるジュリアナさんでは分からないそうなので、気になるのなら自分で調べないといけません。


まあ、最低限の知識だけあればよいので態々調べはしないですけどね。


それよりも問題なのは種族分布ですよ。


「んー、ほとんどが人間種だけだったかな。異種族だからと奴隷にする制度は勇者クリスの魔王討伐以降無くなったし、だからと獣人種とかが住まないだろうな」


「やっぱり過去の因縁とかですか?」


「私は冒険者をしてるから種族の違いを気にしないが、普通の奴らは気にするみたいだな」


「じゃあ、エルフは?」


「エルフはあれだ、こう、サクラを前にして言うのもなんだが、微妙な立場だ」


「び、微妙ですか?」


何でも、エルフというのは基本的に傲慢な種族とされており、王侯貴族であろうとその態度を変えない身分制度が横行する人間種からは煙たがれている種族らしいです。


でもエルフは妖精を祖とする種族なので、妖精から助けられたこの国としては無碍にはできない存在との事。


平民であるジュリアナさんからしたら美しい容姿の者が多いエルフを嫌う理由もない、とお言葉をいただきました。


ええ、すみませんね、美人じゃなくて。


「私が子供の頃の話だが、王城へ招かれたエルフが貴族と口論になって大騒ぎになった事があってな、一時期エルフの出入りを禁止してた。今は解除されてるけど」


そ、そんな事があったのですか。


予想としては傲慢貴族対自由エルフの性格の不一致で起きた悲劇、なのですが、私に被害が出ない事を祈りたいです。


城の中を見学とかしてみたいとは思いますが、やっぱり貴族とかの存在が面倒そうなので近寄らないようにしておきましょう。


虎穴に飛び込む必要はないですよね、得るものが観光名所程度だと。


「さて、そろそろ到着だ。あいつの事が済めば王都案内ぐらいするから頼むぞ、サクラ」


「ええ」


さあ、初王都のお時間です!




王都といいましても途中で寄った城塞都市とそれほど作りは変わらず、ただやたらとレリーフが刻まれていたり、銅像があったりします。


モチーフとなっているのは羽妖精、しかもやたらと美人さんな妖精だったりします。


「もしかしてあれは妖精女王ですか?」


「ああ、そうだぞ。この王都にはいたるところに妖精女王が飾られているんだ。それだけ感謝してて人気があるって事だな」


それは同じ羽妖精として鼻高々ですね。


「ただあれだ、貴族たちは気に入らないみたいでな。数年に1度の頻度で撤去しようという話が出てるらしい」


「自分たちよりも支持を集めるのが許せない、ですか」


「そう言う事だ。でも王都中の平民が毎回抗議して防いでいるのさ。そしてメンテナンスとかも全部街のみんなでやってる。それだけ人気って事だよ」


それは良い話ですね。


この話だけでも本になりそうな感動物語とかありそうですもの。


でも、やっぱりこの辺りの事からもエルフってバレたら面倒そうですね。


坊主憎けりゃ袈裟まで、でしたか?


ああいう感じでエルフも憎しになってそうです、この国の貴族から。


なので私はこの外套を手放せない生活となってしまうようですね、折角の都会なのに残念です。


そのような事を話しながら歩く事数十分、段々と街並みが暗くといいますか、おそらく下町とか言われてそうなエリアに差し掛かりました。


やっぱり孤児院があるのは下町のようです。


ただ疑問に思うのは弟さんがいるのは騎士団の施設じゃないのか、だったりするのですがその辺りはどうなのでしょうか?


まあ、孤児院にまず立ち寄るという線もありますからここは大人しく着いて行く事に致しましょう。


そうやって辿り着いたのは結構大きな敷地を持つ、まるで幼稚園とかそういうイメージを与える場所でした。


2m程の高さの塀に囲まれ、古いながらも趣きがある木製の門、見える屋根はかなりぼろいですがちゃんと雨は防ぎそうな平屋。


壁越しに見える構造から行くと大きな庭とかがありそうな感じです。


長い歴史を感じさせる孤児院は、思ったよりもしっかりした場所でした。


「ジュリアナさん」


「なんだ、サクラ?」


「もしかしてちょっと遠目に見えるあの塀に囲まれたのが」


「ああ、あれが私が育った孤児院だ。あいつもあそこで療養してる」


「そうなのですね。ではジュリアナさんも孤児院で?」


「ああ、私も住んでる。ちょっとお金がなくってさ」


卒業した院に世話になるほどやばい借金事情なのですね、ジュリアナさん。


奴隷落ちの基準がいまいち分からないのでこの辺りも聞いておく必要がありそうです。


それはさておき、まずは弟さんです。


回復魔法でも治せない病気ってどういうものなのでしょうね?




「アナお姉ちゃんだ!」


「お姉ちゃんが帰ってきたー!」


孤児院を訪れた私たちを迎えたのは小さな子供たちでした。


身なりは孤児院の子供らしくやっぱり貧相ではあるものの、表情は明るく、身体つきもちょっと細い程度です。


ジュリアナさんと接してきた感じから悪徳孤児院の可能性はないと思ってましたが、予想よりも良い孤児院のようですね。


ただ、まあ、元気が良過ぎるのは圧倒されちゃいますけどね、ボッチとしては。


いや、もうボッチじゃないですきゅぃー!


「おう、ただいま。皆元気にしてたかー?」


「「「「うん!」」」」


「そうかそうか。シスターとリックはどうだ?」


「シスターは今日ちょっと立ち上がれたよ」


「リックお兄ちゃんは寝たまま」


「ねえ、この小さい子は誰?」


知らない仲良しグループにいきなり飛び込むのを躊躇して、ちょっと離れて見ていたのですが子供たちの視線が私に集まりました。


って、私は小さくないですきゅぃー!


「ああ、あの娘はサクラって言うんだ。小さいけど魔法が使えるんだぞ。それでリックを治してもらおうと思ってな」


「魔法!すごい!」


「「「「「魔法!」」」」」


「魔法見せて!」


「「「「「見せて!」」」」」


「きゅ、きゅぃー!? いきなり囲むんじゃありません! どこを触っているんですか! そこはちょっと、きゅぃー!?」


「うわぁ、すごい色!」


「ピンク色だぁ!」


「すっごく長くてきれー!」


「耳が尖ってる!」


「まるで妖精さんみたい!」


「「「「「妖精さん!」」」」」


孤児院の子供たちは、ある意味で幻惑の森の魔獣たちより厄介でした。


こら、髪を引っ張るんじゃありません!




「いやぁ、すまないなサクラ。うちの子たちが」


「げ、元気があるって良い事ですよ、ええ」


私を囲んで弄繰り回すモンスター、もとい、子供たちを引き離すためにご要望の魔法を使ってみせました。


孤児院だからかこの世界の住人だからかやっぱりちょっと臭いが気になったので、一気に洗浄です。


子供たちもいきなり頭から水を掛けられ、風に煽られとびっくりしてましたが、自分たちが綺麗になったと分かると大はしゃぎ。


そしてその騒ぎを聞きつけて館の中に居た子たちも庭に出てきて、はい、もう一度、きゅぃーっと。


一頻騒いで落ち着いたのか、ジュリアナさんの声で離れていき、やっと私も解放されました。


私は身だしなみを整え、気分転換の為にリラックスを使って何時もの調子を取り戻してからジュリアナさんと館の中に入りました。


外から見た感じで予想はしてましたがやはり古くてぼろかったです、館内は。


ただ、掃除は行き届いているので見た目の割には清潔感があり、私としては高いポイントを付けてあげたくなりました。


元家事を一手に担っていた私の血が騒ぎますね、ここは。


「さて、先にシスターに会うか、それともリック、弟に会うかどっちがいい?」


「弟さんはまだ大丈夫なのでしょう? だったらシスターさんから先にしましょう。家主の許可なくとかしたくないですから」


「そうか。じゃあ、こっちだ」


生死の境を彷徨ってるみたいな事を聞いてましたが、子供たちの雰囲気からそう切羽詰まってなさそうなんです。


どちらかといえば眠り姫みたいなイメージが湧いてしまったのですが、どんな症状なんでしょう、本当に。


それよりもシスターさんに関する方が気になる事を言ってましたよね、今日は、とか。


それに経営者に許可なく何かするとか怖くて出来ません。


そういう訳でシスターさんとまず会う事にしたのですが、見て最初に思ったのは年老いたシスターと誰もが思う高齢の女性でした。


「おかえりなさい、アナ」


「ああ、ただいまシスター。身体はどうだ?」


「今日はちょっと調子が良いのよ」


朗らかな笑みを浮かべるシスターさんは安楽椅子で座っており、醸し出す雰囲気は明るいものです。


ただ、気になって鑑定したのですがお名前はリザリアさんで、73歳の御高齢でした。


その気になった点ですが、足や腰あたりの魔力バランスが乱れていた事なのです。


どうやら老衰による衰弱状態で足腰が弱っているようでした。


この状態異常は通常の方法では回復不可能で、どうする事もできないようです。


何せツキヨミの巫女なんて名称を持つ、職業シスターな女性ですからね、回復魔法ぐらい自分で使えたはずです。


それでも治っていないって事はそう言う事なのでしょう。


ジュリアナさんが言っていた神官の回復魔法でも無理だった、というのはこのシスターさんなのかもしれませんね。


と、言いますか、シスターさんの巫女っていう名がとっても気になっちゃいますね。


あ、それよりもあいさつが先でした


「それで、アナ。そちらのお嬢さんは?」


「ああ、この娘はサクラって言うんだ。旅先で出会ってさ、病気についても詳しいって言うから」


「まあ。もしかしてリックの為に?」


「初めまして、サクラと申します」


流石にこの様な方にフードを被ったままだと失礼だと思い、外してから礼をしました。


「あら、エルフのお嬢さんでしたか。これはどうも。私はリザリアと申します。この孤児院の院長をしているのよ」


「シスターは月冥神殿で巫女をしてた事もある人なんだ。でも今じゃあ、こんな貧乏孤児院を経営しているお人よしさ」


「貧乏だなんて。確かに裕福ではないけどね」


「子供たちに会いましたが皆元気でした。それだけで十分ではないでしょうか」


「そうね、その通りだわ。ありがとうサクラさん」


「いえ。それで要件なのですが、しばらくこの院に滞在する許可をいただきたいのですが」


「この様な場所でよければ構わないわ。それでリックを治せそうかしら?」


「ああ、あとシスターもどうかな、サクラ」


私も出来るならしてあげたいですが、たぶん老衰は主様の霊薬でも無理でしょうね。


方法があるとしたら若返りぐらいでしょう。


・・・ファンタジア世界はテンプレで満ち溢れてますから若返りの霊薬とかありそうですが。


「私は歳だから仕方がないのよ。これも神のお導きなの。でもリックはまだ若いから何とかしてあげたいわ」


「診てみないことには何とも」


「そうよね。でも、それとは別にしても滞在して下さっても問題ないわ、サクラさん」


「ありがとうございます」


何でしょうね、この感覚。


前世を含めてこの手の女性と出会った事がないので、心に湧き上がる気持ちが理解出来ません。


ただ、日向で感じる暖かさみたいな雰囲気を纏うこのシスターさんは、お年を召した淑女、そういう言葉がぴったりな女性でした。




さて、家主さんの許可を取りましたのでいよいよクエストターゲットである弟さんです。


巫女なんてやってた人の魔法でも治せない病って本当に何なんですかねー?

お読みくださってありがとうございました。

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